22年前に感じた『ジュラシック・パーク』の衝撃と高揚感が甦る!
初めての子どもたちと、その気持ちを共有!
ー『ジュラシック・ワールド』を拝見させていただきました。22年前に『ジュラシック・パーク』(1993年公開)を観た時に感じたワクワクした気持ちが甦りましたし、同じようにドキドキしながら観ました。世界中で大ヒットしていますが、公開前と今とで、まわりや自分に何か変化はありますか?
ニック:これだけヒットした作品に出演し、露出も増えているので、仕事のうえでは大きなチャンスをいただいたと思っています。でも、普段の生活は特に変わっていません。僕らとしても22年前に公開した『ジュラシック・パーク』のときのみなさんの反響、反応、衝撃というものを再び感じてもらいたいと思ってつくった作品なので、その感想はとても嬉しいです。
タイ:よく「変わった?」って聞かれるけど、僕ら2人とも特に何も変わっていないんだ。でも『ジュラシック・パーク』と同じように多くの方々に楽しんでいただけているというのを聞くのは本当に嬉しいし、“『ジュラシック・パーク』の精神”というのが伝わっているというのも嬉しいです。
ー 恐竜とのシーンがたくさんありましたが、今回の撮影で何か自分が成長したと得たものはありましたか?
ニック:たくさんの恐竜が出演していて、彼らの仕事ぶりからは学ぶところがたくさんあった、というのは冗談として(笑)、共演者のクリス※1やブライス※2を見ているだけでも学ぶところは本当に多くて、特にクリスは現場でのまわりへの接し方だったり、“楽しいことが大好き”という姿勢で仕事にも向かうんだけど、とても深く考えた技術的なアプローチを行なっていたのはとても勉強になった。
クリスは「WAY OF THE PEACEFUL WARRIOR」※3という本を読むように薦めてくれて、すごく参考になったし、クリスの人生観というのはこういうものなんだ、というのも感じられましたね。
タイ:今回は肉体を使うシーンが多くて、特にトレーニングはしなかったけれど、走り回ったりジャンプしたり、いろいろな形でエネルギーを開放する役でした。高いところや虫が苦手なんだけど、撮影を通して、自分の恐れていることに対峙できるようになったかな。ハワイの撮影ではけっこう大きな虫がたくさんいて、特にクリスには「男になれ、大丈夫だ!」と励まされました。
※1 クリス・プラット:小型恐竜ヴェロキラプトルを手懐ける調教師であり、元軍人で恐竜行動学のエキスパート、主人公のオーウェンを演じている。2014年に公開され大ヒットを記録したマーベル・スタジオ作品『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』では主役のスター・ロード/ピーター・クイルを演じた。今、大注目のアクター。
※2 ブライス・ダラス・ハワード:パークの最高責任者であり、今回インタビューした2人の伯母でもあるヒロインのクレア役。姉である2人の母親に子どもたちの面倒を頼まれるが、多忙な彼女にそんな時間はなく、フリーパスを渡して自分たちでパーク内を見学させる。
※3 1980年に出版された、体操選手ダン・ミルマンの自伝的小説。オリンピックを目指すひとりの有望な体操選手がソクラテスと自称する謎の老人と出会い、挫折や困難を乗り越える力を身に付けていく姿を描いた、スピリチュアルブームの火付け役ともなった本。「癒しの旅 – ピースフル・ウォリアー」として日本語翻訳本も発売。2006年には「Peaceful Warrior」として映画化もされている。
ー 滝から飛び降りるシーンがとても印象的でした。怖かったと思うのですが、撮影はどのように行なわれましたか?
