特別展「海 —生命のみなもと—」監修者と公式ナビゲーターの桝太一さん(写真右)。監修者は左から田島木綿子氏(国立科学博物館 動物研究部 脊椎動物研究グループ 研究主幹)、谷健一郎氏(国立科学博物館 地学研究部 鉱物科学研究グループ 研究主幹)、藤田祐樹氏(国立科学博物館 人類研究部 人類史研究グループ 研究主幹)、藤倉克則氏(海洋研究開発機構 地球環境部門 海洋生物環境影響研究センター 上席研究員)、野牧秀隆氏(海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門 超先鋭研究開発プログラム 主任研究員)、川口慎介氏(海洋研究開発機構 地球環境部門 海洋生物環境影響研究センター 海洋環境影響評価研究グループ 主任研究員)
海を知り、未来を考える特別展
公式ナビゲーターの桝太一さんが登場!
「深海」や「ダイオウイカ」など、今までにも数々の海に関する特別展を実施してきた国立科学博物館が、古より私たちと深く関係するとともに、すべての生命の源ともされる「海」についての特別展「海 —生命のみなもと—」を2023年7月15日(土)から開催! 前日に行われた内覧会に行ってきました!
【イベント紹介】特別展「海 —生命のみなもと—」
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【インタビュー】ダイオウイカ研究 窪寺恒己博士インタビュー!
【イベントレポート】特別展「深海2017 〜最深研究でせまる“生命”と“地球”〜」体験レポート!
内覧会には特別展「海 —生命のみなもと—」の公式ナビゲーター・音声ガイドのアナウンスを務めた桝太一さんが登場!「今日ここにいられることがとても嬉しい。国立科学博物館にはプライベートでも家族で毎年のように訪れていて、娘に特別展「海 —生命のみなもと—」は、お父さんが携わっていると言えることも嬉しいです。今回の展示は、見れば “海のことがすべてわかる” というものではないと思っています。むしろ海ってまだまだわからないことがいっぱいあるんだなと、そして研究者の方々が今まさにその謎を解き明かそうとしている真っ最中であることが伝わると思います。この展示を見た後で、海のことがもっと知りたくなって実際に海に行きたくなる、みなさまにとって展示会場の出口が海への入口になっていると嬉しく思います」。
特別展「海 —生命のみなもと—」公式ナビゲーター・音声ガイドのアナウンスを担当した桝太一さん。「海が大好きな人間のひとりとして、そうそうたる研究者の方々の横にいられることが本当に嬉しくて幸せです。嬉しさのあまり、深海ザメ『ラブカ』のネクタイをしてきました」
終始笑顔の桝さん。いろいろなポーズをしてくれました。本当に嬉しそうなのが印象的でした
どうして地球には水があるの?
「海」の特別展なのに宇宙からはじまる!?
“海” に関するの特別展なのに「はやぶさ2」が採取した小惑星リュウグウの試料の展示からはじまる特別展「海」。しかしこの直径2.1ミリの試料は、地球における水の起源についての新知見が詰まっています。同展は「なぜ地球に水があるのか?」という “そもそも” のところからはじまります。
第1章の「生命と海のはじまり」では、「はやぶさ2」が採取した小惑星リュウグウの直径2.1ミリの試料を展示。この試料は太陽系でもっとも原始的な物質であるとともに、水の存在下で形成されています
今までに海底で1,000以上の熱水噴出孔(チムニー)が見つかっていますが、いずれも黒いもの。しかし2001年に白いチムニーが見つかりました。とても珍しいもので、ここが40億年前に生命が生まれた場所なのでは? と、さまざまな研究者のインスピレーションを刺激しました
過去と現在をつなぐ生物。体の構造が化石のシーラカンスとほとんど変わっていないため「生きた化石」と呼ばれている
海ができると、そこにさまざまな生命が生まれます。第2章「海と生き物のつながり」では、日本列島周辺の海底を形づくるプレート運動や火山活動などの地学現象、黒潮を含む海流が生み出す大規模な海洋循環が生物の分布や多様性にどれほど影響し、大きな広がりが生まれているのかを紹介。
