2018年3月30日(金)全国ロードショー!
レッド・スパロー
2018年/アメリカ/カラー/2時間20分/R15+
配給:20世紀フォックス映画
© 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
鑑賞日:2018年3月7日(水)
TEXT:キッズイベント 高木秀明
元CIA工作員の描く
リアル過ぎる本格派スパイアクション
ロシア元スパイ暗殺未遂事件のニュースが流れた。普段ならそれほど気にしないだろうが、今日は違う。ちょうど映画『レッド・スパロー』の完成披露試写会を観たあとだったからだ。
『レッド・スパロー』は、捜査対象を美貌で誘惑することに長けた “スパロー(SPARROW=スズメ)” と呼ばれるロシアの女スパイの、大国をも揺るがすスリリングな活動を描いた本格派スパイアクション。
ジェニファー・ローレンス扮するスパローの美貌や妖艶さ、ハニートラップという宣伝のイメージが先行してるかもしれない(もちろんそれは見どころのひとつではあるが)、それはこの映画の本質ではない。33年間CIAで工作員として活動したジェイソン・マシューズが書いたベストセラー小説を原作としているだけあって、すべてにおいてヒリヒリするようなリアルさがある。だからこそ冒頭の事件が、まるで映画の延長線上であるかのように感じられたし、映画の世界が実在するものと感じさせた。
誰を信じていいのか、誰を信じているのかもわからない。予想に反する出来事が、こちらの想像を上回るスピードと濃度で次々と展開し、最初から最後までずっと、早まる動悸とともに心地よい緊張感が続いた。
ターゲットの欲望を見抜け
誰にも付け入る隙がある
いいところばかりではない。ハニートラップを仕掛ける女スパイということもあり、性的な表現やレイプ、拷問シーンなどもある。もちろんリアルさを追求しただめだろうが、このような表現を観たくない方は避けた方がいい映画だし、もちろん子どもはNG。映画はR15+で中学生までは観られない。高校生にも、おすすめしない。
ロシア人同士が英語で話していたり、ところどころアメリカの映画だなと感じさせるところもあるが、それでもとても見応えがあった。
スパイ養成所での教官の、誘惑するターゲットの欲望を見抜きそれを満たしてあげることで信用を得て、コントロールできるようになるという言葉は、スパイに限らず人間関係の本質でもある。程度の差こそあれ、誰もが意識的、無意識に行なっている。それだけ、誰にも付け入る隙があるということだ。ハニートラップを仕掛けられるような立場にはなくとも、何らかの欲望を満たしてくれる状況になったとき、果たして自らを厳しく律することができるだろうか。自信はあまりない。
鑑賞後も楽しめる
そしてもう一度観たくなる
派手なアクションシーンはないが、そのかわり脳がフル回転する。このセリフ、この行動の真意は? と。ジェニファー・ローレンス演じるドミニカ・エゴロワはスパイとしての能力は図抜けているが、人としてスパイ向きかは、その能力ほどではないように思う。一瞬覗かせる本当の顔、ポーカーフェイスの下の表情を想像しながら観るのも楽しい。そして、「人はひとりでは生きていけない」とはよく言われるが、人は人を信用せずには生きられないのか、信用したいものなのかも考えさせられる。
すべてを疑い、相手の一歩先を行かなければ命が危ういという状況に、2時間ちょっとのあいだ、どっぷりと浸ることができる。そして鑑賞後も、そもそもドミニカが夢を断たれた事故も仕組まれたものではなかったのかなど、思い返してはすべてが疑わしくなり自問自答を繰り返す。
子ども抜きで、夫婦やカップル、友だち、そしてひとりで楽しんでほしい。聞きなれないロシアの人名、偽名など名前がたくさん出てくるので、早めに名前と顔を一致させておくことは重要。鑑賞前にパンフレットを熟読するのはおすすめしないが、人物紹介は読んでおいてもいいかもしれない。
1回では理解できないところもあり、もう1回、今度は落ち着いて、じっくりと確認しながら観たくなる。表情や仕草など見落としているところ、新しい発見がたくさんありそうだ。
原作の小説は続編がある。映画も続編があるのか、そこも楽しみだ。
【映画紹介・予告編】2018年3月30日(金)全国ロードショー!『レッド・スパロー』
この映画、子どもと一緒に楽しめる?
最新映画をネタバレなしで紹介!
映画レビュー トップページへ
記事が役に立ったという方はご支援くださいますと幸いです。上のボタンからOFUSE経由で寄付が可能です。コンテンツ充実のために活用させていただきます。