ロボットなのに感情が伝わってくる
子どもは絵を観ているだけでも楽しめる
ー 映画『ネクスト ロボ』を観た感想を教えてください。
主役のロボット7723はもちろん、僕が声を入れさせていただいた犬のモモもですが、すべてのキャラクターにオリジナリティがあって魅力的でした。造形もすばらしくて、全部フィギュアにして並べたいですね。
『ネクスト ロボ』は7歳の娘と一緒に観ました。英語版のものでしたが、食いついて観てましたね。小さな子どもも、絵を観てるだけで楽しめるんじゃないかなと思います。絵の力はすごいなと思いました。「完成したのも観たい」と言っていて、3日くらい前に観ることができて、喜んでましたね。
しかし7723は目は丸、口は一本線のロボットなのに、とても表情が豊かで何を考えているのかが手に取るようにわかるのは不思議ですね。もちろんつくり手の力もあるんでしょうけど、人間の感情を読み取ろうとする力もあるんでしょうね。表情がないはずの7723の気持ちが、一番視聴者には伝わるのかもしれません。
ー モモの吹き替えで苦労したところ、好きなシーンはどこですか?
犬の鳴き声はやったことがなかったので苦労しました。しかも鳴き声って家では練習しづらいんですよ。家族に変な心配をかけちゃうし、ご近所さんの迷惑にもなるから、クルマを路肩に停めて、そこで練習していました。
監督も「本当は怖がっているんだけど、強がったワンをください」なんて、そこまで細かいワンを求められてもなぁ‥‥なんて思いましたけど、いい経験でしたね。
好きなセリフというか、モモはちょいちょい笑いをとる役で、お約束のシーンがいくつかあるんですが、それはけっこう好きです。娘もそこは全部笑っていたので安心しました。
ー 普段からお嬢さんと一緒に映画を観たりするんですか?
観ますね。だから『ネクストロボ』のような子どもも大人もちゃんと楽しめるという作品はありがたいですね。本当にただの子ども向けだと、親はもうボランティアというか、修行というか、じっと耐えていないといけないけど、『ネクストロボ』は特にそのバランスに優れてるなと思います。
ー 映画を観るときは、どういう作品を選んでいますか?
Netflixに入っているので、子ども向けの映画の中から選んでいます。Netflixのいいところは、つまらないと思ったらすぐに別の作品を観られるところですね。レンタルするとつまらなくても最後まで観なきゃって気持ちになりますが、それがないですよね。これがNetflixの正しい観方だと思います。
ペットも親父もピンチ!
コミュニケーションの時間もロボットに奪われる!?
ー モモを演じた立場から見て、7723のような存在が犬の立場を超えてしまうのは、どんな気持ちですか?
モモに限らずですが、これだけロボットが進化すると、犬、猫、鳥はペットとしての危機感を感じるでしょうね。あと10年、20年は安泰かもしれませんが、30〜40年後くらいからは、この愛らしさ、忠実さ、便利さを考えると、ロボットがペットに代わる存在になるんじゃないかな。
今もそれに近い存在は出てきていますが、まだペットの存在を脅かすほどではないじゃないですか。でも7723クラスになってくると、ちょっとやばいですよね。散歩もしなくていいし、自分で充電するから餌もあげなくていい、お皿も洗ってくれりゃあ吠えることも、壁紙をひっかくこともなく、ペットとしては完璧です。それでいて無機質ではないので、犬、猫はピンチですよ。
ー 映画の中ではいろいろなロボットが出てきますが、これはちょっとやりすぎだなとか、これは欲しいなとか、こんロボットがいればいいなと思うロボットはありますか?
郵便配達や歯磨きロボットなど多少誇張している部分はありますが、どれも便利そうだなと思いました。いろいろやってくれるので、ありがたいですよね。
でもたとえば歯磨きとかって、うちも2歳の息子がいるんですが、けっこう大事なコミュニケーションの時間だったりするんですよね。そういうのもどんどんロボットに奪われていくとすると、便利になる反面、ペットに続き親父もピンチになってきますね。
ギリギリ歯を磨くくらいの時間に仕事から帰ってきて、そのわずかな時間さえロボットに奪われる。ロボットは絵本だって読んでくれるでしょうし、お風呂も入れてくれる。親父が酔っ払って帰ってくることを考えると、やっぱりペットも親父もピンチという、もうピンチだらけですよ。
ー 将来的に7723のようなロボットが家にいたらいいなと思いますか?
