“
ヘアドネーション” という言葉を聞いたことはありますか? 「
髪の寄付」のことで、その髪の毛でつくられたウィッグを、病気や事故などで髪の毛を失った方々が必要としています。
特定非営利活動法人 Japan Hair Donation & Charity(ジャパン ヘア ドネーション アンド チャリティー/
JHD&C/愛称:
ジャーダック)は2017年7月30日(日)、ヘアドネーションの認知向上のため、小学生以上の子どもたちを対象に都内で初となる「
親子で学ぶ! ヘアドネーション体験イベント」を
日本科学未来館で開催! たくさんの子どもたちが参加し、ヘアドネーションについて、そしてそれによってつくられたウィッグについて楽しく学びました。
切った髪の毛が役に立つ!
“ヘアドネーション” は新たな社会貢献活動
JHD&C(ジャーダック)では、小児ガンや無毛症、先天性の脱毛症、不慮の事故などで髪の毛を失ってしまった18歳以下の子どもたちに、無償でウィッグを提供しています。
“ヘアドネーション” は、著名な女優さんやタレントさんがドネーション(寄付)に協力したことで広がりをみせ、今回のイベントでは実際にウィッグを使用している方のトークショー、この場で髪を切りJHD&Cに寄付をするヘアドネーションカットの実演、寄付された髪の仕分け作業体験、ウィッグの試着体験などを行ない「髪の寄付(ヘアドネーション)」という新しい社会貢献活動について楽しく学んでいただくというものです。
イベントは午前と午後の2回行なわれ、夏休みの自由研究のためというものから、テレビでヘアドネーションを知った、友だちがヘアドネーションをしていて興味を持った、実際にご家族にウィッグを必要としている方がいらっしゃるなど、さまざまな理由から約80名の方が参加しました。
2017年9月で活動9年目を迎えるJHD&C代表理事の渡辺貴一さんは、「切った髪の毛をゴミにしてしまうのはもったいない。美容師として、髪の毛に恩返しをしたい」と活動のきっかけを紹介。そして最終的には、「“髪がない” こともひとつの個性として受け入れられる、ウィッグを必要としない社会を目指したい」としました。
「切った髪の毛はそのままではただのゴミになってしまいますが、ある程度の長さがあれば、適切な処置によって“人毛ウィッグ”として活用できます」と、特定非営利活動法人 ジャパンヘアドネーションアンドチャリティー(JHD&C)代表理事の渡辺貴一さん
ウィッグユーザーのカオリさんは修学旅行が大変だったと告白。体育などもあるため高校生まではショートボブ、大人になってからロングのウィッグにしたそう。おでこを出せる今のウィッグはすごいと、その進化も喜んでいました
子どもたちからたくさんの質問
イベント中にも高まるヘアドネーションへの関心
寄付された髪の毛の仕分け作業や実際にウィッグを付ける体験を通して、ひとつのウィッグをつくるのにどれくらいの髪の毛の量、時間、お金が必要かなど、子どもたちからはたくさんの質問が飛び出し、このイベント中にも、ますますヘアドネーションに対する関心が高まっていることが感じられました。なかには寄付するためにすでに髪の毛を伸ばしはじめている男の子も。女性に比べ髪の毛を伸ばすことが少ない男性からの寄付は、全体の2〜5%程度と、とても低いそうです。
ひとつのウィッグをつくるには約30名からの髪の毛の寄付が必要で、すべてがフルオーダーメイドのため、一人ひとりの頭の形や採寸をする順番待ちが長く、今はJHD&Cに申請してからウィッグが届くまでには1年〜1年半ほどかかること、ウィッグとして使用できる髪の毛の長さは31センチ以上ですが、これではショートカットのウィッグしかつくれないことなど、ウィッグを必要としている子どもたちの手に希望するウィッグが渡るまでには、まだまだたくさんの協力が必要なことを学びました。
「長い髪の毛はいつも不足しているんです。やっぱり、女の子はディズニープリンセスなどに憧れますからね」と渡辺さん。
なお、抜けた髪の毛でも、長さを揃えた毛束にすれば寄付できるとのこと。せっかく伸ばした髪の毛をカットするのは敷居が高くても、抜けた毛なら。集めて毛束にするのが、大変かもしれませんが。
誰でもできる! 新たな社会貢献 “ヘアドネーション”
ヘアドネーションは自分にとっては不必要になった髪の毛のため、“寄付” に対するハードルは低く、それにプラスして、東日本大震災以降の、みんなの心の中にある “誰かの役に立ちたい” という意識の高まりとスマホやSNSの普及がちょうど重なり、JHD&Cの活動当初に比べるとだいぶ広まったそう。“ヘアドネーション” は、誰もができる新たな社会貢献としても注目されています。
特定非営利活動法人 Japan Hair Donation & Charity
