シミのついたロンパースに感動!
未来をイメージして「ロンパースベア」をつくる
ー お客様が「ロンパースベア」をつくる背景を知ることも多いと思うのですが、特別な想い入れなどは出てきますか?
浅田さん:そうですね。私も娘のロンパースをとっておいてあったので、最初、それを使って何点か試作品をつくったんです。そうしたら娘が私のアトリエに入ってきたときに、もう高校生で、照れもあるし、あんまりちゃんとは言わないのですが、「私これ着てたよね」って言うんですよね。で、「ふぅん、こういうのつくるんだ、いいじゃん」とか。子どもも、そうやってロンパースベアを受け入れてくれるんだなと思って。
だからロンパースベアを受け取ったお子さんが大きくなったときに、「自分のためにつくってくれたんだな」「自分のことを想ってくれていたんだな」というふうに想ってくれるだろうという未来を勝手にイメージして、より良いものをつくりたいって思っています。
ー 印象に残っているロンパースベアはありますか?
渡辺さん:未熟児で生まれ1年間入院していたお子さんが今ではとても元気になって、でもその1年を忘れないようにつくります、という方もいらっしゃいましたし、結婚式で娘さんにプレゼントする親御さんもいらっしゃいました。男の子が4人いて、全員で着回したお洋服でロンパースベアをつくった方もいらっしゃいます。お子さんたち全員がロンパースベアを囲んでいる写真を送ってくださって、まるでロンパースベアが5人目の兄弟みたいでした。
浅田さん:最初は、こういうのを依頼されるお客様はブランド物のお洋服を送ってくるのかなと思っていたら全然違って、中にはかなりシミのついたお洋服が送られてくることもあります。本当に思い入れのあるロンパースを送ってくださっているんだなって、とても感動しました。
シミのついた部分を使っていいかは一応お客様にお伺いしてからつくるようにしていて、どのお客様も取り返しのつかない一点ものを送ってくださっているので、生地をとるとき、最初はハサミを入れるのに手が震えました。
親と子どもは違う。「ロンパースベア」を見てクールダウンすることも
ー 浅田さんは、小さいころからお裁縫などが好きだったんですか?
浅田さん:もともとは絵を描くのが大好きで、外に遊びに行くより家で絵を描いたり、何かをつくったり、小さい頃から「大きくなったら何かつくる人になる」と言っていましたね。
私の親は物を買い与えてくれる方ではありませんでしたが、高校は芸術系、大学は美術大学、そして東京に行きたいというときも行かせてくれて、やりたいことには賛成してくれました。自分が親になってわかったのですが、子どもの考えに理解を示して優先してくれたのは、本当にあっぱれな子離れだなと、私もかくありたいと思っています。ひとり娘で手放すのが惜しいですが、でも手放します。どんどん行ってくださいって(笑)。
ー お子さんはやりたいことは決まっているんですか? 高校生になると文系か理系か進路を選ばなくちゃいけなかったり、やりたいことが見つかっていない子どもは悩みますよね。高校生のときに何をやりたいかなんて、私は決まっていませんでした。
浅田さん:小さいときは絵を描くことが好きで、私と同じ方向に進むのかなと思っていたら、そうじゃなかったみたいです。「美大おもしろいよ」と、さりげなく誘導していたのですが、高校2年生のときに「私、美系には進まないから」ってハッキリ言われて、自分とは違うんだなって実感したことがあります。「ママみたいに小さい頃から何かが好きで、そうなりたいって思っている子なんてまわりにいないよっ。私は大学に行ってから決めるから!」って。
娘とケンカになるともう口ではかなわなくて、そうすると私はアトリエに籠っちゃうんですけど、アトリエに娘の着ていたベビー服でつくったロンパースベアがあって、それを見るとちょっとクールダウンするんですよね。こういう時期もあったのにって。可愛かったなぁって。
渡辺さん:それがロンパースベアの役割のひとつです(笑)。
ー ロンパースベアって、子どもの成長に合わせて子どもと親の間を行ったり来たりして、最終的に子どものところに落ち着くという、おもしろい“ぬいぐるみ” ですね。
渡辺さん:そうやって親子のストーリーがロンパースベアにつまっていくといいですね。そして代々つながっていくと嬉しいです。もらった子どもが大きくなったら自分の子どもにつくってあげてって、そうなると素敵ですね。
1歳のお誕生に「ロンパースベア」を贈る“文化”を
ー ロンパースベアの今後の展開はどのようにお考えですか?
