「バンクシーの作品は見る人によって解釈が異なり、人に考えさせ対話をはじめさせる力がある」と、本展覧会プロデューサーのアレクサンダー・ナチケビア氏
謎に包まれた注目のアーティスト
バンクシーの作品が来日!
約1億5,000万円で落札された瞬間、作品がシュレッダーで細断される様子をテレビで観た方は多いだろう。この作品の作者こそ “バンクシー”。イギリスを拠点に活動し、世界でもっとも注目されているアーティストだが、その正体は今も謎に包まれている。
シュレッダー事件で細断された作品は「GIRL WITH BALLOON(風船と少女)」。のちに “美術史においてオークション中につくられた初の作品” と言われるようになり、バンクシー自身によって「Love is in the Bin(愛はごみ箱の中に)」と名付けられた。
展示会場で「シュレッダー事件」のビデオ映像を見ることができる。ひとつの作品の死によって、新たな作品が生まれた瞬間だ
2020年3月15日(日)から横浜の「アソビル」で開催される「BANKSY展 GENIUS OR VANDAL? バンクシー展 天才か反逆者か」では、「GIRL WITH BALLOON」をはじめとするバンクシーの作品を過去最大級の規模で展示し、“バンクシーとは何者なのか?” に迫る。
【イベント概要】BANKSY展 GENIUS OR VANDAL? バンクシー展 天才か反逆者か
「BANKSY展 GENIUS OR VANDAL? バンクシー展 天才か反逆者か」の入口。音声ガイドはスマートフォンアプリで無料で利用できる
バンクシーが問いかける
社会風刺や政治的メッセージ
バンクシーの作品の特徴は、 “芸術テロリスト” とも称される、その過激なスタイルと、過度な資本主義(消費社会)、暴力やテロ、戦争、人種差別などに対する強いメッセージ性。展示会場もそれら7つのテーマごとに展示されている。
社会へのユーモアあふれる風刺が、一見すると愛らしいビジュアルでストリートや壁に一夜にして登場するだけでなく、ニューヨーク近代美術館、大英博物館、ルーヴル美術館などの世界的に有名な美術館、博物館にもゲリラ展示し、世界を驚かせる。
バンクシー自身は決して多くを語らず、しかし作品に込められたメッセージはさまざまに解釈されて広がり続けている。
ここでしか見られない垂涎のコレクションでバンクシーの世界に浸り、バンクシーのメッセージに想いを馳せることができる展覧会。そのメッセージはもちろん、グラフィティ(壁などに描かれた落書き)だけではない、バンクシーの活動の多様さにも驚くはずだ。
バンクシーのスタジオを再現したインスタレーション「アーティスト・スタジオ」。バンクシーには顔がなく、それ自体もメッセージとなっている
バンクシーは消費社会やアートマーケットを批判している一方、自身では消費されるアートワークをつくるなど矛盾だらけでもある。消費社会に反抗しながらも自らのブランドをつくり、「著作権は負け犬のためのもの」と言いながら、すべての作品に著作権をつける。そして何に対しても、我々にも抗議をするが、それが彼のやり方。我々はそういった彼のイメージをリスペクトしている部分もある。
バンクシーは天才か? 反逆者か? それとも? バンクシーの世界に身を投じ、直にエネルギーを感じることで、自らの答えが見えてくるかもしれない。
「BANKSY展 GENIUS OR VANDAL? バンクシー展 天才か反逆者か」は、2020年9月27日(日)まで横浜「アソビル」で開催!