(JHD&C/愛称:ジャーダック)
JHD&Cは、小児ガンや無毛症、先天性の脱毛症、不慮の事故などで髪の毛を失ってしまった18歳以下の子どもたちを対象に医療用ウィッグを提供することで「社会性の復権」をサポートし、子どもたちの未来を守ることを目的として、2009年9月に設立。一般のドナーからヘアドネーション(髪の寄付)や寄付金の受付けを開始した日本初の団体であり、それらの寄付により人毛100%の医療用フルオーダーウィッグ『Onewig(ワンウィッグ)』を制作しています。
■ JHD&Cオフィシャルサイト:https://www.jhdac.org/
今回の「親子で学ぶ! ヘアドネーション体験イベント」で、実際に髪の毛を切って寄付してくれる工藤麻弥さん(9歳)。株式会社イオンファンタジーが2003年から実施している「ララちゃんが夢をおてつだいします!」企画に『髪の毛を必要としている子どもたちに私の長い髪の毛をあげたい』という夢を応募、今回のドネーションカットでモデルを務め、夢が実現しました
ほぼ毎日ドネーションカットのお客さまがいらっしゃる、と「55JET ai HAPPY HAIR MAKE」のヘアスタイリスト 當間紀之さん。麻弥さんは寄付すると決めてからずっと切らずに今では88センチ、そこから51センチもの長い髪の毛を寄付してくれます。「髪質がとてもいいし、51センチあればロングのウィッグにも使える」と 當間さん
ヘアドネーションしていただく髪の毛は、しっかり乾かしたうえ、いくつかの毛束にします
無駄なくできるだけ長くとれるよう、少しずつ小分けにします。また太い毛束にすると切りづらくもなります
いよいよハサミが入ります。麻弥さんも少し緊張気味。麻弥さんのおばあちゃんはガンで髪の毛が抜けてしまったそう。また海外の男の子が、いじめられても髪の毛を伸ばして寄付をしたテレビを観て、自分もやってみたいと思ったそうです
最後の一束は自らカット
麻弥さんが寄付してくれた髪。しかしひとり分のウィッグをつくるには、30人分くらいの髪の毛が必要になるそうです
イベントの後半は、寄付された髪の毛を長さや毛の状態によって仕分けする作業を体験。机の上に袋に入った髪の毛や物差しが置かれています
まずは髪の毛を触って湿っていないかを確認。湿っているとカビが生えてしまうため、寄付する髪の毛はしっかりと乾いていることが条件
寄付してくれた方の性別や年齢、パーマやヘアカラー等の化学処理を施したかどうかなど、髪の毛の状態が書かれた「ドナーシート」を見て髪の状態を確認、仕分けする際の参考にします
最後に長さを測ります。なおウィッグにできる毛髪の長さは31センチ(12インチ)以上。伸ばすには約2年ほどかかる長さです
毛髪の状態、長さがわかったら、それぞれの箱に分けて入れて仕分けは終了
みなさんだんだん慣れてきて、机の上に山のようにあった髪の毛がみるみる仕分けられていきました
仕分けられた髪の毛。これを梱包し海外の原毛処理工場に送り、丁寧に化学処理を行って毛髪を均等にします。ウィッグになるには、まだまだ時間がかかります
髪の毛と一緒にお手紙を送ってくれるドナーの方もいらっしゃいます。仕分け箱の上に、手紙が展示されていました
忘れないうちに作業内容や感想をノートに書いているお子さんも。夏休みの自由研究にするそうです。そうやっていろいろな人に広めてくれるのはいいですね
ウィッグとして使用できる31センチ(12インチ)の髪の毛はこの長さ。「思ったより長くないでしょ?」と渡辺さん。女の子はロングが欲しい子が多く、これではロングのウィッグはつくれないそう
最後に実際にウィッグをつけるウィッグ体験。まずはネットを被ります
腰くらいまでのロングヘアでしたが、ウィッグでボブに。とても似合ってますね
初めてのウィッグ、ちょっと怖いけど、どんなふうになるか興味津々
「付けてみてどう?」の質問に「付けているという違和感はあんまりありません」と女の子。「大きくなったらこんなふうになるのかな」とお母さん
違うウィッグもつけてみました。すぐにイメージが変わるのはおもしろい
お父さんも初めてのウィッグ体験。「思ったより暑くない」の感想に「長く付けていたり、外に出て歩くと、けっこう蒸れますよ」
実際にウィッグを付けてみて、ウィッグがどういうものかを楽しみながら体験しました。ウィッグを手にした子どもたちの嬉しい気持ちもちょっぴりわかったかな
ドネーションカットに協力してくれた麻弥さんの髪の毛のスタイリングが完成! 短い髪型もとてもよく似合っています。JHD&C代表理事の渡辺貴一さんに髪の毛を渡しました
株式会社イオンファンタジーのララちゃんからはウィッグ制作費用の寄付金が渡され、「親子で学ぶ! ヘアドネーション体験イベント」は終了しました