タイ:下が岩場で危なかったから実際には飛び降りていないんだけど、滝まで走るところを撮って、それからハーネスをつけて崖ギリギリのところで演技、そしてプールに落ちるところを撮って、最後に滝から飛び降りた後の川を泳ぐところを撮りました。高いところが苦手なので大変でした。
ー 絶滅した恐竜の復活はとても夢のあることだと思いますが、今までの『ジュラシック』シリーズを通してみても、人間は踏み込んではいけない領域に踏み込んだり、今回も遺伝子操作によって新種(ハイブリッド)をつくり出してしまったり、人間の愚かさのようなものも映画から感じられますね。
ニック:人類は長いあいだ食物連鎖の一番上にいるので、自分たちを止めることができないんじゃないかな。神のようなこともできると、少し過信しているところはあると思う。でも、究極的には我々は、母なる自然に勝利することはできません。それこそティラノサウルスのような恐竜が生きていた6,500万年前に人類が生きていたら、今ごろ我々はいないだろうし、この映画では、そういうモラル的な問いかけをたくさんしています。どの段階で、どこまで領域を踏み外してしまうのかとか、進化はどこまで進むものなのかとか、僕としては過去は過去のものとして、起こす必要はないと思っています。
タイ:まったく同感だけど、今、実際に鶏を遺伝子工学で T・レックス(ティラノサウルス)化するという実験を行なっている科学者がいます。僕たちや僕たちの子どもの世代は、もしかしたら恐竜が生まれる瞬間を見られる時代にいるのかもしれない。だけど、そういうものが見られるテーマパークはつくるべきじゃない。それだけの知性は、人間にはあるんじゃないかなと思っています。
ー その科学者って、『ジュラシック・パーク』で科学者のモデルにもなったジャック・ホーナー博士ですよね?
ニック:そう。『ジュラシック・パーク』の原作者マイケル・クライトンは、ホーナー博士※4の仕事からインスピレーションを受けて『ジュラシック・パーク』のストーリーを思いついたのかもしれない。どっちが先かわからないけど、でもホーナー博士はすべての『ジュラシック』作品に恐竜エキスパートとして関わってるよ(※注:実際には『ジュラシック・パーク』を執筆した際、ホーナー博士の学術書「Digging Dinosaurs」を参照し、小説に登場させる恐竜を古生物学的な観点から確かめた)。『ジュラシック』シリーズは最先端科学と古生物学がしっかり反映されているから、作品にリアリティーがあるんだ。
※4 ジャック・ホーナー:モンタナ州立大学教授でロッキー博物館古生物学部門の責任者。著名な古生物学者であり、恐竜が子育てをしたという初めての明確な証拠となったマイアサウラを発見。映画版『ジュラシック・パーク』全作品のテクニカルアドバイザーを務めるとともに、1990年に出版されたマイケル・クライトンによる小説では主人公アラン・グラント博士のモデルでもある。現在では新たなアプローチとして、現代に生きる恐竜の子孫“鳥類”に焦点をあて、鶏から再現する恐竜「チキノザウルス」の実現に向け、遺伝子工学を用いて歯、尻尾や手などの祖先の特徴的な痕跡の復元を目指している。
(参考)
https://ja.wikipedia.org/wiki/ジャック・ホーナー
http://www.ted.com/talks/jack_horner_building_a_dinosaur_from_a_chicken?language=ja
ー 1作目の『ジュラシック・パーク』をオマージュしているようなシーンも見受けられましたが、こんなことを知っていると、より映画が楽しめるよ、ということがあれば教えてください。
ニック:本当にたくさんあって、ひとつだけ紹介すると、『ジュラシック・パーク』のビジターセンターが出てきて、そこにジープがある。『ジュラシック・パーク』ではヘリコプターに乗り込むときにそのジープを使うんだけど、そのときに登場した18番と29番のジープが今回も登場しています。他にも本当にたくさんあるよ。
ー じゃあそれは、映画や、DVDが発売されたらじっくり観てのお楽しみですね。
ニック:その通り!
タイ:『ジュラシック・パーク』で登場したのとまったく同じ恐竜が今回も登場しているので、そこも要チェックだよ!
ー 俳優という仕事や、映画づくりはどんなところが魅力ですか?
タイ:新たな人との出会いがあったり、初めてのところへ行ったりできるのが魅力ですね。
ニック:みんなと力を合わせて、何もないところからひとつのストーリーをつくりあげていくというのが映画づくりの魅力です。そして観客の方が夢中になったり、キャラクターに思い入れを持ってくれたりできるものをつくりあげていく、その中で演技はパズルの最後のピースみたいなものだと思っています。あと自分にとって演技は、自分を表現するひとつの方法でもあるので、セラピー的な効果もありますね。
ー 俳優を目指している子どもたちにアドバイスをお願いします。
ニック:自分らしさを忘れずに。舞台は演劇力を磨いたり、本当に自分は演技が好きかどうかを確かめる場所として最適です。自分のことを信じて努力してください。
タイ:役に対して前向きに。セリフは覚えて、言えること。そして台本に書かれていることをちゃんと演じられるようになること。即興をいっぱいやってみるのは、とてもいいエクササイズだと思います。
ー 最後に、ぜひここは観てほしい! 伝えたい! ということがあれば教えてください。
タイ:恐竜が闊歩しているような危険なテーマパークに、子どもたちだけでは絶対に行かせてはいけない! というのを、お父さん、お母さんに感じて欲しいですね。もしかしたら、それが子どもたちとの最後になってしまうかもしれませんよ(笑)!
