2018年11月22日(木)〜26日(月)二子玉川で開催!
子ども国際映画祭「26th キネコ国際映画祭」でワークショップを開催! 版画家・蟹江杏さんインタビュー!
アートの役割は “想像力” を養うこと!
蟹江さんと一緒にみんなで絵を描こう!
ー「26th キネコ国際映画祭」では「みんなで大きな森を描こう!」というお絵描きワークショップを行ないますが、どのようなワークショップをお考えですか?
会場となるiTSCOMSTUDIO & HALL 二子玉川ライズのガラス壁面に、来場した子どもたちと一緒に “水と森” をテーマにした絵を描きます。
いつもやっているワークショップと同じようにガイドラインは私が描き、子どもたちにはコンセプトをきちんと伝え、「1枚の作品をみんなでつくろうね」という呼び掛けをするので、小さなお子さんでもちゃんと理解して一緒に描いてくれると思います。今回は2日間でひとつの作品をつくる予定です。
ー このようなワークショップで、子どもたちには「楽しい」という以外に、どんなことを感じてほしいですか?
「キネコ国際映画祭」に来る子どもたちは、普段から映画や音楽、そしてお絵描きにも触れる機会の多いお子さんだと思いますが、日本全国、場所や状況を問わず行なっているお絵描きワークショップでは、そのお子さんにとってはじめてのアートに触れる場になることがあります。アートと出会うきっかけになればいいなと、いつも思っています。
また、アートの役割は “想像力” を養うことだと思っています。学校で勉強を学ぶためにも想像力は必要です。「なんで数学を学ぶのかな?」とか、「なんでこんな難しい理科を勉強しなくちゃならないのかな?」とか、「将来、自分は何になりたいのかな?」とか、こういうことを考え、答えを導き出すための根源は想像力だと思っています。
全国の子どもたちと接する機会がありますが、子どもたちの学力向上を真剣に考えている自治体や親御さんに出会うことがあります。そしてそれはけっこう深刻な悩みなんです。アーティストってそういう考えを否定しがちですが(笑)、とはいえ勉強も生きていくために大切なことです。
アートによって育まれた想像力で、未来の世界がどんな風になったらいいか、子どもたちがそういうことを豊かに思い描くことができる手伝いができればいいなと思っています。
ー「キネコ国際映画祭」は子どもの映画祭ですが、蟹江さんは映画はご覧になりますか?
私は映像を学んでいた時期があって、授業で絵コンテを描いたり、アニメーションをつくったりしていました。もともと舞台美術の仕事をしていて、映画の美術もやりたいと思って映像学科に行ったんです。だから映画は、すごく好きです。
今回の「キネコ国際映画祭」では『フラーゴレ(いちご)』というイタリアのアニメがありますよね。「いちごアレルギーの子がこっそりいちごを食べてお母さんに見つかっちゃう」というお話ですが、私もリンゴと桃の果物アレルギーなので、とても気になっています。
お絵かきお姉さん、3.11を経て
意識は未来を担う子どもたちへ
ー NPO法人 3.11こども文庫、子どもたちとのアートワークなど、子どもに関するさまざまな活動をされています。2017年5月に発行された書籍『あんずとないしょ話』には「世界の子どもたちを思うことをいつも忘れまいと心に刻んでいる」と書かれています。そのような子どもたちへの想いは、どこから生まれているんですか?
