2024年2月23日(金・祝)全国ロードショー!
劇場映画『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』キャスト 蕨野友也さん、伊藤祐輝さん、田口清隆監督インタビュー!
※テレビシリーズ最終回のネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。
僕たちSKaRDはこのままでいいんでしょうか?
カフェでゲント隊長が監督に直談判!?
ー テレビシリーズの最終回に向けて、SKaRDの絆、ゲントとウルトラマンブレーザーの絆、そしてゲントの家族の絆が強まっていくのがとてもよかったです。また、みなさんの『ウルトラマンブレーザー』にかける想いが画面を通しても伝わってきて、とても観応えがありました。SKaRDのメンバーはどのような想いで撮影に取り組んでいたのでしょうか?
蕨野友也さん(ヒルマ ゲント:SKaRD隊長)
第1話でSKaRDにメンバーを招集するところからはじまり、今までみんなで積み上げてきた物語と、それぞれのキャラクターが積み上げてきたものが最終回でどのように結実するかという緊張感、高鳴りというものは少なからずありました。
自分が隊長としてやれることはテルアキに託すことだったり、怪獣とどう対峙していくか、そして月に行く作戦は死を覚悟したものでもあり、物語をご覧になる方も一緒にその覚悟を決めていただければという、さまざまな想いを込めて撮影に取り組んでいました。
伊藤祐輝(ナグラ テルアキ:SKaRD副隊長)
みんながそれぞれの役に集中していて、最終回に向けて緊張感が高まっていくのは僕も感じていました。
テルアキとしては月に行く作戦は、任務をしっかりと遂行できるか、仲間や自分にどれくらいの危害がおよぶかを意識していましたが、ゲント隊長の「全員無事に帰還する」という言葉を聞いて、この一点にのみ集中しようという覚悟が生まれました。そしてゲント隊長から「全指揮権を移譲する」と任務を託されるシーンの撮影は、本当に印象深かったです。
ー 田口監督はどのようなことをSKaRDのメンバーに伝えて撮影されましたか?
田口清隆監督
メイン監督と言っても、監督できるのは最初と真ん中と最後だけなんです。なので今回は “シリーズ構成” という形で各話の脚本にも関わり、物語全体の流れをつくれる位置にもいて、14話(2023年10月14日放送「月下の記憶」)の頃に「だいたい最終回(第25話)はこうなるよ」とみんなに伝えました。そうしたらゲントさんが「ぜひ会って話をしたい」と言ってくださって、第2話でゲントとエミ(搗宮姫奈さん)が出会うシーンを撮影したカフェで、わざわざ同じ席に座って2人で話をしました(笑)。
蕨野友也さん
「外で寒いですが、少しお時間ください」と言って(笑)
田口清隆監督
最終回ってやっぱりみんなも高ぶるし、僕も自分のつくってきた世界観の集大成なので気合が入っていたのですが、そのぶん脚本は難航していて、加藤雅也さん(ハルノ レツ参謀長)からもたくさんアイデアをいただいたりして、本当にみんなといろいろな話をしながらつくっていきました。
最終回までにできる準備はしておこうと。でもなんせ時間がない中で行わなければならないので、みんな集中力高くやっていたなと感じています。
【インタビュー】『ウルトラマンブレーザー』キャスト蕨野友也さん、搗宮姫奈さんインタビュー!
ー カフェでは蕨野さんとどのような話をされたんですか?
田口清隆監督
僕がいないときの現場の状況や、それに対するお互いの対処だったり、最終回の展開についても意見をもらいました。暗くなるまで2人でずっと話しましたね(笑)。
蕨野友也さん
やっぱり不安だったんですよね。最終回を迎えるということは、テレビシリーズの『ウルトラマンブレーザー』が終わるということなので、自分たちはその終わり方でいいのか、もっと良い終わり方、何かできることがあるんじゃないか。もっともっと突き詰めたい、この『ウルトラマンブレーザー』は中途半端に終わらせたくない。そういう想いだけでした。
田口清隆監督
最終回の内容もですが、それに向けた取り組み方についても話しました。本当にストイックに貪欲に、もっと上があるんじゃないかとどんどん提案してくれて、言われて気がつくこともたくさんありました。お互い高めあうことができたと思います。
“蕨野” 個人としてはできない命令
この5人なら成功できるという信念
ー 最終回前の24話(2024年1月13日放送「第3波接近襲来」)で、アースガロンで月へ行くことをメンバーに伝えます。命をかけてもらうことになりますが、それを伝えるとき、ゲント隊長はどんな気持ちでしたか?
