平成まぜこぜ一座のプチ公演が
2020年の再演に向け開催!
2019年11月30日(土)、12月1日(日)の2日間、神田明神の文化交流館 EDOCCO STUDIOで、『平成まぜこぜ一座「月夜のからくりハウス」記録映画上映 &パフォーマンス』が開催。どのような感情になるか多少の不安を抱きつつ、観てきました!
これは2017年12月10日(日)に品川プリンスホテル「クラブ eX」で開催した一夜限りの舞台「月夜のからくりハウス」の記録上映とミニパフォーマンスの上演。2017年の公演は大好評で再演を望む声も多く、本来なら舞台の公演をしたいところですが、協賛や助成がつかず再演にはいたらず、しかし2020年の再演に向け、“前へ進むために” 実施されたものです。
“平成まぜこぜ一座” は
映画『グレイテスト・ショーマン』
“平成まぜこぜ一座” は、女優の東ちづるさんが代表を務める、誰も排除しない「まぜこぜの社会」をめざす一般社団法人 Get in touchが結成したパフォーマンス集団。
2016年のリオ・デ・ジャネイロで開催されたパラリンピックで注目を集めた「車椅子ダンサー」、HIVの啓発を行なう「女装詩人」、芸能界で唯一の「寝たきり芸人」ほか、「手話漫才師」「全盲の落語家」などなど、それぞれの特性を活かしたプロのパフォーマー30組以上が所属しています。
その一座が見せてくれるパフォーマンスは、簡単に言うと、「月夜のからくりハウス」の公演のあった翌年、2018年に公開して大ヒットした映画『グレイテスト・ショーマン』に似ています。
実話をもとにした映画で、ヒュー・ジャックマン演じる伝説の興行師 P.T.バーナムは、ショービジネスを行なうにあたりヒゲが濃い女性、小人、大男、連結双生児など、差別や偏見に見舞われている人たちを集め、いわゆる “見世物小屋” を開いたのでした。
興行は大当たりしたものの、19世紀半ばの当時でもそのショーは賛否両論。しかし映画を観て感じるのは、誰にとっても “居場所” というものは本当に大切なんだということ。P.T.バーナムは、隅に追いやられていた人たちを光の当たる場所へと連れ出しました。
昭和まで残っていた
見世物小屋を令和の時代に復活!?
ひるがえって “平成まぜこぜ一座” 。日本でも江戸から明治にかけて見世物小屋は大衆娯楽のひとつとして大人気、演者さんはスターのようでもあったそうです。見世物小屋は障がい者の方々の就労先のひとつでもありました。もちろん、きれいごとだけではなかったでしょうけれど。
元号が昭和になっても「小人プロレス」がテレビで放映されたり、小人のコメディアンがバラエティ番組で活躍するなど “居場所” はまだ残っていました。しかし昭和50年以降、「障がい者を見世物にするなんて不謹慎、けしからん」という批判が起こり、いまではすっかり見なくなってしまいました。
“平成まぜこぜ一座” は、『グレイテスト・ショーマン』を、“見世物小屋” を、今の世に蘇らせようという試みです。東ちづるさんは「海外ではダウン症の役者さんだけが出演するドラマがあったり、さまざまな特性をもつパフォーマーやアーティストが表舞台で活躍しています。日本にも自身の特性をアドバンテージに、日々、努力を重ねて、エンタメの世界で活躍したいと願っている表現者がいます。ならばチャンスをつくる!」と語っています。
確かに、障がいや、多くの人と異なる容姿などを見て笑っていいのか、その葛藤というか罪悪感のようなものは自分の中にも存在しています。しかし、表現したい人に目標や活躍の場があるのは素晴らしいことで、それはパラリンピックと何ら変わりません。
それに、夢や目標があるなら、誰もが自らの身体で、頭で挑戦しなければなりません。背が小さくても大リーグやNBAをめざす人がいるように、持って生まれた、または、そうなった身体でやりたいことに挑戦し、自らの “居場所” をつくろうとするのは、障がいの有無に関係なく、みな同じことです。
以前、東ちづるさんがインタビューでおっしゃっていた「年をとれば誰もが障がい者になる」という言葉がとても印象に残っています。人生100年時代と言われはじめ、高齢になるに連れできないことが増えていく中にあっても、おそらく多くの人はできることに挑戦するはずです。
障がいを “晒している” ことに嫌悪感を覚える人はいるでしょう。見世物小屋なので、おどろおどろしい感じはあるし、多少、セクシャリティにも踏み込んでいるものもあり、子どもに見せるには好ましく思わない人の気持ちも理解できます。でもそれは目に見える表層の部分で、本質とは異なります。さまざまなパフォーマンスがあるので好き嫌いもあるはず。しかし家に帰ってパンフレットを読むと、改めて気がつくことも多々あるのです。
芸術と見世物の違いは?