みなさん “アーティスト” というと、ちょっとぶっ飛んだ、エキセントリックなイメージがあると思います。私も例に漏れず作家をめざしたときにはそれに憧れて、アーティストになっても「絶対に “LOVE & PEACE” だけはやらないぞ!」と思っていたんです。
そうは言っても、アーティストってそれだけではなかなか食べていけません。そんなときに、ある企業の文化事業部の方から、亜土ちゃん(画家・作家の水森亜土さん)みたいな “お絵描きお姉さん” をやってほしいと言われたんです。
私はずっとライブペインティングをやっていましたし、描くのも早いし、おしゃべりしながら描けるんです。それで声がかかって、10年間くらいお絵描きお姉さんとして俳優さんたちと一緒に全国をまわり、歌と踊りと一緒にライブペインティングを披露していました。
そこでは入場料をいただいて披露していたんですが、やっていくうちに子どもにも慣れ、子どものおもしろさも実感していきました。そんなときに3.11の東日本大震災が起きて、しばらくしてから縁があった福島県相馬市の避難所に呼んでいただき、はじめて入場料をとらずに子どもたちとライブペインティングをやったんです。
ちょうど福島第一原子力発電所の1号機が水素爆発したときで、子どもたちはまったく集中力がなかったし、もともと海辺の子どもたちなので外で遊ぶのが好きだし、私なんてまったくお呼びじゃなくて。今までは入場料をいただいていたので、わざわざお金を払うということは、お母さんやお父さんの意識もそうですし、子どもたちも描く気満々で来るわけです。しかし避難所はそういう場所ではありません。知らない人に「一緒にお絵描きしましょう!」と言われても、「別に描きたくないし」という。
みんなストレスが溜まっていて、絵を描く子もいれば、大騒ぎする子もいて。でも、「子どもたちと一緒にいればいいかな」という気持ちになったんですよね。それで避難所に通うようになりました。続けているうちに子どもたちも絵を描くのが楽しくなってきて、みんな喜んでいるからって避難所にいる先生方からの依頼もあって、結局1年くらい通いました。そこから「LOVE & PEACE」に変わりましたね。
ー 蟹江さんが子どもたちから得ることもありますか?
それは間違いなくありますね。はじめの頃は、こんな言い方はよくありませんが、彼らの描く絵が素晴らしい画材のよう思いました。たくさんの子どもたちが集まってワーッと描いたものに、私が一筆入れるだけですごい素敵な絵になるなと。
でも今は子どもを好きになっちゃったので、さすがに画材とは思えなくて。何を学んでいるかは一言では言い表せませんし、私は子どもがいるわけではないので母親でもありませんが、でも一緒に絵を描いていると、やっぱりこの子たちがこれからの社会をつくっていくんだなという実感をひしひしと感じますし、私たちにとってすごい存在だなと思いますよね。
集団に馴染めない子ども時代
映画や絵本で悩みを解消したことも
ー 蟹江さんは少し大人びたお子さんでした。ご両親はどのような子育てや、教育をされましたか?
うちは絵描きさんになることに対しては、今考えると、けっこう英才教育が入っていたところがありました。部屋の壁一面に模造紙が貼ってあって自由に絵が描けるようになっていたし。
私、高校を2回辞めて、大学を辞めて、就職も辞めて今の状態なので、組織にいられない性質なんです。「右向け」と言われると「左向いてやろう」といつも考えていて、だから尖ったアーティストになろうとしていたんですが、全然違っちゃいました(笑)。
私が気になる子どもたちも、ちょっと人と違う子が多いですね。でも私は学校では優等生で、集団ではすごくうまくやっていたんですよ。今もね、そういう雰囲気は出てますよね(笑)? それは小さい頃からすごい長けてました。
でも結局ストレスはかかっていて、思春期は乗り越えられなかったですね。だから、そういう “いい子” ぶっている子はすごく気になります。痛みがわかるというか、大丈夫かなと思います。
でもそんなとき、映画とか絵本ってすごくいいと思います。逃げ場になるし、私自身、主人公だったり登場人物に気持ちを託していろいろなことが解消できた経験もあるし、大事だなと思いますね。
ー 子どもの描く絵や発想に驚くとは多くのアーティストが言いますが、子どもたちはなぜその力をなくしてしまうのでしょうか?
自意識の移動ですかね。子どもにももちろん自意識はありますし、なくちゃ困るんですが、年齢とともに大事にする場所が変わりますよね。社会に出ていろいろなことを学ぶなかで、自分が生きやすくするためには、私もしていたように人と同調しなければならないときもあって、アートのようなものは、生きていくためには必要じゃないと無意識的に思うのかもしれないですね。
ー 蟹江さんはそれを捨てずに来られたということですか?
他のものをいっぱい捨てちゃってますからね(笑)。わがままということも大きくて、子どものころの未熟な自意識をずっと引きずっていますね。
ー お父さんは蟹江さんを子どものころから天才とおっしゃっていたそうですが、素人の私が見ても子どもの頃の作品も明らかにすごいなと思います。才能って、何ですか?