蕨野友也さん
ほぼほぼ無理な作戦だということはわかっていながらも、長としては命令を出さなければならなくて、彼らにも理解してもらわないといけない。でも “蕨野” 個人としては「どんな結果になっても月に行って戦いましょう」とは言えなくて。ここは田口監督にはご迷惑をおかけしたところでもあったんですが、でも気持ちを切り替えて、無茶だとわかっていながらも「お前たちどうだ? 一緒に戦ってくれるか?」という気持ちをこめました。
ー ゲント隊長の命令をメンバーそれぞれが一歩前に出て快諾していきます。この順番は、どのように決めたのでしょうか?
田口清隆監督
副隊長のテルアキが一番最初に前に出ているんですが、彼は全員の命を気にしています。次にアンリ(内藤好美さん)。アンリは防衛隊員としてもっとも叩き上げの人物という設定なので、自らの命は顧みず一歩前に出るんですが、誰がどの順番で前進するかは、脚本の段階からとても気にして決めました。
伊藤祐輝さん
第21話(2023年12月9日放送「天空の激戦」)でも、テルアキはヤスノブ(梶原颯さん)とアンリのことを気にかけています。副隊長として隊員をどのように守っていくかということと、防衛隊員として、仲間として、SKaRDとして最高の動きができるようにするにはどうしたらいいか、常にサポート面も見ていました。
でも月への指令のシーンで命令に快諾するアンリ、ヤスノブ、エミの顔を見たときに、彼らはもう僕がサポートする必要はなく、すでに覚悟を持って任務にあたり、今回の作戦もこの5人なら成功できるという信念を持っているんだと感じました。
がんばる親御さんの姿をゲント隊長が体現
2023年だからこそつくりたかった物語
ー 仕事が忙しくて子ども、家族との時間が充分ではないというのは、親御さんの多くが経験していることだと思います。ゲント隊長も同じ悩みを抱えています。お母さん、お父さんのがんばりを子ども、家族に理解してもらうのは難しいですね。
蕨野友也さん
自分ががんばっている姿って、ほとんどの方は見せることができないですよね。僕自身は、父が大工の棟梁で家でも木を削っていたりしていたので、父の仕事をしている背中を見ていました。ゲント隊長は怪獣被害にあった方々を救助しているところをテレビのニュースで報じられ、期せずしてジュンがゲントの仕事を見たという描写がありますが、外で働いていらっしゃる方々は、その背中を見せるのは難しいですよね。
田口清隆監督
『ウルトラマンブレーザー』の企画を練っている段階で、妻子あるお父さんで隊長が主役というのは、子どもたちが感情移入できるかを危惧する意見はあったんですが、コロナ禍でリモートが増えたことで、家でがんばって仕事をしている親御さんの姿を “かっこいい” と子どもたちが感じ、調査によっては、子どものなりたい職業の1位がYouTuberをおさえて会社員になったんですね。こんなにがんばっていたから、夜、家に帰ってきたらグタッと疲れちゃっていたんだと(笑)。
子どもたちもがんばっている親御さんを見ればかっこいいと思うし、好きになるんだと思えたので、今回のゲント隊長って、まさに世のがんばっている親御さんの代表であり、これならいけるはずだと説明したら、みんな「なるほど」「やってみよう」と納得してくれました。この企画を考えている我々自身も同じ立場ですからね。
実際に放送がはじまっても、ゲント隊長に感情移入できないという意見は出ませんでした。だからゲント隊長はがんばっている親御さんの代表ですし、そうなってほしいなと、狙ったことをゲント隊長が体現して子どもたちに見せてくれたと思っています。
ツブコン2023での田口監督の発言の真意
こういう怪獣映画もいいでしょ!
ー 2023年11月25日(土)に東京ドームシティで開催された「TSUBURAYA CONVENTION 2023(ツブラヤコンベンション 2023/ツブコン2023)」で、劇場映画『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』の発表をされました。その際、田口監督は「世の中、怪獣映画はたくさんありますが、『怪獣映画こういうのでもいいんじゃないか?』と思うものをつくってみました!」とおっしゃっていました。“こんなのでも” の真意は?
