スイス・フランス/2016年/カラー/66分
配給:ビターズ・エンド、ミラクルヴォイス
©RITA PRODUCTIONS / BLUE SPIRIT PRODUCTIONS / GEBEKA FILMS / KNM / RTS SSR / FRANCE 3 CINEMA / RHONES-ALPES CINEMA / HELIUM FILMS / 2016
世界中のハートをわし掴みにした
奇跡のストップモーション・アニメーション!
素朴な『チェブラーシカ』や『ウォレスとグルミット』、個性的なキャラクターで人気を誇る『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』などがマスターピースとして名を馳せるストップモーション・アニメーションの世界に、新たな傑作が登場!『ぼくの名前はズッキーニ』が、2018年2月10日(土)より全国ロードショー!
スイス・フランス合作の『ぼくの名前はズッキーニ』は、2016年のアヌシー国際アニメーション映画祭で最優秀作品賞と観客賞の2冠を射止め、第89回アカデミー賞では長編アニメーション部門にノミネートされた。さらにフランスのアカデミー賞と言われるセザール賞では最優秀長編アニメーション賞とともに、実写映画を押さえて堂々、最優秀脚色賞を受賞。フランスに続きアメリカでもズッキーニ旋風を巻き起こした。
味のあるパペットはパーツごとにラテックス製の発泡体やシリコンを組み合わせてつくられ、手づくりの洋服を身につけている。それらのパペットを人形サイズでつくり上げた背景に置いて、ひとコマ、ひとコマ動かして撮影してゆく。
膨大な時間と情熱をかけて生み出されるストップモーション・アニメーションはその独特の味わいが魅力だが、『ぼくの名前はズッキーニ』の大きな成功は個性溢れるキャラクター造詣に加え、大人から子どもまで夢中にさせるドラマの素晴らしさに追うところが大きい。
笑い、泣き、恋を知る
孤児院を舞台にした切なくも心温まる物語
主人公は母親の事故死に罪悪感を感じる9歳の少年イカール。ママはビールを飲んで怒ってばかりいたけれど、イカールは彼女が名付けた愛称 “ズッキーニ” を大切にしていた。
ひとりぼっちになった彼を、心優しい警察官レイモンがフォンテーヌ園に連れていく。そこは、アルコールやドラック中毒、育児放棄、性的虐待、犯罪や移民問題といった深刻な背景を抱え、心に大きな傷を負った子どもたちが暮らす孤児院だった。
ズッキーニははじめこそ手痛い洗礼を受けるものの、やがて仲間と居場所を見つけ出してゆく。そうして支え合いながら心の傷を癒し、相手を思いやり、許すという行為を学んでゆく。そこには、彼らにそっと寄り添う、心ある大人たちの姿も描かれる。
衝撃的でメランコリックに幕を開ける物語は、やがて子どもたちの歓声とともに加速し、スリリングな出来事ののちカタルシスと明日への希望を描き出す。そんな切なく、心温まる物語には、初恋や男気といった胸キュンエピソードが見事に重ねられている。そして子どもたちが好奇心たっぷりに繰り返す男女の営みに関するエピソードは、最終的に子どもはみんな “愛の子” であるというメッセージをユーモラスに伝えている。
監督、脚本を務めたクロード・バラスは、短編「Le Genie de la Boite de Raviolis」で多くの映画賞を受賞しているアニメーション作家。ジル・パリスによる著書「Autobiographie d’une courgette」(「ぼくの名前はズッキーニ」DU BOOKS刊)に魅せられ、大人向けの原作を世界で虐待にさらされる子どもたちへの応援歌として脚色することを思いつく。
『水の中のつぼみ』や『トムボーイ』等、幼い心を瑞々しく描くことで定評のある映画監督セリーヌ・シアマの力も借りて、個性豊かな登場人物の輪郭、自然で生き生きとした会話を書き込んでいった。傷ついた子どもたちを扱うことに細心の注意を払いながら、一方で子どもたちの豊かな想像力を信じる思いに貫かれた物語は、大人も子どもも夢中になり、心をわし掴みされずにはいられない。
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