子育て世代の罹患率がもっとも高いリウマチ!
リウマチは寛解をめざせる病気!(湯川リウマチ内科クリニック院長 湯川宗之助)
生活のすべてが辛い
子育て世代のお母さんに多い病気
「リウマチ」というと、どんなイメージを持っていますか? おそらく多くの方が、「高齢者の病気」「関節が曲がってしまう」「痛い」「治らない」という印象だと思います。しかし実は、子育て世代の30代〜50代の女性がもっとも多い病気で、出産後に発症し、小さなお子さんを抱っこするのに苦労されている方もたくさんいらっしゃいます。そして、かつては治らない病気とされていましたが、最近では劇的に回復できるまでになっています。
リウマチを患っているお母さん方は、生活の全部に困っています。朝起きてからの朝食の準備、子どもの世話、保育園に連れて行くことから仕事も晩御飯の準備、後片付け、お風呂、通院まで、すべてです。たとえば健康な人でも、手首や足首を捻挫すると途端にさまざまな場面で困難が出てきます。それと同じで、リウマチになると生活のすべてがきつくなるのです。
平成23年(2011年)の「リウマチ・アレルギー対策委員会報告書」(厚生科学審議会疾病対策部会 リウマチ・アレルギー対策委員会)によると、日本におけるリウマチの患者数は70〜80万人といわれています。しかし、罹患している患者数等や年間発症数に関する情報は十分には把握されておらず、また聞き慣れた病名ではありますが、その病因はいまだ十分に解明されていません。
リウマチは “免疫” の異常によって起こる “自己免疫疾患” です。体内に入った異物を排除するための免疫が過剰に反応し、正常な細胞や組織にまで攻撃を加えることで起こる病気です。リウマチは関節を包む滑膜を攻撃して炎症を起こし、それが広がることで軟骨や骨が破壊され、関節が動かなくなります。そして、やがては関節が変形するまでに至ります。
リウマチを発症すると、子育てや仕事はもちろん、通常の生活を送ることすら困難になってしまうのです。
この10年でリウマチの治療が劇的に進化
リウマチに煩わされない生活を!
かつては予防や治療の難しい病気とされていましたが、日本では2003年から「生物学的製剤」が使用できるようになり、ここ10年でリウマチの治療は劇的に変化しています。生物学的製剤も今では8種類ほどあり、適切な治療を行なうことによって、痛みを忘れて普通に生活できるまでに回復できるようになっています。
そのためには早期発見が重要ですが、初期症状で必ずしも関節が痛くなるとは限りません。身体がだるい・疲れやすい、口内炎、食欲の低下、微熱などの症状が現われますが、過労やストレスと思われてしまいがちです。そのため気がつかないうちに関節内部で炎症や関節破壊が進んでいることもあります。
最大の特徴は「朝の全身の関節のこわばり」。特に手指の第二、第三関節のこわばりで気づくことができます。気になる方は血液検査を受け、リウマトイド因子の値を調べてもらいましょう。会社の健康診断の血液検査では調べてもらえないので、人間ドッグなどの血液検査になります(実際には血液検査や尿検査、X線検査などを組み合わせた検査を行ないます)。
お母さん方が気になるのは妊娠中、授乳中だと思いますが、この期間に使える薬もあります。しかしリウマチという病気は、妊娠すると病状が落ち着き、出産後に悪化、発症する傾向にあります。お子さんを授かったのに痛くなって抱っこできなくなる方がいらっしゃいますが、赤ちゃんを抱っこできる生活をおくれる治療方法があるということを知ってほしいですね。
またすでに治療をされている方は、今の治療に満足ならそれでいいと思います。しかし違和感や疑問点、実際に生活に困っているなら、それを解消できる方法があるかを先生に聞いて欲しいと思います。
“リウマチのおかげ” で家族関係が良好に
治療をして痛みはなくなっているけれど、旦那さんと子どもが、ずっとお手伝いをしてくれると、多くの患者さんがおっしゃいます。病気があろうがなかろうが、相手を思いやって生活することが当然ではありますが、“リウマチのおかげ” で思いやりを持てるようになることもあります。そう言えるくらい、今は治療が進んでいるのです。
冒頭のリウマチに関する多くの方のイメージにあるように、リウマチに関して間違った認識の方はまだまだ多いんです。だから若い方でもリウマチになること、しかし罹患しても、いまや正しい治療をすれば劇的な回復ができる、普通に生活がおくれるということを、多くの方に知っていただきたい。リウマチによって、やりたいことをあきらめないでほしい。日本中のリウマチ患者さんに、ご自身にあった納得のいく治療を受けていただきたいと思っています。
湯川宗之助 院長
1975年生まれ、東京都出身。高校生のときに祖父が亡くなり、それをきっかけに医師をめざす。2000年、東京医科大学医学部医学科卒業後、東京医科大学病院第三内科(リウマチ・膠原病科)に7年間勤務したのち、膠原病・リウマチ性疾患の世界的権威である田中良哉先生のもとで勉強したいと熱望し産業医科大学医学部第一内科学講座へ入局。患者さんに一番近い場所で少しでも不安を取り除きたいという思いから2015年2月に湯川リウマチ内科クリニックを開院。関節リウマチの啓発活動、継続的なその取り組みが評価され、3年連続で『The Japan Times』の「100 Next-Era Leadears in Asia 2017-2018」に選出されている。
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