渡辺さん:1歳の誕生日に、ちゃんと思い出に刻まれるものとして贈るプレゼントとして、習慣というか「1歳のお誕生部にはロンパースベアを贈る」という文化にしていきたいと思っています。
1歳の誕生日は、どのご家庭でもお祝いすると思うのですが、何をあげたらいいのかわからないという声をよく聞きますし、まだプレゼントを喜ぶ年齢でもありません。でもとても記念すべき日ですよね。こいのぼりや兜、ひな人形にはちゃんとストーリーや想いが込められています。ご両親の想いがこもったロンパースベアが、どのご家庭にもひとつはあるものにしていければなと思っています。
海外での販売も考えてますが、それと平行してロンパースベアをつくる体制も整えていきたいと思っています。まずはアトリエを持ちたいですね。女性は結婚によって仕事や人生が大きく左右されてしまう部分があります。子育ての時期は休まなきゃいけないとか、そういうことを解消できるアトリエがあって、子どもがいても2時間だけでも働けるとか、つくり手の持つ日本の文化や技術も守っていければいいなと思っています。そういう体制を整えながら、海外からもご注文いただけると嬉しいですね。
日本国内では年間100万人ほどが出生しています。もし100万人全員がロンパースベアをつくってくれるようになったら、今よりも格段に優しい社会になるんじゃないかと思っています。児童養護施設とか、自分の生まれた境遇を背負わなければならない子どもたちもいるので、そういう子どもたちの支援をしたり、隣の子も、自分の子どもとして考えられるような全体のスキームを、ロンパースベアを通して事業としてつくりたいと思っています。
ロンパースベア
想い出のベビー服(ロンパース)を使ってつくる世界でたったひとつのぬいぐるみです。常に身近に置いておくことで、「ロンパースベア」をふと見た瞬間、お母さん、お父さんは“お子さんを大切に育てた優しい気持ち”を、お子さんにとっては“大切に育てられた温かい気持ち”を実感できる、親子にとって大切な絆を深める、そんなコンセプトでおつくりしています。
ロンパースベアは、実際にお子さんが着ていたベビー服を使って一点一点ていねいに手づくりしています。大人になってもずっと一緒にいられるプレゼントとして、記念すべき1歳の誕生日プレゼントや出産祝いに選ばれています。
インタビュー後記
「ロンパースベア」が親子の絆はもちろん、多くの人と人、社会ともつながり、より良い世の中にしていくという願いが込められているというのは、とても共感できるものでした。手前味噌ながら『キッズイベント』も、親子が一緒に遊んで楽しむことが、これからの世の中を良くしていくと思い、親子が楽しめるイベントなどの情報を提供しています。
そして何より、渡辺さんと浅田さんの出会いと、同じ想いで「ロンパースベア」に取り組んでいるのが素晴らしく、またとても羨ましいものでした。なかなかそんな出会いはありません。まさに奇跡の出会い。そしてその奇跡を引き寄せたのは、渡辺さんの強い想いと行動力なんですね。
「ロンパースベア」に対する想いは『キッズイベント』にもバッチリ伝わりました。ひとりでも多くの方に知っていただくお手伝いができれば嬉しいです。
渡辺香代子(わたなべ かよこ)
株式会社エンパシージャパン 代表取締役。短大卒業後、大手広告代理店、マーケティング会社、放送局勤務を経て、海外翻訳書籍を中心とした出版社で広報・PR部門を担当。「ホーキング未来を語る」「きみに読む物語」「サティスファクション」などを手がけ、ぞれぞれ30万部以上を売り上げる大ヒット作に導く。2003年独立。広報・PR会社を立ち上げ、周囲を巻き込む独特な手腕と、丁寧なコミュニケーションで数々のクライアントを担当。2012年、株式会社エンパシージャパンを設立し、以前から温めていた「ロンパースベア」の企画に着手。現在、「企業のCSR活動支援事業」や「算数オリンピック団体戦」など、多数の事業も進行中。
浅田祐規子(あさだ ゆきこ)
株式会社エンパシージャパン ロンパースベア事業部 制作・総合監修。アトリエ浅田 主宰。玩具メーカーに勤務後、1997年独立。ぬいぐるみの企画、制作、開発、生産までの一連を行えるアトリエ事務所を立ち上げる。各企業のキャラクターから個人のオーダー品までクライアントに寄り添って妥協なく作品に反映することを目指す。手がけた主な商品に株式会社ベネッセコーポレーション こどもちゃれんじの「しまじろう」ハンドパペットの初代からの開発、制作。エデュトイシリーズの制作。偕成社「あかちゃんのあそびえほん」きむらゆういち先生のオリジナルパペットシリーズ等他多数。2013年、株式会社エンパシージャパン代表 渡辺との出会いにより、ロンパースべア・プロジェクトに参画。
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