そんなことはなくて、私は才能はないですよ。あったら、投資すべきもっと尖ったアーティストになっています(笑)。
ないんですけど、やっぱり描くのが好きということかな。続けていくということですかね。お母さんたちにもよく聞かれるんですけどね‥‥。
ー 自分より才能があって、敵わないなと思う人に対しては、どう思うんですか?
ムカついてますよ(笑)。でも最近は自分というものを心得てきたので、だんだんそれがなくなってきました。だからこそ社会に還元したいという気持ちになっているのかもしれないですね。
ジュニア世代の自己解放の手伝いを
今と変わらぬアーティストで居続けることが夢
ー 2018年8月に東京都日野市の中学生と『ぼくのまちにはもりがある』という絵本をつくっています。今後もこういう活動をされるのでしょうか?
自治体からの要望もあるので、続けていきたいですね。今まではずっと小さい子と一緒に絵を描いてきましたが、最近はジュニアにも興味あるので、その世代と一緒につくりたいと思っています。
中学時代って人生で一番恥ずかしい、思い出すと赤面する時期じゃないですか。その時代に関われるのは、ちょっといいなと。一緒に絵を描くことで、普段は抑えつけられているものが外れて自己解放になるかもしれないなと思っています。
それに最近は、未完成なものが美しく感じるんです。最初にお話したように、アートは想像力の根源というのと、もうひとつ、「“わからない” ということが世の中にはある」ということ、「わからないものって世の中にあってもいいんだよ」、ということを子どもたちに教えてあげられるツールだと思うんです。
絵も音楽も、なんでも答えを出さなきゃいけないわけじゃなくて、どんなに追求してもわからないことがあって、でもそれは悪いことじゃないし、わからないことがあるということが、“世界は素晴らしい” みたいなところは、年齢的にも中学生と探求しやすくて、それで今は中学生が好きですね。自分勝手な言い分ですが(笑)。
ー 今後の夢、目標は?
謙遜でも卑屈でもなく、私はそんなに才能はなくて、最初は一冊でも本が出せたらいいなとか、一回でも展覧会が開けたらいいなというところからはじまって、今こうして、大変ですが事務所もあってアーティストを続けられているということ自体が、「現在、夢の中!」って感じで。だからこれ以上を望むかどうかですよね。
この状況から変わらずアーティストで居続けるってことですかね。それが難しいんですけどね。私は子どもたちに「アートは序列がつかない」と言っているので、絶対に賞はとらないと決めているんです。そういうのが変わらずにいたいですね。
版画家・蟹江杏さんのワークショップは、2018年11月24日(土)・25日(日)にiTSCOMSTUDIO & HALL 二子玉川ライズ ガラス壁面で開催! 参加ご希望の方は、開催当日、中央広場チケットブースにてお申込ください。定員は各回10名を予定しています。くわしくはコチラ!
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蟹江杏(かにえ あんず)
版画家。 東京生まれ。「NPO法人3.11こども文庫」理事長。「自由の森学園」卒業。ロンドンにて版画を学ぶ。美術館やGINZA SIX、ギャラリー、全国の百貨店で個展多数。企業とのコラボ多数。新宿区、練馬区、日野市など都市型アートイベントにおいて、こどもアートプログラムのプロデュースを手がける。全国の子どもたちとアートをつなぐ活動を行なっている。2018年、作家生活20周年を迎え、2019年6月には上野の森美術館・ギャラリーにて個展を開催。
http://www.atelieranz.jp
キネコ国際映画祭
1992年に渋谷でスタートした子ども国際映画祭。女優・戸田恵子さんをジェネラル・ディレクターに迎え、2018年で11年目となります。また国内で唯一、ヨーロッパ子供映画団体(ECFA)や子ども・青少年向けのオーディオ・ビジュアルのプロフェッショナルが集まる団体(CIFEJ)に加盟し、子どもたちが映画を通じて世界の芸術や文化に触れ、映画から夢や希望を育むこと、子どもたちの人生の指針のきっかけとなる映画の上映に取り組んでいます。
http://kineko.tokyo
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