
縄文の国宝6件すべてがはじめて集結する特別展「縄文 ー 1万年の美の鼓動」が、2018年7月3日(火)〜9月2日(日)まで東京国立博物館で開催!
心ゆさぶられる造形美
“ひらめき” を得られるかも!
日本の “美の原点” とも言える、国宝にもなっている縄文時代の土器、土偶などの美を体感できる特別展「縄文 ー 1万年の美の鼓動」が、2018年7月3日(火)から東京国立博物館で開催! さっそく行ってきました。
小学校の教科書にも掲載され、『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生(2016年)』にもキャラクターとして登場していることから小学生の認知度も抜群と思われる重要文化財の「遮光器土偶」をはじめ、炎のような装飾がなされ圧倒的な存在感のある国宝「火焰型土器」など、誰もが知る縄文時代の土偶、土器はもちろん、実際に縄文人が日々の暮らしのなかで工夫を重ねてつくり出したさまざまな道具など、縄文時代草創期から晩期までの作品を展示しています。

日本でいちばん有名と言っていいい「遮光器土偶」(青森県つがる市木造亀ヶ岡出土)。縄文時代晩期の作品で、雪中遮光器(スノーゴーグル)をしているかのような目の表現からこのような名が付く
土器や土偶にはさまざまな工夫はもちろん、造形美や遊び心などもあり、縄文人がとても豊かな感性を持っていたこと、そして自然に対する畏れや敬い、感謝の気持ちがあったことが感じられます。
そしてその造形美からは、ものづくりをしている方、ものづくりに興味のある子は、何らかのインスピレーションを得られそうです。実際、「芸術は、爆発だ!」という名言で有名な芸術家・岡本太郎氏(1911年〜1996年)は、縄文土器から彼の考える “芸術の本質” を強く揺さぶられました。

芸術家・岡本太郎氏(1911年〜1996年)が衝撃を受けたという「顔面把手」。彼の創作活動において、縄文時代の造形には大きく影響を受けている
土器・土偶のデザイン、美しさは
つくられた時代を知らせるガイド役
縄文土器というと炎のような装飾の火焰型土器を思い浮かべる方が多いと思います。立体的な装飾のある火焰型土器がつくられたのは縄文時代中期で、その背景には、青森の三内丸山遺跡に代表されるように、大きな集落がつくられ、長期間にわたり平穏で豊かな時代にあり、縄文文化が成熟した証だそう。

火焰型土器、王冠型土器を、格別の配慮でケースに入れない露出展示を実施。土器の持つ迫力を感じられる
2018年7月31日(火)から展示される国宝の土偶「縄文のビーナス」も縄文時代中期につくられ、このような力強い造形、国宝になるような造形美が生まれるのは縄文人の文化的な成熟が背景にあり、それがわかると、この造形美について、さらなる奥深さを感じられます。
また国宝の火焰型土器の見所は、立体的な装飾はもちろん、覗き込んだ先にある小さな底部。この小さな円の底部が、あれだけ大きな装飾を支えているということ、そして上部の大きな円から底部に続く小さなきれいな円。力強くて重厚な装飾の下には、ていねいな土器づくりが隠されていることがわかります。つい装飾に目がいってしまいますが、下から、上から、さまざまな角度から見ることで、この土器の魅力がさらにわかるそうです。

国宝「火焰型土器」(新潟県十日町市 笹山遺跡出土)。360度、どこからみてもカッコよく、展示の際にはどこを正面にするか悩むそう。写真として紹介されることが多いところを正面にしているが、どの方向から見ても遜色ない
全部をちゃんと見なくてもいいじゃない
子どもたちには、本物を見て、何かを感じてほしい!
教科書ではたった数ページでしか紹介されていない縄文時代は、いまから約1万3,000年前にはじまり、約1万年という長い間続いた時代。寒冷期が終わり春夏秋冬が整い、縄文人はこの新たな環境に適応し、狩猟や漁撈(ぎょろう)、植物の採集などを主な生業として暮らします。そして日々の暮らしを通してつくった道具には、縄文人の知恵や技、美意識が宿っています。

