もう、夢は叶っちゃった!?
鬼太郎のアニメをつくりたい一心でアニメ業界へ
ー 門監督は「プリキュア」をはじめたくさんの子ども向けアニメーション作品の監督(演出)をされていますが、アニメ制作を志したきっかけは何ですか?
きっかけはものすごく単純なんです。「ゲゲゲの鬼太郎」が大好きで、“鬼太郎のアニメをつくりたい!” という一心でこの業界に入りました。
もともと水木しげる先生の作品と妖怪のお話が大好きだったんですが、第3期の「ゲゲゲの鬼太郎」(放送期間:1985年10月12日〜1988年3月21日)を観てアニメにハマりました。
第3期の「ゲゲゲの鬼太郎」は、かなり原作に忠実なストーリーでありながらアニメならではの味付けがされた楽しい作品になっていて、「アニメ化っておもしろいな」と初めて思ったんです。
でも、それですぐにアニメ業界で働くことを志したわけではありません。アニメの勉強などもしないまま時は流れて普通に就職したんですが、そこで第4期の「ゲゲゲの鬼太郎」がはじまったんです(放送開始:1996年1月7日)。それを観て「私も一緒につくりたい!」と思ってしまって。そこで改めてアニメ業界に入ろうと決めて、鬼太郎のアニメを製作している東映アニメーションに入りました。
ー すごい行動力ですね。鬼太郎のアニメをつくる夢は叶いましたか?
はい!「ゲゲゲの鬼太郎」第6期(放送期間:2018年4月1日〜2020年3月29日)に参加して、演出を担当することができました。
【映画紹介・予告動画】映画おしりたんてい シリアーティ 2022年3月18日(金)新宿バルト9ほか全国公開!
キャラ、アニメならではのコミカルな表現に言葉遊び
みんなを楽しませようとするサービス精神が旺盛
ー 今回の「映画おしりたんてい シリアーティ」の監督はどのような経緯で務めることになったのでしょうか?「やりたい!」と手をあげるんですか?
上司から「『おしりたんてい』の監督どうですか?」と声をかけられました。テレビシリーズよりも若干年齢が高めの雰囲気にしたかったそうで、テレビの「おしりたんてい」に関わったことがないことと、子どもの感想を間近に感じられる人がいいということで、子どもがいる私に声がかかったようです。
「おしりたんてい」をつくりたい人はたくさんいると思うのですが、少数精鋭のチームでなかなか入る隙がないんです。私も「おしりたんてい」には興味があったので、今回やっと入れてもらえることになって、嬉しかったですね。
ー 映画を撮ってみて「おしりたんてい」の魅力はどんなところにあると思いましたか?
とにかくキャラクターが魅力的です。そして背景も含めた全体の絵柄がとてもかわいくて、アニメならではのコミカルな表現ができるところはすごく楽しいですね。あと、言葉遊び的なおもしろさがあるのもいいなと思いました。クイズもあって、みんなを楽しませようとするサービス精神が旺盛なところも素晴らしいですね。
ー テレビシリーズではクイズがあったり、おしりマーク探しがありますが、映画でもそういう仕掛けはありますか?
今回の映画はテンポ感重視で観る人をストーリーに引き込みたいので、途中でクイズが入るということはありませんが、入場者プレゼントで配られる冊子「7つの謎解きミステリー」でクイズを楽しめます。また、おしり探しは映画でもやっているので、ぜひ探してみてください!
予想をはるかに超えるかっこよさ
熱心な役づくりで逆に困っちゃう!?
ー 今回の映画の話題のひとつに、福山雅治さんがシリアーティの声を務めています。福山さんにお願いすることを決めたのは監督ですか?
私が関わったときには、すでにシリアーティのビジュアルはできていて、プロデューサーが「声優は福山雅治さんにお願いしようと思っています」とおっしゃって、すごい衝撃を受けたのを覚えています。
ー 福山雅治さんとは役づくりにあたってどのようなことをお話ししましたか?