バンクシーがいかに世界中にアートワークを残しているかがわかる地図。残念ながら日本での活動はないようだ(日本でも1点見つかったというニュースがあったが、どうやらそれは…真偽のほどは定かではない)
アートプリントとは何か? を紹介しているコーナー。アーティスト自身が自分の手で複製するオリジナルアートとなる。展示されている「BOMB LOVE(ボム ラブ)」(写真右)と「LAUGH NOW(ラフ ナウ)」(写真左)は、バンクシーの代表作であり、実際にバンクシーが使用したオリジナルプレートとなる
最初のコーナーは、バンクシーの作品群の中でももっとも大事とされている「消費社会」に対する作品を展示。バンクシーは自身を21世紀のアンディ・ウォーホールと自称し、ウォーホールがマリリン・モンローでやったことを、バンクシーはケイト・モスで再現した。2006年の作品で各作品20点の限定版だが、すべて17番で揃えている
とても有名な作品「BARCODE(バーコード)」。ブリストルのとあるビルにステンシルで描かれたものだが、ビルは解体された。しかし解体業者のひとりが壁ごとこの作品を剥ぎ取り10年もの間、自宅のベットの下に保管していた。バンクシーの作品の大半は壁面に描かれるため、すぐに塗りつぶされたり、壁ごと壊されてしまい、現存しているものは少ない
フェイクの10ポンド札。よく見ると「Bank of England」とすべきところが「BANKSY of England」となっている。他にもあるので、探してみて。100万ポンド分つくってばらまくイタズラをしようと考えていたが、そのリハーサルのためブリストルのあるお祭りで一握りの10ポンド札をばらまいたところ多くの人が拾い使いはじめてしまい、「本当に偽札をつくってしまった」と、そのイタズラはやめたそう。使われたお札も買い戻した
左から「CHOCOLATE DONUT」「DESTROY CAPITALISM」「TOROLLIE HUNTERS」など、消費社会を風刺した作品。「ドーナツ」は「バカども」の意味。絵の中に書かれている文字も読んでみて
バンクシーは「ONECUT(ワンカット)」「Blur(ブラー)」というバンドのアルバムのジャケットのデザインを手がけた。写真は「Blur」の「Bluer. Think Tank」
「ONECUT」の「UNDERGROUND TERROR TACTICS」というアルバムジャケットでは、絵をどのように使うかが書かれた直筆の手紙も展示されている
「政治」や「政治家」に対する抗議の作品を集めたコーナー。写真はビルの壁面に描かれた巨大な作品「Brexit(ブレグジット)」。展示会場には、作品のほか、バンクシーの言葉も展示されている。「Brexit」では「世界をより良い場所にしたがる人ほど危険なものはない」と書かれている
「MONKEY PARLIAMENT(モンキー パーラメント)」という作品は、まさに今、イギリスで行なわれている様子が描かれている。オリジナルの作品は巨大なキャンバスに描かれたもので、最近売れたそう。展示されているのはリトグラフだが、これでも非常に価値がある
あまり広く知られていないが、とてもレアな作品「COP CAR(コップ カー)」。落書きは違法行為のため、警察にとってバンクシーはとてもやっかいな存在。バンクシーはそんな警察をいつもおちょくっていて、この絵もタイヤのないパトカーでは犯人は捕まえられない、そんな大事なタイヤも守れない警察が私たちを守ってくれるのかというメッセージ
これも警察をテーマにしたもので、監視カメラによって、私たちは簡単にプライバシーを権力に委ねてしまっているということを表しているインスタレーション。実際には発生した犯罪の中で監視カメラが解決したものは3%に過ぎず、プライバシーを犠牲にする価値はあるのかを問うている。6つのモニタのうち3つはバンクシーに関するニュースクリップを、3つはこの展示会場にいる私たちの姿を映し出している
パレスチナ・ヨルダン川西岸地区にあるベツレヘムの建物に描かれている「Love is in the Air」。バンクシーの作品の中ではもっとも象徴的な作品のひとつ。バンクシーは活動初期から現在にいたるまでパレスチナ問題に焦点を当てた作品を多数制作している
もともとある写真を使って荒唐無稽なものをつくり、我々の関心を引くというバンクシーがよく使う手法で絵描かれた作品「NAPALM(ナパーム)」。真ん中の女の子はベトナム戦争時に撮影された有名な写真「ナパーム弾の少女」
2015年にバンクシーによって企画・実行されたアート・プロジェクト「Dismaland(ディズマランド)」。バンクシーの目から見たテーマパークで、ビデオ映像もある
バンクシーのステンシル画の中でもよく知られているのがドブネズミのモチーフで、我々人間はドブネズミのような生き方をしているということを訴えている。都市の環境に順応しようとし、いそいそと仕事へと出かけ、なんとか生きながらえる、そんな生活をしている
バンクシーの作品の中でももっとも有名なのが「GIRL WITH BALLOON」。バンクシーはいろいろな都市でこの絵を描き、いろいろなバリエーションがあったが、どれも消されてしまっている。これはバンクシーがつくった限定版プリントのひとつで、オークションで細断されたのもこの限定版プリントのひとつ
大型3面スクリーンによるイメージ映像「マルチメディア・ホール」。バンクシーのこれまでの活動を10分程度のイメージ映像で紹介している