田口清隆監督
言い方が良くなかったですね(笑)。今はアメリカでもどんどん怪獣映画をつくっていますし、日本産の『ゴジラ-1.0』が世界で大ヒットしました。僕もゴジラは大好きなので非常に良い流れだと感じています。だけどその怪獣たちは、ほぼ全部がCGです。
もちろんCGも良いんですが、僕が観て育ってきたのはこういうミニチュア特撮なんです。しかめっ面したおじさんたちが寄ってたかってひとつのビルを壊すのにいろいろやっているという世界観が好きなんです(笑)。
CGをふんだんに使って巨大感を緻密に表現した怪獣映画もつくりたいんですが、ミニチュアセットの中にスーツが堂々と立ち、まさに手で触れられるものを本当に爆破して、大人たちがワーワー言いながらつくっている特撮があたり前に許されている世界って、もはやウルトラマンシリーズと「スーパー戦隊」だけになってしまった。
だからCGでとことんリアルを突き詰めていくのもいいですが、“こっちもいいでしょ!” という意味で、それをふわっとオブラートに包んだ言い方をしたら、「怪獣映画こういうのでもいいんじゃないか?」になってしまったという(笑)。超ド直球で「特撮」を使った大怪獣映画をめざしました。そういうつもりの言い方だったんですよね。
大人たちのやり方はおかしい?
劇場映画は子どもたちから見た大人
ー テレビシリーズがスタートしたときは「俺が行く」でしたが、劇場映画のポスターは「俺たちが、行く」になっています。ひとりで何とかしなければという考えから、SKaRD、ウルトラマンブレーザーとの絆が深まるにつれ、ゲント隊長の中で何かが変わったということでしょうか?
蕨野友也さん
最初は「俺が行く」、途中で「行くぞブレーザー」、そして今回の「俺たちが、行く」ですね。確かにゲントが単騎特攻をしなくなっています。それはSKaRDとしての結束力、チームワークが高まり彼らを信頼しているからこそ、この5人で、自分たちがやらなければ誰がやるんだ、という想いが込められているから、「俺たちが、行く」になっているんだと思います。
伊藤祐輝さん
以前は単騎特攻をしていたんだなと感じる瞬間はありましたが、SKaRDとしての時間が長くなるにつれ、ゲント隊長なりの方法でメンバー一人ひとりを見て、信頼を深めているんだなというのを感じました。
ー 劇場映画では子どもから大人に対する意見があり、耳が痛いものでした。今を生きる大人たちが抱えるあらゆる負担を先送りして、今の子どもたちが大人になったときに大変な思いをするであろう現状を思い浮かべてしまいます。テレビシリーズは世界の状況、劇場映画はこの国の状況が思い浮かびます。
田口清隆監督
どちらも基本的には “世界” で考えているんですが、テレビシリーズの目線は今の若者たち、劇場映画の目線はもう一段下の子どもたちにしたんですよね。
僕も今は中堅となり、この板挟みの位置からは若い人たちの苦しみも、上の人たちの責任もある程度見えるようになりました。だからこそ、最終回でエミが言う「あなたはやるべきことをやったんだと思います。だから、今度は私たちにやるべきことをやらせてください」と言うセリフが生まれました。これはテレビシリーズで僕の中の裏テーマでした。古くなった理想を維持するために意固地になっている一部の人たちのせいで上手くいかないことが、たくさんあると思うんですよね。
娯楽作品のため今まではもう少し遠回しに表現していたんですが、今回の『ウルトラマンブレーザー』に関しては、テレビシリーズも劇場映画も、直球で正面からしっかりと描くということをやってみました。
劇場版は、これが「初めての映画体験」になる子どもたちが多くいると思い、基本的に子どもたちに向けてつくりました。テレビと違って時間も長いですから。
その中で、子どもたちが純粋に “おかしい” と思っていることを怪獣にのせてみた。世の中は僕が子どもの頃と同じ状況どころかどんどん悪化しているように感じていて。われわれ大人に対して「子どもたちにこんな風に見られているけど、どうする?」と突きつけるみたいな。だからと言って子どもは純粋で正義かと言えば、中野さんの脚本ですから、そこはひと筋縄ではありません。
子どもたちに伝えたいこと、いつか伝われば
『ウルトラマンブレーザー』に仕込んだ “毒”
ー 最後に、今回の劇場映画で、子どもたちに特に注目してほしいところを教えてください。
伊藤祐輝さん
僕らSKaRDの頼もしい味方となってくれたウルトラマンブレーザーとともに、新たな怪獣に立ち向かいます。ブレーザーとSKaRDとアースガロン、みんなで一緒にひとつの目標を達成しようとする姿に、ぜひ注目してほしいです。