シリアーティのキャラクターについて話をしたり、質問をいただいてお返事したり、役づくりにとても熱心に向き合っていただきました。本気でシリアーティになろうとしてくださっているんだなと、非常にありがたく思いました。
ー 福山雅治さんシリアーティはいかがでしたか?
本当にかっこいいんですよ(笑)。いや、かっこいいのはわかっていたんですが、実際に声を聞いたら予想をはるかに超えるかっこよさでした。しかも試行錯誤をしながら何パターンも演じていただいて、どれも素敵で選ぶのに苦労しました。
アニメの仕事は面倒な作業がたくさん
観て喜んでもらえると、やっぱり嬉しい
ー 監督のお仕事内容を教えてください。アニメーションの監督というと、ご自身で絵を描く方もいらっしゃいますね。
私は絵を描けないタイプの監督です(笑)。脚本家が描いた脚本をもとに絵コンテを描くんですが、すごく簡単な、どこに誰がいて何をしているかがわかる程度の絵です。それをもとにアニメーターや背景、仕上げ、編集、音響関係の方々にそれぞれの仕事をお願いし、あがってきたものをチェックして修正があればお願いし、あがってきたものをまたチェックして‥‥という繰り返しです。
ー 絵の構成から雰囲気、そこにあう音楽、声優さんへの指示など、映画全体をまとめながら完成させていくお仕事と考えてよろしいでしょうか。
自分が思い描いているイメージになるべく近づけるように、お話をして、お願いをして、確認して、またお願いして、ですね。自分ひとりでは何もできないので、みなさんにやっていただいて、なんとか作品が完成するという感じです。
ー 監督というお仕事をしていて嬉しいとき、大変なのはどんなときですか?
作品を観て「おもしろかった!」と言ってもらったときは、やっぱり嬉しいですね。あと私は絵にセリフ、効果音、音楽をあわせる “ダビング” がすごい好きで、今までそれぞれでつくってきたものがひとつになり、やっと完成の形が見えてくるときは、毎回たまらなく嬉しいですね。「みなさん、ありがとう!」という気持ちになります。
大変なのは、やっぱりスケジュールが厳しいときですね。アニメの仕事って、冷静に考えるととても面倒な作業をたくさん、ちまちまやらないといけなくて、「はたして間にあうんだろうか?」と思いながら作業しているときは辛いですね。
ー ものづくりは、こだわろうと思えばいくらでもできますし、正解もないので終わりがありません。それでも公開日は決まっていて、期日までに完成させなければなりません。お子さんもいますが、仕事と家庭の両立はどのようにされていますか?
両立は、正直なところできていない気がします(笑)。家事が苦手なので、仕事が目の前にあるとつい仕事を優先してしまい、家庭が疎かになってしまうんです。でも気持ち的には家庭を大切にしようと思っているので、今は子どもを産む前の3分の2くらいの仕事量に減らしてもらって、無理のない範囲で働いています。
あらゆる経験が活かされるアニメ制作という仕事
興味があることは何でもチャレンジしておいて
ー アニメが大好きな子どもたちがたくさんいます。今は声優さんも子どもたちに人気の憧れの職業になっています。アニメをつくりたいというお子さんもたくさんいると思うのですが、どのようにすればアニメ制作の仕事に携われたり、監督になれますか?
監督に限らずですが、アニメはどんな話の担当になるかわからないので、あらゆる経験が活かされると思うんですね。だから興味があることはもちろん、そうでないことにもいろいろとチャレンジするといいかなと思います。あとは体力勝負なところもあるので、体力をつけておいた方がいいですね。
ー 子どもの頃にやっていて、意外と今の仕事に役立ってるなと思うことはありますか?
意外と、というところでは、週6でスイミングスクールに通って1日3,000メートルくらい泳いでいたことでしょうか。今はもうその蓄積はなくなっていますが、若い頃はわりと基礎体力があって無理もできたので、水泳で鍛えたおかげかなと思います。
あとは昔話が好きで、短くうまくまとまっている話をたくさん読んでいたのは、お話をつくったりまとめたりする引き出しを増やすことに役立っているのかなと思っています。
みんなでおしりたんていを応援してほしい
映画オリジナルのキャラもお見逃しなく!
