子どもがいようがいまいが将来は不安
不安だからこそ助け合える兄弟・姉妹を
ー 書籍の出版にあたり多くの方にインタビューをされましたが、「二人目の壁」を乗り越えるのに印象的だったご家族やエピソードはありますか?
壁を乗り越えた多くのご家庭は、夫婦関係を大切にされていて、もちろん第一子のみの方が大切にされていないということではありませんが、お休みの日でも服装に気をつけていたり、夫婦間であっても相手を異性として意識し、良い意味で気を使っていることが多かったですね。
これは書籍にも掲載していますが、子ども二人以上のご家庭の方が、結婚してから体重が増えたという方が少ないんです。出産すると体重が増えるなんて言う方もいらっしゃいますが、女性も男性もあまり変わってない、もしくは増えたとしても増加した体重が少ないんですね。そういったところからも、お互いに気を使って夫婦関係を大切にしているのかなと思います。
ー 本日同行しているスタッフは、ちょうど今日、1歳の誕生日を迎えるお子さんがいて、彼はまさに第二子をどうするか、その真っただ中です。子どもにとっては一人より二人の方がいいのか、気になっているようです。
いろいろご意見をいただくなかでは、二人以上の方が家族のコミュニケーションが増えたとか、子ども同士ケンカはするけど、助け合っている姿は見ていても非常に嬉しいという方は多いですね。
とても興味深い意見として、先ほど将来に対する不安の話がありましたが、「将来が不安だからこそ、子どもが大人になったときに、一人よりも二人の方が助けあえる関係が築ける。不安だからこそ兄弟・姉妹をつくってあげたかった」、という方もいらっしゃいました。同じ不安に対しても、見る角度を変えるだけで、真逆の結論になるんですね。
第二子が欲しい男性は、第一子のときのサポートが大切!
ー「不安だからこそ兄弟・姉妹を」、という考えには驚きました。大人になったときの子どものことを考えているんですね。彼(スタッフ)は二人目も欲しいと思っているのですが、奥さんが産後が大変だったので、少し間を空けたいと思っているそうです。年齢的なことを考えると、そんなに時間はないようですが。
女性にとっては第一子のときの子育て経験というものが、第二子に進むかどうか、非常に大きな影響を与えていると思います。出産でも育児でも、第一子を産んだときに、周囲や旦那さん、会社のサポートとかそういうものを十分に受けられた方は良い経験をしているので第二子にも進みやすい。その逆、孤独な子育てだったりすると、同じ経験はしたくないと二の足を踏んでしまう傾向にあります。
第二子が欲しい男性にとって、第一子のときのサポートは非常に重要です。しかし男性は、女性のお腹が大きいときは労りますが、産んだあとはあまりケアしないんですよね。見た目ももとに戻っているので、もう大丈夫と思ってしまう。でも本当にサポートが必要なのは出産後なんです。最近は「産後鬱」や「マタニティブルー」(「マタニティ・ブルース」「マタニティ・ブルーズ」とも言われる)※ がありますが、男性は「マタニティブルー」というと妊娠中のことかと思いますが、実はそうじゃない。
私たちも講演やイベントをやるとき、ママ向けもありますが、極力ご夫婦で参加できるようにしていて、単純に女性は大変なんだよ、ということではなく、なぜ女性がサポートが必要なのかを男性にも理解していただき、お互いの理解を深めていただくというところに重きを置いています。産前、産後にどのようなサポートをするかを、ご夫婦、そしてできれば両家のご両親も含めて話していけるのが一番いいですね。
※ マタニティブルー(マタニティ・ブルース/マタニティ・ブルーズ)
出産後の一時的な経度の精神障害で、約25〜30%の人が経験すると言われています。身体的なものでは頭痛や疲労感、食欲不振、精神的なものでは涙もろさや不眠、抑うつ気分、不安や緊張、集中力の低下、焦燥感などの症状が現われます。一時的なもので特に治療の必要はないと言われていますが、なかには「産後うつ病」を発症する人もいるので、2週間以上経っても症状がおさまらない場合は、お産をされた病院や医師に相談してください。
ー 男性が妊娠中の女性の苦労を勉強する機会は多いですが、産後はあまりないですよね。それに特に第一子のとき、女性は子どもを連れて実家に帰る方もいらっしゃると思うのですが、そうするとそういう産後の苦労を目にしませんよね。
そうなんですよね。この本でインタビューした方々も、祖父母世代との関係性、距離感を考えているご家庭は多かったですね。一番問題になってくるのが子育てに関する常識の違いですね。祖父母が子育てをしていた頃とはだいぶ変わってきているので、そのギャップを埋めるのが大切です。
今は自治体でも昔と今の子育ての常識の違いに関する講座を開いているところもあるので、そういうところに出かけていくのも必要ですし、育児の方向性をひとつにしておくのも大切です。産まれる前から自分はこのように子育てしたいとあらかじめ伝えておく。そうすると祖父母の方もサポートしやすいですよね。
「少子化」「二人目の壁」「保活」だけではなく
「子育て」にまつわる話題を、もう少しポジティブなイメージに!
ー 祖父母世代は子育てに協力的ですか?
