ゴッホのジャポニスムを
名作を通して紹介!
ゴッホと言えば、誰もが知っている有名な画家のひとり。「ひまわり」の絵や、自分の耳を切ってしまったこと、そして生前はほとんど評価されなかった不遇の生涯であったことはよく知られています。しかし、ゴッホにこんなにも強い日本への憧憬があったことは、あまり知られていないのではないでしょうか。
ゴッホは1880年、27歳のときに画家を志し、1886年にパリに移り、さまざまな刺激を受けながら絵画表現を模索します。そこで大きな役割を果たしたのが浮世絵でした。1887年に描かれた『花魁』は同展の目玉のひとつでもあり、そんなゴッホを感じさせてくれる1枚。溪斎英泉の『雲龍打掛の花魁』をメインのモチーフに、そのまわりには龍明の『芸者と富士』、歌川芳丸の『新板虫尽』など、いくつかの作品からモチーフを得ているのがよくわかります。

ゲストの吉岡里帆さんがこの展覧会のなかで印象的だった作品のひとつとしてあげたのは、浮世絵の美人画をモティーフに描いた『花魁(溪斎英泉による)』(1887年)。オリジナルの浮世絵(下写真)とは異なり、原色に近い鮮やかな色彩が使われている

『花魁(溪斎英泉による)』のモティーフとなった溪斎英泉の『雲龍打掛の花魁』

『花魁(溪斎英泉による)』には、歌川芳丸の『新板虫尽』のカエルも描かれている。『花魁(溪斎英泉による)』の絵のまわりには、モティーフとなった絵が展示されている
アルルでの2年間でジャポニスムが深化
次々と傑作が生み出される
1888年にはパリから約700キロ離れた南フランスの町アルルに移ります。アルルは太陽の輝く、フランスのなかにある日本のような場所と考えていたそうです。結局ゴッホは一度も日本の地を踏むことはありませんでしたが、ここでジャポニスムはいっそう深化、1890年、37歳で亡くなるまで、死後に傑作と評価される作品が次々と生み出されます。
1888年10月に描かれた『ゴッホの寝室』は、アルルでゴーガンと共同生活を送った家。しかし価値観の違いからゴーガンとは不仲に。12月に自らの耳を切り落とし、サン=レミにある精神療養所に入院します。最後はパリの北西に位置する小さな町オーヴェールに移りますが、サン=レミでも、そしてオーヴェールでも、亡くなるまで毎日絵を描いていたそうです。

2017年11月3日(金・祝)に放送されるNHKの特集番組『ゴッホは日本の夢を見た』に出演する吉岡里帆さんがゲストとして登場。昔から絵が大好きという吉岡さんは、「ゴッホの絵は特別。絵の美しさや造形だけではなく、ゴッホの人間性にも惹かれる。人の心のあり方を教えてくれる貴重な存在」と、ゴッホの魅力を教えてくれました
ゴッホの死から20年を経て、今度は日本の画家がゴッホを賞賛しはじめ、オーヴェールに絵を見に、そしてお墓参りに行き、そこで風景画を描いたり、ゴッホへの思いを馳せた記録が残っています。
同展はゴッホの油彩画やデッサン40点と、ゴッホが影響を受けた浮世絵など約50点を通して、ゴッホと日本の関係性がとてもよくわかるようになっています。さらにゴッホの目を通すことにより、改めて日本の美しさを実感するとともに、ゴッホに影響を与えた日本の文化を誇りに感じることでしょう。
ゲストとして登場した吉岡里帆さんも、「どの作品も素晴らしいし、展示の仕方がおもしろい。今回は日本の浮世絵とゴッホの作品を比較展示していて、日本を誇りに思えると思うし、今までと違うゴッホの視点を楽しめると思います」と同展を紹介してくれました。
なお、東京都美術館から歩いて5分ほどの国立西洋美術館では「北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃」が開催中。ゴッホも葛飾北斎の絵を見ていましたが、多くの西洋の画家が浮世絵や日本の文化に影響を受けていることがわかります。
「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」は、2018年1月8日(月・祝)まで東京都美術館で開催! また2017年11月3日(金・祝)午前10:05〜10:53にNHK特集番組『ゴッホは日本の夢を見た』が放送。
【イベント紹介】2017年10月24日(火)〜2018年1月8日(月・祝)まで東京都美術館で開催!「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」
【関連イベント】2017年10月21日(土)〜2018年1月28日(日)まで国立西洋美術館で開催!「北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃」
【体験レポート】「北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃」に行ってきた!

ゴッホのパリ滞在中の最後期に描かれた作品であり、12年ぶり2度目の来日となる「画家としての自画像」も展示。原色が連なるパレットの一方、表情は暗い。この時期ゴッホは、パリでの生活に疲れていたそう。この後、ゴッホはアルルへと向かう

葛飾北斎の『富嶽三十六景』のなかでももっともよく知られている『神奈川沖浪裏』。ゴッホはこの波を「小舟を掴む爪のように感じる」

ゴッホが影響を受けた浮世絵も多数展示

『ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋』(1888年)。アルルにいた頃、ゴッホはひんぱんに橋の絵を描いた

『オレンジ、レモン、青い手袋のある静物』(1889年)

アルルから少し離れたタラスコンという町で描いた『タラスコンの乗合馬車』(1888年)。明るい太陽の光を鮮やかな色で描いた

2017年11月3日(金・祝)に放送されるNHKの特集番組『ゴッホは日本の夢を見た』の取材で10日間ほど、パリ、アルル、オランダでゴッホの美術館をまわり、ゴッホの絵に触れてきたという吉岡里帆さん。「ゴッホの歩いた道を歩き、同じ場所から景色を見て、日本に帰ってきてこうやって絵を見ると、どこか懐かしい感じがする。絵が待っていてくれているというのは嬉しい」。後ろの絵は『ゴッホの寝室』(1888年)。浮世絵のように平坦ですっきりした色で彩色し、浮世絵から学んだ要素を取り込んだ、アルル時代の到達点を示す1点
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