さらにクジラをはじめ海の大型生物がエサをとるために “潜る・浮かぶ” を行う「ホエールポンプ」という垂直運動が、“海洋の生態系を支えている” という新たな概念を紹介しています。
第2章の「海と生き物のつながり」。まるで海の中に入り、クジラやサメなどの大型生物を見ているかのようなスペース
ナガスクジラの裏側にまわると内部が見られるほか、新たな概念「ホエールポンプ」を紹介
プランクトン食のためギザギザの歯も小さめのメガマウスザメ。海面付近から200メートル以深で生息し、「ホエールポンプ」にも貢献している
世界最大規模の海流「黒潮」の影響を受ける南日本の沿岸域には、その恩恵により多種多様な生物が生息。ここでは黒潮の魚類を紹介
海溝やプレート境界の断裂帯などに広がる水深6500〜10920メートルに達する超深海に生きる生物も展示
独自の生態系が発達し、極限環境に適応したユニークな動物が生息している
会場内には子どもたちにもわかりやすい解説が設置。クジラやイルカが海岸にうちあがるニュースをよく見かけますが、それについても解説
第3章「海からのめぐみ」には考古学の遺物がたくさん展示され、まるで歴史博物館のような様相に。そしてここには沖縄で見つかった世界最古、約2万3,000年前の釣り針が展示されています。旧石器人というと槍を持ってマンモスを追いかけているようなイメージですが、すでに釣りをしていて、人と海との関わりを感じられます。
第3章の「海からのめぐみ」では、沖縄で見つかった世界最古、約2万3,000年前の釣り針が展示貝でつくられています
人類はどのようにして日本列島へ渡来したのか? 3万年前の航海の徹底再現プロジェクトで実際につくり使用した丸木舟を展示
縄文人がどのように海と関わっていたかを紹介
さらに現代人との海とのつながりも紹介。特に最新の深海調査機器「ハイパードルフィン」は、実際に使用してきた実機を展示。ここ20年使用している本物で、いたるところに傷やサビがある
海底には金属やエネルギー資源となる海底資源が埋蔵されている。写真はマンガン団塊
消えていく北極海の海氷の謎に迫る、海氷下ドローン「COMAI」
世界最悪のペースで温暖化が進む北極海。そこに生きるホッキョクグマにとっては深刻な問題となっている
海洋研究開発機構(JAMSTEC)の北極域研究船の模型
最後の第4章「海との共存、そして未来へ」は、今後、私たちがどのように海と関わっていくかを考えるもの。海の生物多様性も悪い方向へと変化しており、今後はいかに海の生き物を保全しながら利用していくかは世界的な課題となっています。
特別展「海 —生命のみなもと—」は、宇宙、地学、深海、海の生き物、歴史、ロボット、環境問題と、海を主題に幅広いテーマを扱っています。人と海との関わり、人が海に与えている影響についても展示しているので、普段、海との接点が少ない方も身近なこととして楽しめます。また子どもたちには、夏休みの自由研究のヒントも見つかりそうです。
特別展「海 —生命のみなもと—」は、2023年10月9日(月・祝)まで国立科学博物館で開催!
第4章「海との共存、そして未来へ」で展示されている「ヨコヅナイワシ」。海の生物多様性を守るために海にも保護区がつくられ、日本でも深海に保護区がある。そこで保護区が機能しているかの指標になっているのがこの「ヨコヅナイワシ」。「ヨコヅナイワシ」は食物連鎖のトップにいる生き物で、トップがいなくなるとそこの生態系は崩れてしまう。ヨコヅナイワシがいるということをモニタリングすることで、深海の保護区が機能しているというひとつの指標になる。「ヨコヅナイワシ」はこれまでに7個体しか採集されていないが、大きくて珍しいというだけでなく、海の生物多様性に関する意味がある存在となっている
絶滅のおそれのあるレッドリストにある海洋生物の一部。左からニホンウナギ、サラサハタ、ウロコフネタマガイ(通称 スケーリーフット)
日本では沖縄県にわずかに生息しているジュゴンもレッドリストにのっている生物
海洋プラスチックごみが海洋生物の脅威となっている。深海の食物連鎖の頂点に位置する写真のフトツノザメザメを含むサメ類(8種)の臓器からも高い濃度が検出された
クジラの胃から発見された海洋プラスチック