ー たくさんの子どもたちがこの映画を楽しみにしています。映画を通して子どもたちに伝えたいことは何ですか?
とにかく楽しんでもらえるといいなと思っています。いつもは冷静なおしりたんていが、最強の敵を迎えてピンチになります。みんなでおしりたんていを応援してほしいですね。
お母さん方は、シリアーティが本当にかっこいいので、心の中でシリアーティを応援してもいいです(笑)。
オードリーという、映画オリジナルのキャラクターも魅力的です。国際警察ワンターポールの若手捜査官なのですが、見た目は可憐なのに仕事に一生懸命すぎてドタバタしてドジなところもあり、おちゃめな一面もまたかわいらしく、応援したくなるキャラクターになりました。
ー 厚底ブーツを履いたキュートな女性捜査官ですね。
ボンドガール的なキャラクターがいたらいいんじゃないかということで考えました。ブーツを履かせて背伸びをしてる感じを出したり、最初は髪飾りを考えていたんですがサングラスにして、それによってサングラスを小道具的に使うことができるようになったり、見た目的にもいいキャラクターになったと思っています。
実は制作途中でオードリーがいなくても成り立つんじゃないかという意見が出たことがあって、スタッフみんなでよりキャラを立たせるためにアイデアを出し合ってつくりあげていきました。だからけっこう思い入れのあるキャラクターです。
ー 今後の目標、夢を教えてください。
アニメに関しては、先日映画化も発表されましたし(映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』&令和『悪魔くん』が2023年秋に劇場公開)、もしまた「ゲゲゲの鬼太郎」をテレビシリーズ化する予定がありましたら、やりたいなと思っています。おしりたんていにも、また入れていただけると嬉しいです!
アニメ以外では、文鳥とキンカチョウという鳥を飼っているんですが、すごくかわいいので、いずれ繁殖に挑戦してみたいです。
ー 最後に「映画おしりたんてい シリアーティ」の見どころを教えてください。
とにかくシリアーティがかっこいいです! そしてオードリーとブラウンのユーモラスでかわいいやりとり。テレビでは見られない、おしりたんていのいろいろな表情と、おしりたんていの秘密がわかっちゃうかも!? なところも必見です!
映画ならではのスケールの大きさで、町の人々が大集結するところや、新聞の切り抜きなど細かいところもていねいにつくり込んでいて、すみずみまで楽しめます。さらにおすすめなポイントは音楽です。高木洋さんの楽曲が素晴らしく、映像を盛り上げていただいて感動的です!
『映画おしりたんてい シリアーティ』は、2022年3月18日(金)新宿バルト9ほか全国公開!
門由利子
東映アニメーション株式会社 演出。「プリキュア」「ボボボーボ・ボーボボ」「ゲゲゲの鬼太郎」などのアニメ作品に携わる。2022年3月18日(金)全国公開の「映画おしりたんてい シリアーティ」で監督を務める。
2022年3月18日(金)新宿バルト9ほか全国公開!
映画おしりたんてい シリアーティ
ホーホー博物館の地下にある開かなくなった扉。ワンコロけいさつが侵入者を捕らえるが、怪しい車に犯人を連れ去られてしまう。
事件の裏にいたのは、シリアーティ教授。彼の狙いは謎につつまれた秘宝『お・パーツ』だ。目的のためなら手段を選ばない冷酷な犯罪者であるシリアーティを捕まえるため、おしりたんていは国際警察・ワンターポールからやってきたオードリーとともに捜査を開始する。
次々と起こる不可解な事件に推理をはたらかせるおしりたんてい。そして、シリアーティは町を揺るがす事件を起こす。「闇が光を消し去ってやろう。このお・パーツの力でな」。
勝つのはおしりか、シリか。謎につつまれた秘宝を悪の手から守ることはできるのか!?
おしりたんていの名推理と史上最大の必殺技対決! ププッとした笑いも忘れず、ハラハラドキドキがあふれる物語が誕生!
同時上映「映画おしりたんてい 夢のスイートポテトまつり」
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