「自然保護や自然との共生、デザインやファッション、地域活性化のコンテンツとして、最近では「縄文」が親しまれています。土器や土偶を、考古学者が用いなかった “可愛い” や “カッコイイ という言葉で評価し、縄文が身近な存在になってきています。本展は、このようなみなさまの関心を受けて企画され、『縄文の美」』に焦点を当てています」と、東京国立博物館 考古室長 品川欣也先生
特徴的な縄文時代の作品は、わかりやすくておもしろく、可愛いらしく、子どもたちにも人気があります。すべての展示物をじっくり見て理解するのは大人にだって難しいので、子どもたちには、教科書やテレビなどでよく見て知っているものの本物が見られる、それだけでも素晴らしい機会だと思います。
想像していたのと大きさが違う、質感が違った、写真とは違う角度から見たら新しい発見があったなどなど、本物を目の当たりにするのは、きっと子どもたちに何かを感じさせてくれるはず。ふと目にした今までに見たことのない作品に心奪われ、そこから何かが生まれるかもしれない。
1万3,000年前の人たちは何を思っていたのか、何を大切にしていたのか、太古の人々に想いを馳せる、そんな体験が親子でできる、親子でしてほしい展覧会です。
そして2018年7月31日(火)から、国宝「縄文のビーナス」「仮面の女神」が展示され、縄文の国宝6件すべてがはじめて揃います! おそらく、その様は圧巻! 縄文ファンならずとも、お見逃しなく!
特別展「縄文 ー 1万年の美の鼓動」は、2018年9月2日(日)まで東京国立博物館で開催!
【イベント概要】2018年7月3日(火)〜9月2日(日)まで東京国立博物館で開催! 特別展「縄文 ー 1万年の美の鼓動」

報道内覧会の特別ゲストに、縄文好きの俳優・片桐仁さんが登場! お気に入りの展示品は国宝「火焰型土器」と言い、「なんなんだこれは!?』という、見た瞬間の衝撃を忘れられない。本展にもいてくれたか!という気持ちです」と語りました

会場は、縄文時代の道具・装身具に宿る美をまとめた「暮らしの美」、1万年の土器の造形美の移り変わりを紹介する「美のうねり」、縄文土器と世界各地の土器を見比べる「美の競演」、国宝 火焰型土器や縄文のビーナスなど国宝6件が集結する「縄文美の最たるもの」、遮光型土器をはじめ、動物造形や親子の愛などの「祈りの美、祈りの形」、最後は岡本太郎はじめ多くの作家、芸術家が出会い、触発された縄文の美を紹介する「新たに紡がれる美」の6つの章で構成

縄文時代草創期後半の多縄文土器。土器全体に余すところなく縄目の模様がなされ、それを補うように竹や貝の模様で、土器全体を敷物のように埋め尽くしている

多縄文土器には注ぎ口がついているのが特徴

火焰型土器に代表される縄文時代中期の土器は、装飾性にあふれ重厚で力強

粘土が幾重にも貼り付けられたり、巧みな技で立体感を出している

「火焰型土器」や「縄文のビーナス」など国宝6件が集結する「縄文美の最たるもの」の章は赤い部屋になっている。縄文人にとって赤は火の色であり、祭りの道具に使う色。国宝はこの赤に負けない力を持っている

国宝「火焰型土器」には、バリがまったく見当たらない。こんなに力強い装飾のなかに、縄文人の心配りを見ることができる

八頭身美人と評される国宝「縄文の女神」。「縄文のビーナス」が曲線美であるのに対して、「縄文の女神」は鋭角的な印象

「縄文の女神」は側面から見た方が美しいという人がたくさんいる。お腹とお尻が出ているのは、豊満な女性、妊娠した女性の豊さを表している

国宝「合掌土偶」。縄文人の祈りの姿と見られている。祈りで手を組むのは縄文の時代から同じようだ

国宝「中空土偶」。頭部から足先まで中空で薄手につくられていて、熟練した土器づくりの技術を応用しているものといわれている

「祈りの美、祈りの形」の章は、輪を連ねた環状集落をイメージ。家を円形に配置し、真ん中にお墓をつくり、そのなかに広場をつくるのが、縄文時代の基本的な集落の形。縄文人がつくった遺跡やモニュメントには輪がつきもの

「遮光器土偶」は体の形にあわせて線対称に模様が描かれている。縄を転がしたりして文様を薄くした磨消縄文(すりけしじょうもん)

「祈りの美、祈りの形」の章では、会場左手から時計回りで土偶の新→旧を見ていくことができる。最初の土偶は親指大くらいの大きさで、最後はかなり大きなものに。大きさを見ると、祈りの場で、それをどれくらいの人で取り囲んで見ていたかがわかる

重要文化財「ハート形土偶」。「遮光器土偶」と並んで人気の土偶。顔のハート形はもちろん、極端にデフォルメされた目と鼻もかわいい

遮光器土偶はほかにもいくつか出土している。表情もさまざま

ピアスのように耳に装飾をしていると思われる「みみずく土偶」

動物の形をした土製品や角製品もたくさん展示

縄文の造形美に魅せられた岡本太郎が撮影した縄文土器と写真を展示
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