僕はほしいですね。AI大好きなんで。シャープのロボホンとかソニーのAIBOとか全部通ってきましたから、7723が発売されたら真っ先に買います。
僕らの世代って、小さいときに思い描いていたことが、ちょっとずつ実現しているじゃないですか。それがすごく見ていて気持ちいい。だから今も実用的なことはあんまり求めてなくて、最近ではスマートスピーカーを買って、ここまで進化したんだって確かめていました。
実際ロボットだって、家庭用に二足歩行の人型ロボットをつくることは合理的じゃないと思うんです。本当は二足歩行も顔も必要ないと思うんだけど、それでも子どものころから見ていた夢だからこそ、実現してほしいですね。
ー ロボットの進化というとワクワクすることもありますが、怖いなと思うところもあります。ロボットのいる世界については、どう思いますか?
この先、人間の仕事がどんどん減ると、人間がすることはスポーツくらいかな。さすがにスポーツはロボットにやらせてもおもしろくないですよね。ロボットオリンピックというのがあるかもしれないけど、やっぱり人間がどこまでできるかが醍醐味。ロボットが100mを8秒台で走っても感動しません。だからスポーツみたいなことを誰もがやりはじめるとか、それしか仕事はなくなっちゃうんじゃないかな。あと歌とか。
芸人についても考えたことがあるんですが、たとえば熱湯風呂で、「押すなよ」をAIは理解できるんですかね? 本当に押さないんじゃないかなって思いますよね。しばらくは大丈夫だと思うんですけど、あらゆるお笑いから計算して導き出したボケには、かなわないのかもしれないですね。
孤独やいじめは親に言えない
子どもから気軽に相談される親に
ー 劇団ひとりさんは小学生のときに3年間アラスカに住んでいましたよね。『ネクスト ロボ』の主人公メイと似たような孤独な時期でしたか?
小学2年生でアラスカに行ったときは日本人ということをからかわれたし、差別用語も言われました。言葉もわからなかったし、日本の文化なんて向こうには全然伝わってないから、母親がつくってくれたおにぎりでキャッチボールをされてバカにされたりしましたね。でも、こっちも負けじと同じような感じでやり返していて、いつも殴り合いのケンカをしていました。
4つ上の兄貴がいてしょっちゅうケンカをしていたから、ケンカには慣れてたんですね。外国人の男の子と殴り合ってましたから、今思えば貴重な経験です。だからそういう意味でいうと、僕は塞ぎこむタイプではなかったから、孤独で辛いってことはなかったですね。1年くらいかかりましたけど、最終的にはその子とも仲良くなりましたよ。
ー それでは今のひとりさんだったら、メイのような子にはどのように声をかけますか?
僕はいま親なので、娘が同じ状況になったら、まずは僕を頼ってほしいというのが、率直な想いですね。
いくら子どものことが好きでも、子どもの心の中のすべてはわからないし、学校で何があったかはわからないから、それを相談できずにひとりで抱えて悩まずに、相談してほしいですよね。
ー ひとりさんは当時相談できましたか?
できなかったですよね、やっぱり。親には言いづらいもんなんですよ。それに親の解決方法って、子どもが嫌がる方法じゃないですか。向こうの親に電話するとか、学校に怒鳴り込むとか、それが恥ずかしかったりして。だから、親に言うのは止めようって思っちゃいますよね。
でも今、娘がそうなったら、同じ行動をとるでしょうね。学校に行って先生と話して、向こうの親にも来てもらって話して。状況によって対応はいろいろ違うでしょうから、一概には言えませんけどね。
笑いがあれば家庭円満
家族で笑顔を共有できる時間を
ー 現在、2人(7歳と2歳)のお子さんの子育て中です。子育てで大切にされていることは何ですか?
僕はあまり叱ったりするタイプではないので、危ないこと、人様に迷惑がかかるようなことは多少きつく言いますが、勉強や掃除とかについては言わないですね。そういう嫌われ役は奥さんがやってくれるんで、僕はどっちかっていうと、子どもの逃げ場でありたいなと思っています。子どもが困ったり、元気がなかったりしたら相談できるような、そういう距離感でいられるように気をつけています。
これを言ったら怒られるんじゃないかとか、お小遣いをカットされちゃうんじゃないかとか、そういう話づらくなるような不安を抱かせないように気をつけています。ただ僕もはじめての子育てなので、それがどう出るかはわかりませんが、僕はわが家では楽しい担当なので、母親に娘が怒られたときはなぐさめる、母親からすればズルい係だと思いますが、2人で子どもを怒ってもしょうがないから、ひとりはそういう役目でいいのかなと思っています。
ー 奥さんとの仲が良いですよね。夫婦円満で心がけていることは?