少なくともインタビューしたなかでは、ほどよい距離感を保ちつつ、サポートしていただいている方が多かったですね。やっぱり孫は可愛いんだなと、「祖父母が孫に甘くて」という意見もあります。私も相当厳しく育てられた記憶があるんですが、孫にはそんなこと許しちゃうの! なんて、「甘やかさないでくれ」って注意したくなりますよね(笑)。
ー 私のように、もう子どもは産まないと決めた人たちが少子化対策に貢献できることは何でしょう?
特に何かをする、というのはありませんが、やはり子育て世代に優しい風土をつくっていく必要があると思いますので、一段落した世代も、そういう風土づくり、赤ちゃんやお母さん、夫婦に微笑んであげるとか、そういうことでいいと思うんですよね。
あとはお勤めをされている方でしたら、育児休暇とか時短とか、企業もいろいろな制度を用意していますが、まわりの理解がないと利用しづらいというのがあるので、お互いに理解しあって、制度を利用しやすい共通の意識や環境づくりをしていく必要があると思っています。
制度を利用しづらいという方に、「誰の目を気にしますか?」という調査をしたところ、「上司」というのはだいたい想像がつくと思うのですが、上司と同じくらいの割合で「同僚」を気にする方が多かったんです。ですから風土をつくるためには上司の理解だけではなく、その部署や会社全体で理解してつくっていかなければならないんですよね。そしてこれは子育て世代だけではなく、今は介護の問題も出てきてますよね。いろいろな世代のなかで多様な働き方をせざるを得ない状況に、日本の社会はなってきているということだと思います。
ー 子育てと介護の両方を行なっているダブルケアの方もいらっしゃいますよね。
そういう方が仕事を辞めてしまうのは、企業にとってもマイナスだと思うんです。
ー 本にも満員電車での通勤が辛くて会社を辞めてしまった妊婦の方がいらっしゃいました。通勤時間をずらすことができなかったのか、そもそもその考えに会社が至らない、もしくは対応できないということがよくないですよね。
子育てを理解できる環境がないと、男性も離職や独立をされる方がいらっしゃいます。ただ、本で紹介している方々は、ネガティブな要因があって会社を辞めても、それをポジティブに考えて独立してワークライフバランスを大切にした仕事をしていたり、女性も趣味だったネイルを仕事としていたり、それをひとつのきっかけと捉えて非常に前向きに考えていたのは印象的でしたね。
ー 今後はどのような活動をされていこうとお考えでしょうか?
「少子化問題」や「二人目の壁」もそうですが、今、「子育て」というと暗いニュースが流れがちですが、情報発信や啓発活動を行なうことで、「子育て」をもう少しポジティブなイメージにしたいと思っています。
調査やインタビューを通して、引き続き「二人目の壁」を乗り越えるヒント、あくまでヒントやきっかけですが、そういったものを提供していく。「将来に対する不安」も、異なる角度から見ると、人によっては違った結論を導き出すというのは、先ほどお話した通りです。講演やイベントなど、そこで意見交換もしていただける交流の場を設けていきたいと思っています。
ー ホームページにもたくさん情報が載っていて、参考になりますね。
ご夫婦が二人目を産むか産まないかの結論を出すとき、ほとんどの方がお子さんのことを考えて判断されていました。もう一人産むと十分な環境を提供できないからやめておこうとか、逆に子ども同士が将来助け合えるから産もうとか、自分たちのことよりも、お子さんのことを考えて判断されているんですよね。
※ 1 more baby 応援団:http://www.1morebaby.jp
今日は娘さんの誕生日ですよね? だったら早く帰った方がいいですよ。記念日は大事ですから。
ー やっぱりそうですか?
記念日ってご夫婦や家族で一緒に何かをするきっかけになりますよね。夫婦や家族で一緒に何かをすることって大切で、お子さんが多いと自然と記念日も多くなって、その機会は増えますよね。
ー それでは今日はそろそろ(笑)。ありがとうございました。
インタビュー後記
子どもを産む、産まない、何人産むかに正解はありません。そもそも、思った通りにできるとも限らない。夫婦で話しあい、理想に向かってできる準備をするだけです。
私は一人っ子ですが、母親は3人も流産しています。3人のうち誰かが生まれていたら、私はこの世にいませんでした。母親がどんな想いで子どもを産もうとしていたのか、すでに他界しているので今となっては知る術もありませんが、母親は4人姉妹だったので、私にも兄弟がいればとは思っていたようです。
おそらくすべてのご家庭に、子どもにまつわるそれぞれのヒストリーがあるでしょう。望んだ通りになったものもあれば、ならなかったものも。しかし大切なのは、その望んだ形に挑戦できること。一般財団法人1 more baby 応援団は、ご夫婦が理想の人数だけお子さんを持てるよう、特に「二人目の壁」に悩んでいる方に、すでにそれを実現している方々の体験や悩みを共有することで、前に進むか、そこに留まるかを判断するヒントを提供しています。前に進むことが良くて、留まることが悪いわけではなく、どちらにするか、ご夫婦が納得できる結論を導きやすくしてくれます。もし「二人目の壁」で悩んでいたら、1 more baby 応援団の書籍や講演、イベント、セミナーにご夫婦で出かけてみてください。きっと何かが見つかるはずです。
秋山開(あきやま かい)
一般財団法人1 more baby 応援団 専務理事。二男の父親。「二人目の壁」を乗り越えるための啓蒙活動推進。執筆、セミナー等を積極的に行なっている。
一般財団法人1 more baby 応援団:http://www.1morebaby.jp
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