ニック:だから『ジュラシック・ワールド』も、子どもたちだけではなく、親も同伴でお願いします(笑)! でも親御さんが、もし22年前の『ジュラシック・パーク』を観た方で、おもしろかった、衝撃を受けたということであれば、同じような感覚を今回も味わっていただけると思います。そして『ジュラシック・ワールド』で初めて「ジュラシック」の世界に触れる子どもたちは、親御さんが感じたのと同じ感覚を共有できると思います。ぜひ親子で、今、私たちのいる世界とはまったく異なる“ジュラシックの世界”に誘われてください!
インタビュー後記
こんなにヒットした映画に出演しているなんて、どんな気持ちだろうと思って聞いた最初の質問でしたが、2人とも喜んでいながらも、とても冷静だったのが印象的でした。2人で冗談を言いながら質問に答えてくれたり、写真の撮影でも、本当に仲の良いのが伝わってきました。2人とも今後、確実にスクリーン上で見かける機会が増えるでしょうね。
22年前に公開された『ジュラシック・パーク』は、琥珀に閉じ込められた蚊が吸っていた恐竜の血液からDNAを取り出し、恐竜を甦らせるというものでした。“本当に恐竜は甦るのかもしれない”、まるで本当に甦ったかのようにスクリーン上を走り回る恐竜を観ながら、当時はその可能性にも胸が高鳴ったのを鮮明に覚えています。そして今回の『ジュラシック・ワールド』は、冒頭の質問にもあるように、当時の気持ちが自然と思い出され、同じような高揚感を持って“ジュラシックの世界”に誘われました。
ニックもインタビューで話してくれたように、以前『ジュラシック・パーク』を観た方はそのときのワクワクした気持ちを再度体験できるとともに、初めて観る子どもたちと、その気持ちを共有できる。革新的で多くの人たちに夢や可能性を見せ、また圧倒的な衝撃を体験させてくれた『ジュラシック・パーク』の精神はそのまま、映像技術も科学も進化し、押しつけではなく、生命をつくり出してしまうことをはじめとするさまざまなモラルへの問い、両親や兄弟、家族の絆など、物語もさらに充実したものになっています。『ジュラシック・ワールド』は、この夏、親子で観るのにオススメの映画です! 恐竜の迫力を感じるためにも、ぜひ大きなスクリーンで観てください!
タイ・シンプキンス(グレイ役)
2001年8月6日生まれ。生後3週で伝説のソープオペラ「One Life to Live」でデビュー。2005年にはスティーヴン・スピルバーグ監督の『宇宙戦争』でスクリーンデビューを果たす。2013年にスーパーヒーロー作品史上4位の興行収入を記録したロバート・ダウニーJr.主演の「アイアンマン3」に出演して脚光を浴びる。2015年4月のトライベッカ映画祭でプレミア上映されたオリヴィア・ワイルド、エリザベス・モス、ルーク・ウィルソン共演の心理ドラマ「Meadowland」に主演、学校で問題を起こし続ける障がいを抱えた子どもの役を演じている。また、同年3月のサウス・バイ・サウスウエスト映画祭でプレミア上映された実姉ライアン・シンプキンス共演のスリラー作品「Hangman」にも出演。その他出演作は『リトル・チルドレン』(2006年)、『レヴォリューショナリー・ロード』(2008年)、『インシディアス』(2010年)など。
ニック・ロビンソン(ザック役)
現在20歳(2015年7月現在)。ハリウッドの新世代を担う若手俳優として注目されている。クロエ・グレース・モレッツ、リーヴ・シュレイバー共演のソニー・ピクチャー作品「The 5th Wave」(J・ブレイクソン監督)の撮影を終えたばかり。全米公開は2016年1月予定。2013年のサンダンス映画祭で上映されたジョーダン・ヴォクト=ロバーツ監督のダーク・コメディー映画「The Kings of Summer」の演技で脚光を浴びる。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の「サンダンス映画祭で見つけた今後大注目の新星5人」に選ばれる。
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