2018年11月10日(土)シアター・イメージフォーラムにて公開!
地蔵とリビドー
2018年/日本/カラー/62分/日本語・英語字幕付き
監督:笠谷圭見
鑑賞日:2018年10月3日(水)
TEXT:キッズイベント 高木秀明
独創的なアート作品を生み出し続ける
障がい者アーティストのドキュメンタリー
試写前に配布された「やまなみ工房」のパンフレットに印刷されていた彼らの作品に、一瞬で目を奪われた。その病的とも言える緻密で密度の高い作品は明らかに異彩を放ち、通常とは異なる才能のようなものを感じさせた。アートやクリエイティブに関わっている、もしくはめざしている方なら、おそらく嫉妬すら覚えるようなものであろうことは、すぐに理解できた。作者への興味が湧き、これからはじまる試写がとても楽しみになった。
映画『地蔵とリビドー』は、独創的なアート作品を生み出し続け、世界的に注目を集めている滋賀県にある障がい者施設「やまなみ工房」に通所するアーティストたちのユニークな創作スタイルや、工房で過ごす彼らの日常を約1年にわたり取材して製作したドキュメンタリー作品。
寝転びながら割り箸と墨汁だけで大胆な人物画を描く人。「目、目、鼻、口‥‥」と呪文のように唱えながら土の塊に無数の穴を開ける人。粘土の一粒一粒に恋慕の念を込めて「すきなひと」の姿を形に留める人など、誰に言われるともなく、タイトルにもなっている “リビドー(衝動)” をそれぞれの創作物にぶつける、ぶつけざるを得ない姿に迫っている。
さらに、障がいを持つアーティストが自らの “精神状態と創作の関係性” を語るなど、興味はあるが、なかなか真正面からは切り込めない、障がい者の創作に対する想いなども知ることもできる。
アートを志す人には観てほしい
抑えきれない表現への衝動
とてもアーティスティックに撮られたドキュメンタリーで、「観た人に興味を持っていただかないとつくる意味がない」という笠谷圭見監督は、「本当に自分がカッコいい、これを人に伝えたい」と思うアーティストを選んだという。監督自身もデザイナーでありクリエイターで、そんな監督が “かなわない” と感じる作品をつくる人物を取り上げているだけあって、出演している人はみな個性的で、魅力的。これだけの人数の障がい者の方をじっくり見ることも、こんなにもさまざまな表情もはじめて見た。
小さな子どもを連れて観に行く映画とは言えないが、アートやクリエイティブをめざしている方には観ていただきたい。映画の中の彼らの作品や創作に対する姿勢を見るだけでも、なんらかのインスピレーション、そして創作する意味のようなものを得られるのではないかと思う。
障がい者もそれぞれ
その中には、すごい人もいる
映画で彼らのポートレートを撮影するシーンがある。ヘアメイク、スタイリストを入れ、ファッションフォトグラファーが撮影するという本格的なもので、正直、とても羨ましい、誰もが撮ってもらいたいと思うような贅沢な撮影だ。障がい者である彼らには、ポートレートなど必要ないと思うだろうか? 誰もがとてもイキイキとした表情を浮かべ、接し方が変われば、彼らの表情も変わるということがわかる。
もちろん、たった62分の映像で彼らのすべてを理解することはできない。いい部分だけが集められたものということもわかる。しかし、同じように見えていた彼らの中にも、すごい人がいるということ、そして彼らそれぞれに、私たちと同じようにさまざまな一面があるということに気が付くはずだ。そして、まずは気付くことが大切なのかなと思っている。
上映にあわせて、2018年11月17日(土)〜11月23日(金・祝)の期間、渋谷の「TRUNK HOTEL」で映画にも登場するやまなみ工房の作品を展示する『地蔵とリビドー展』が開催される。映画を観て彼らの作品に興味を持った方はもちろん、作品だけは見てみたいという方も、ぜひ足を運んでみてほしい。たぶん、衝撃を受けるはずだ。
【映画紹介・予告編】2018年11月10日(土)シアター・イメージフォーラムにて公開! 地蔵とリビドー
【レポート】「障がい者へのタブーを潰さないと、次のヒントにつながらない」映画「地蔵とリビドー」笠谷圭見監督トークイベント
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