ビオトープとは?
“ビオトープ(Biotop)”とは人工的に作られた“さまざまな生き物が共生できる場所”のことです。ドイツの生物学者エルンスト・ヘッケルが提唱したのがはじまりと言われ、ギリシャ語の「bio(ビオ:命)」と「topos(トポス:場所)」との造語になります。
ドイツでは工業化などによる環境問題が深刻化した1970年代頃から、失われた生態系を復元するため、本来その地域に棲む生物が生息できるよう、生態系保全を意識した地域づくりとしてビオトープがつくられるようになりました。
日本でも1990年代末頃から各地でビオトープがつくられはじめ、今(2008年現在)では学校などにも導入され、体験学習のひとつとしてビオトープが活用されています。
※参考:独立行政法人 国立環境研究所

直径約70cmほどの睡蓮鉢です。5,000円で購入しました。ネットにもたくさんの種類の睡蓮鉢が売っています
ベランダにビオトープをつくろう!
このビオトープ、国が整備するものはもちろん、学校につくられるものもかなり本格的ですが、ごくごく小さいものなら自宅のお庭やベランダでも可能です。庭やベランダにつくることから「ビオトープガーデン」など別称で呼ばれることもありますが、今回はこのビオトープをベランダにつくってみました。
「なぁ〜んだ、そんなの?」と思われてしまうかもしれませんが、つくり方はとっても簡単。大きめの睡蓮鉢に土(荒木田土か、最近ではビオトープ用の土も販売されています)を敷いたら水を入れ、そこに水生植物を植え、メダカを放せばおしまいです。かかる費用も、睡蓮鉢の価格によりますが、5,000円〜8,000円もあれば最小限なものはできあがります。
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「ホテイアオイ」という水草です。水に入れておくと、勝手に株が分かれて増えていきます。1株50円で購入。夏には紫色のきれいな花を咲かせるそうです

「スイレン」という水草です。根をガッチリと張ってしまうので、鉢に入れたままの方が、あとの管理が楽です。1,000円で購入しました

田んぼからとった土「荒木田土」には、微生物がいっぱい。2リットルで300円程度。「ビオソイル」という、ビオトープ専用の土も販売されているそうです

薄い黄色の「ヒメダカ」と、薄い青色をした「青メダカ」を購入しました。3匹で500円程度。縁日の「メダカすくい」ですくってきてもいいですね
自然は巡る
そしてこのビオトープ、すごいところはエサも水の入れ替えも、もちろんエアポンプなども必要ないところ。人工でつくったものとは言え、自然な生態系を目指していますから、エサやエアポンプなんてものは必要ないのです。
睡蓮鉢の底に敷いた土には目に見えない微生物がいっぱい生息しています。メダカはその微生物を食べ、植物はメダカの排泄物を栄養に育ち、光合成により水中に酸素をもたらしてくれるのです。さらに不思議なことに、どこからかタニシが出てきて鉢内に付いた藻を食べて掃除してくれます。蒸発して少なくなった水は、雨によってもとに戻ります(夏場など蒸発が激しく、あまりにも少なくなったら、水を足します)。
また外的な要素も関わってくると、さらに楽しいことになります。鳥が水を飲みに来たり、トンボが卵を産みに来たり。個人的な目標のひとつは、このビオトープに自然にヤゴが現れること。その場合もちろんメダカがエサとして食べられてしまうのでしょうが、それはそれ、生態系ですから。当初7匹だったメダカですが、今では20匹近い稚魚が元気に泳いでいます。ヤゴが現れる頃には生態系が崩れない程度には増えていることでしょう。
なお、かなり後で気が付いたのですが、ヤゴが無事羽化できるよう背の高い植物も植えないといけないですね。
ずっと見ていても飽きない、意外に楽しいんです
そうやって今後の展開なども想像しながら見ていると、こんな小ちゃなビオトープですが、意外におもしろいんです。おそらくは予想していなかったことも、起こるんでしょうね。今では毎日ベランダに出ては、メダカ元気かな、とか、稚魚は何匹いるかな、なんてしばし見入っています。自然ですから、癒しとしての役割もあるかもしれませんね。
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【ビオトープの作り方:01】スイレン鉢に荒木田土を入れます。荒木田土はまだ全部入れず、半分程度残しておきます

【ビオトープの作り方:02】固まっている土は砕いておきましょう

【ビオトープの作り方:03】スイレンをポットから取り出します

【ビオトープの作り方:04】ポットから取り出したスイレンを鉢に入れます。スイレンは根をガッチリ張るので、こうしておいた方があとの管理が楽になります

【ビオトープの作り方:05】スイレンの鉢をスイレン鉢に入れ、位置を決めます。そのまわりに残りの荒木田土を入れます

【ビオトープの作り方:06】静かに水を入れます。水が濁らないように注意しましょう(とは言え、濁ります)

【ビオトープの作り方:07】“静かに”と言っているのにかき混ぜてしまう子ども。まぁこんなもんでしょう。よい子は真似しないように

【ビオトープの作り方:08】水を入れたらホテイアオイを浮かべます。今日できるのはここまで。メダカの放流は泥が沈殿し、水の濁りがなくなってからです。2〜3日このまま放置します

【ビオトープの作り方:09】2〜3日もすると、だいぶ水が透き通ってきました。これなら、そろそろメダカを放せますね

【ビオトープの作り方:10】水槽に入れておいたメダカを網ですくいます。小さいので慎重に

【ビオトープの作り方:11】すくったメダカをビオトープへ移します。新しいこの環境は、気に入ってくれるでしょうか?

【ビオトープの作り方:12】元気に泳いでいますね。水槽と違って横からの様子は見えなくなりますが、その方が自然と言えば自然ですね

【ビオトープの作り方:13】これでビオトープのできあがり。基本的にはこのまま何もしませんが、極端に水が少なくなったら水を足し、またアオミドロという藻が大量に発生したら取り除きます

ビオトープをつくって2週間ほどしたら、メダカのお腹に卵がありました。メダカは最初はお腹に卵を抱え、しばらくすると水草の根に卵を移します

水面をよ〜く見たら、卵から孵った稚魚が泳いでいました。体長5mmくらい。元気に大きくなるといいですね
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