蕨野友也さん
大人は大人なりに何かを守ろうとしていて、大人もがんばっているんだぞ、というのが随所に描かれていると思います。それを子どもたちに “感じてね” というのは難しいと思うけど、テレビシリーズも劇場映画も、今は全部わからなくても、大きくなって再びこの作品に出会うことがあったときは、当時とは別の視点で見てもらえると嬉しいです。劇場映画では特に大人ががんばっている姿が描かれているので、ぜひ親子で観ていただきたいと思っています。
田口清隆監督
実はウルトラマンやゴジラなど特撮ものの多くには “毒” が仕込まれています。その時代の社会、または人類そのものへの批判・風刺、後から気が付くメッセージ、裏テーマです。この『ウルトラマンブレーザー』にも、もちろん “毒” を仕込みました。
テレビシリーズ最終回のキーワードの「未来」は「子どもたち」のことです。子どもたちが社会を背負う頃には僕らはもう何もできないと思うので、今のうちに仕込むだけ仕込んでおきました。
単純に映画を楽しんでもらえればそれが一番ですし、好きに受け取ってもらえればいい。将来また観たとき、観た年齢や状況によって初めて気づくことがいろいろあると思います。いつか僕らが仕込んだ何かに気がついてくれたら嬉しいし、選択を迫られることがあったときに、ふと思い出して役に立ってくれたらいいなと思っています。
劇場映画『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』は、2024年2月23日(金・祝)全国ロードショー!
日本の首都 “東京” を舞台にシリーズ最大の敵と大激突!
ある工業地帯にぞろぞろと怪獣が出現!? ゲント隊長率いる特殊怪獣対応分遣隊SKaRDが迎え撃つが、倒しても倒しても次々に襲い来る怪獣たち。
この地帯に工場を持ち、怪獣の残骸の処理や研究を行う先進化学企業・ネクロマス社に何らかの関係があると考えたSKaRDは、最高経営責任者で世界有数の化学研究者でもあるマブセ博士のもとへ急行。
ネクロマス社の研究所では、生命の根源にも関わる “不老不死” を実現できる物質「ダムドキシン」を開発しており、完成間近だという。
そんな中、突然「宇宙の覇者」と名乗る謎の「ダムノー星人」が出現! 破壊されたタンクから溢れ出した「ダムドキシン」が研究所のサンプルを飲み込み、恐ろしく巨大な「妖骸魔獣ゴンギルガン」が生み出されてしまう。いま、日本の首都を舞台に、ウルトラマンブレーザー&SKaRDと大怪獣との壮絶な大激突の幕が切って落とされる!
蕨野友也(わらびの ともや)
1987年8月4日生まれ、宮崎県出身。2007年の俳優デビュー後、テレビや映画に立て続けに出演を果たし、多方面で活躍。ヒーロー作品ファンには名の知れたキャラクターで変身役も好演し人気を誇る。家族好きを公言している通り、故郷・宮崎での活動も積極的にこなし、県の “みやざき大使” や都城市の “みやこんじょ大使” を務めている。芝居に対するストイックな性格は、田口監督が「ゲントと話しているのか蕨野さんと話しているのかわからなくなる」と評するほど、主人公ゲントと一心同体となって、ウルトラマンブレーザーを好演中。
伊藤祐輝(いとう ゆうき)
1987年1月24日生まれ、北海道出身。大学で出会った恩師の言葉に感銘を受け俳優を志し、2007年の映画出演を機に数々の映画やテレビドラマに出演。舞台、ミュージックビデオ、CMなどでも活躍中。
田口清隆(たぐち きよたか)
1980年5月7日生まれ、北海道出身。幼少期に再放送で観た『ウルトラQ』『ウルトラマン』をきっかけに特撮作品や怪獣作品を愛し、上京前から自主映画を制作。上京後は日活芸術学院に入学し、同級生だった武居正能監督とともに映画を学ぶ。在学中から数々の作品に参加して修練を積み、VFXクリエイターとしても活躍しながら、映画監督の道を着々と昇り、押井守監督や樋口真嗣監督とも親交が深い。ウルトラマンシリーズでは、2001年テレビ『ウルトラマンコスモス』の助監督で初参加後さまざまな作品に参加し、『ウルトラマンX』『ウルトラマンオーブ』『ウルトラマンZ』ではメイン監督を担当。ニュージェネレーションウルトラマンシリーズ以降、円谷プロ作品には欠かせない存在となっている。その卓越した技術や発想、積み上げた経験を活かして、幅広く活躍中。
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