知ることから変わりはじめる
今回は上映のほか、全盲の高校生シンガーソングライター 佐藤ひらりさんのミニライブ、発達障害(自閉症)のダンサー 想真さんのダンス、そして車椅子ダンサー かんばらけんたさんのパフォーマンスがありました。
全盲のシンガーと言えばスティービー・ワンダーが思い浮かびますが、彼が歌う姿を見世物と思う人はいるでしょうか? 日本人でも、世界で活躍する全盲のピアニストに辻井伸行さんがいますが、芸術と見世物の違いは何でしょう? 音楽的才能の披露なので障がいを晒しているものではないという認識でしょうか?
車椅子ダンサーのかんばらけんたさんは、ダンサーであることはもちろん、その鍛えられた肉体はアスリートそのもの。日頃の練習はもちろん、特殊な車椅子を使ってのダンスは、誰も真似できないでしょうから、振付から構成まで、すべてをひとりで考えているのでしょうか。一見では車椅子に乗っている障がいのある方ですが、唯一無二のパフォーマンスができるダンサーであるとともに、システムエンジニアとして働いている会社員でもあり、お父さんでもあります。
知れば知るほど、障がいの部分は小さくなっていく感じがします。知らないだけ、接点がなかっただけということがわかってきます。「ジロジロ見たらいけません」と言われて育ってきた人たちに、平成まぜこぜ一座の「月夜のからくりハウス」は、笑っているうちに免疫をつけてくれるようなものかもしれません。楽しみながらその免疫が社会に広く広がればいい。誰にとっても優しい社会、居場所のある社会は、きっと過ごしやすいはず。長生きすれば誰もが障がい者になっていく世の中にあっては、とても必要なことです。
ぜひ一度観てほしい
どう思うかは自由
“平成まぜこぜ一座” はパフォーマーも一流なら、それを支えているGet in touchの方々も一流揃い。一流のエンターテインメントで、真剣な見世物、これを見て単純に楽しむ人もいれば、勇気をもらう人もたくさんいると思います。罪悪感、嫌悪感はあって当然、しかしそれは、今まで気がつかなかった、自らの中にある差別かもしれません。
自虐ネタやコミカルな動きに思わず笑ってしまったり、魂の叫びに心が震えたり、その体の動きに圧倒されたり、見世物小屋には多様な出し物があり、きっと思いもしなかったいろいろな感情が生まれるはずです。それをどう思うかは自由。そして表現したいと思うのも自由なのです。もちろん、表現したい人もいれば、見られたくない人もいるでしょう。誰もが同じではないことは、みな同じです。まずは一度見て、いろいろなことを感じてみてほしいと思います。
多様性は社会を、心を豊かにしてくれます。Get in touchは、誰も排除しない「まぜこぜの社会」の実現、そして究極的には、団体が必要なくなること、つまり解散を目標としています。2020年は東京オリンピック、そしてパラリンピックが開催され、障がいに対する考え方、見え方が大きく変わることでしょう。平成まぜこぜ一座も、障がい者の方々への認識を変える大きな足がかりとなるものです。
そして、今回のプチ「月夜のからくりハウス」開催から数週間後、平成まぜこぜ一座「月夜のからくりハウス」の2020年の開催が決定しました。パラリンピック大会の期間中、神田明神の大きなホールで開催されます。パワーアップした「月夜のからくりハウス」の再演が楽しみです。そして、この機会に、ひとりでも多くの人に見ていただければと思います。
【イベント概要】『平成まぜこぜ一座「月夜のからくりハウス」記録映画上映 &パフォーマンス』2019年11月30日(土)・12月1日(日)EDOCCO STUDIOで開催!
【イベント概要】『「月夜のからくりハウス」〜平成まぜこぜ一座〜』2017年12月10日(日)品川プリンスホテル「クラブ eX」で開催!
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