円満とは言っていないので仮に円満と仮定しますが(笑)、基本ふざけてますね。僕は家庭がうまくいくのは、ふざけているのが一番いいんじゃないかと思っています。笑いさえあればどうにかなると思っているんで、お尻出してふざけたりとか、よくやってますね。それを見て子どもたちがキャッキャ笑って、つられて奥さんも笑って、そういう瞬間が1日1回、2回あれば、それだけで家庭は円満なんじゃないかな。
夫婦で話し合う時間が必要だとよく言われますが、深刻な話をいくらしたって円満な雰囲気にはならないですよね。どれだけお互いが笑顔の時間を共有できるかが一番大事なのかなと思っています。それさえできていれば、どうにかなるかなと。
芸人になりたい子どもたちに、
劇団ひとりさん本気のアドバイス!
ー 芸人になりたいという子どもたちについてアドバイスをお願いします。
本当に芸人になりたいなら、まず、みんながやっていることにちゃんと参加するということですね。「俺は変わった生き方をする」ではダメなんです。
遠足に行く、部活をやる、勉強もちゃんとやる、そういう当たり前のことを、みんなと一緒にやる。そのなかで自分が感じたこと、思ったことを10年後に発表するというのが、お笑いという仕事。だからいろいろなことをちゃんと経験して、メモをとっておいてください。日記でもいい。
大人になったとき、小学生のときのクリスマスにサンタから何をもらったかとか、その日どんなことがあったかとか、お笑いにせよ、何にせよ、そういうデータがあると他とはかなりの差がつくと思います。とにかくメモ、日記は大事だと思います。
ー ひとりさんはメモや日記を付けていたんですか?
つけてなかったから、後悔しています。何も思い出せないんですよね。どんなテレビを観ていたかとか、全部日記に書いておけばよかったのになって。親にも「日記は財産になるよ」なんて言われていたんですが、「日記なんか財産になるわけねーだろ」と思っていましたが、やっぱり財産になるんですよね。親の言うこともきいておけばよかったなって思います。
ー『ネクスト ロボ』は思い出の大切さについて、改めて気が付かせてくれる映画だと思いますが、ひとりさんの消したくない思い出と、真っ先に消したい思い出は何ですか?
家族がいるんで、家族と過ごした時間は消したくないですよね。消したいのは、もう、すべった記憶は全部消したい(笑)。
でも、どうなんでしょうね。すべった恐怖があるからこそセーブできている部分もありますし、すべったすべてを消しちゃうと、またすごいすべりそうな‥‥。やっぱり傷ついたからこそ、あんな思いはもう二度と繰り返したくないと、一生懸命ネタを考えたり、そういうところはあると思いますね。そう考えると、すべった記憶も消さない方がいいのかなぁ‥‥?
毎晩うなされていて、すべった瞬間ってのは死ぬまで忘れないでしょうね。これが何かの役に立っていると思いたいですね。
【イベント紹介】Netflix ネクスト ロボ ファミリーパーク 2018年9月14日(金)〜17日(月)二子玉川ライズで開催!
2018年9月7日(金)より世界190ヵ国にて独占配信!
Netflixオリジナル映画『ネクスト ロボ』
孤独な少女メイと勇敢でピュアな戦闘用ロボット7723との絆と冒険を描いた動画配信サービスNetflix(ネットフリックス)が贈る最新アニメーション映画『ネクスト ロボ』が、2018年9月7日(金)より世界190ヵ国にて独占配信! 人間とロボットの垣根を超えた友情、家族や友人とのかけがえのない「思い出」の大切さに気づかせてくれる、親子で一緒に楽しめるハートフルアニメーションです。
ロボットだらけの未来。生活のすべてをロボットに任せきりの母や友だちとうまくいかずひとりぼっちのメイは、ロボット7723と出会い、次第に友情のような絆が芽生えていく。7723もメイと過ごすうちに彼女を大好きになるが、故障により減ってしまった記憶容量にメイとの “思い出” を残すため、大きな決断をする。やがて7723を開発したロボット会社が人類滅亡を企んでいることを知ったメイたちは、街のみんなを守るため立ち上がる!
記事が役に立ったという方はご支援くださいますと幸いです。上のボタンからOFUSE経由で寄付が可能です。コンテンツ充実のために活用させていただきます。