いもとようこさんインタビュー!
大人にこそ読んでほしい、新たな気づきがいっぱい!
「絵本作家は描いた絵が想いを伝えてくれればいい」と、あまりインタビューは受けないという、いもとようこさん。今回、貴重な機会をいただくことができ、絵本についてや独自の技法、そして今後の作品について、いろいろとお話をお伺いしました。
ー 絵本は子ども向けに描いているわけではなく、大人にこそ読んでほしいそうですね。
私は絵本が子どものものとは思っていないんです。昔話だって本来は大人のもの。もちろん、子どもにもわかるように、わかりやすく、言葉もできるだけ短くを心がけていますが、大人と子どもはわけていないんです。いつから大人になるかなんて、わからないでしょう? だから絵本には “人として大切なこと” を描いていて、それは大人も子ども一緒。子どもも素晴らしい感覚を持っているし、子どもの心をなくさないで、大人の心も増やしていければいいんじゃない?
お母さんやお父さんだって、昔聞いた物語をちゃんと覚えてないことは多いでしょ。絵本を子どもに読んであげることで、物語の真意に気が付くこともあって、私も作品を描きあげるまでにいろいろ調べるけど、改めて、“そういう意味だったんだ!” とわかることがあります。それはとても楽しいこと。絵本は親子のコミュニケーションの媒体になるけれど、大人の方に、もう一度しっかり味わってほしい。だって、楽しいよ。私は今までずっと読んできたけれど、飽きたことがないんだもん。
ー 古典作品のカバーと、オリジナル作品がありますが、オリジナル作品の発想はどこから?
古典は今までの資料を集めて勉強するんですが、オリジナルのものは、普段の生活のなかでの楽しいこと、悲しいこと、悔しいことなどの体験が、勝手に絵本になっちゃう。絵本になりそうだなって。人間、思うところは同じことが多いでしょう? すごい本ではなくて日常の絵日記みたいなものだけど、でも自分ひとりで読むものではないから、多くの人の心に重なるようにしようというのは心がけていて、内容は練っていますね。でも、これも楽しい。
頭でイメージしていることの半分も表現できない
上達も、しておりません(笑)
ー 登場人物のキャラクターの姿を考えるときはどうしているんですか?
全然悩まない。お話を見たときに、頭の中にはイメージができあがっちゃってて、それを再現するのが私の仕事。でも頭の中にあるイメージを表現するのが難しくて、最高でも40%くらいしか表現できていません。毎回毎回、この頭の中のものをそのまま出せないかなと思うけど、でも、良くて40%くらい。
ー 描き続けているのは、絵が上達するという楽しみもあるのですか?
悲しいかな、上達してない。毎回とっても苦労しているというか、全然描けない。で、いろいろ試行錯誤しているうちに、だんだんと形ができてくるんだけど、スピードはあがらず、はじめて仕事をしたときからあまり変わっていないし、できるかできないか、最初はいつも不安。でも最後は「できたじゃない!」って。40%だけど。だから全然上達しておりません(笑)。
ー 本を描きはじめた頃と今で変わったことはありますか?
ない。飽きないし、今度こそ素敵な絵を描きたいって思っています。まだできていませんが。技法にしても、いろいろな発見があって、それが楽しいし、あの話も描きたい、この話も描きたいと、次から次へと描きたいものが出てくる。だから今まで、あまり行き詰まったこともないんです。
ちぎり絵の技法は “大根” がヒント!?
独自の技法の秘密がわかる展覧会
ー ちぎり絵の技法は最初から?
プロを目指してから。プロの方は絵の上手な方がたくさんいらっしゃるので。それと私の描きたいものは動物だったり、やさしさだったりで、今までの描き方では表現しきれない。ずっとアレコレやっていて、あるとき、ご飯の準備で大根を薄く薄く切っていたら、大根の繊維ってとてもきれいじゃない? キャベツでもなんでも自然の美しさがあるでしょう。「大根ってきれいだな」って見ていたら、「和紙を使ったらいいんじゃない」って思ったの。それで和紙をネコの形にちぎって。でもまったくうまくちぎれない。繊維も硬いし、色を付けても全部同じ色に染まってしまったり。縞ネコも、放っておいたら全部茶色のネコになっちゃう。それを縞々にするには、どうしたら色が止まるんだろうとか、いろいろ試して、発見があるんです。
使っているのは普通の白い和紙ですよ。こうしたいと思ったら、試行錯誤してやり方を自分で見つけていくんです。頭の中のイメージ通りにできるように。これは根気が必要だし、私は人一倍、その想いが強いのかもしれません。
技法を知りたい方にとって、今回の展覧会は、それがとてもよくわかると思います。よく見えるように展示してあるし、ぜんぶ教えてあげる。でも、イメージするのは自分。この技法だからこの絵が描けるというのは間違いです。油絵だって、みんな同じ絵ではないでしょう? イメージしたものを、どう表現するか。あまり技法にはこだわらないで鑑賞して欲しいですね。
ー これからはどういう作品を描かれていきますか?
10年かかってつくるものもあれば、思い付いて、すぐにできるものもあります。自分の中でやりたいと思うものに集中して、今燃えているものを描いちゃうのが、わたしにとっても、読者の方にとっても、一番いいかなと思っています。それが一番、想いが伝わると思うから。私は我がままですが、もっと、“我が、まま” にやっていきます(笑)。
作品づくりは「飽きたことがない」、そして作品づくりのさまざまな過程においても常に「楽しい」とおっしゃっていたのが印象的でした。常に次の作品、その次の作品と目標ができるのは、やはり “楽しい” からなのでしょうか。そのパワーの源も、お伺いしたかったですね。でもわかっていることは、これからもまだまだ、いもとようこさんの新作が出る、ということ。楽しみですね。
「絵本原画展 いもとようこの世界」会期中の土・日曜日の14:00からは、当日会場で著作本をお買い上げの方、各回先着100名にサインをしてくれる「いもとようこサイン会」も開催します(整理券を配布、おひとり様1枚1冊分)。いもとようこさんに会える、またとない機会、ファンの方はお見逃しなく!
【イベント紹介】絵本原画展 いもとようこの世界(2017年5月19日(金)〜6月11日(日)まで、上野の森美術館で開催!)
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