名もなき6人の古代エジプト人の生涯に
科学とエジプト学の双方から迫る!
ミイラやエジプトに関する展覧会の多くは、エジプトの神話や社会、もしくはツタンカーメンのような大スターをフューチャーするものが多い。しかし今回の特別展「大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語」は、子どもも含む比較的名もない6人の古代エジプト人のミイラを中心に、その人物像と人生にフォーカスした非常にユニークな展覧会となっている。
かつてのミイラ研究では巻かれた布をほどいてしまうこともあったが、それはミイラを破壊することにもつながる。そのため現在では、CTスキャンを使用した研究が主流だ。
本展では最先端のCTスキャンによって布に包まれたままミイラの内部を調べ、古代エジプト人がどのように生き、そして亡くなったか。さらにミイラに入れられた装身具や護符など、科学と遺物の両面から古代エジプト人と古代エジプト社会を身近に感じられるようになっている。
【イベント紹介】特別展「大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語」2022年1月12日(水)まで国立科学博物館で開催!
【プレゼント】特別展「大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語」ご招待券(応募締切:2021年11月1日[月])
健康状態、病歴、死因、装身具に護符まで
最先端CTスキャンでミイラの謎を解明!
国立科学博物館では2006年にも「大英博物館 ミイラと古代エジプト展」を開催しているが、そのときに来日した「ネスペルエンネブウ」のミイラは今回も再び来日、展示されている。当時もCTスキャンが行われたが、この15年の技術の進化で、より細かく鮮明にわかるようになったという。
【関連イベント】『特別展ミイラ〜「永遠の命」を求めて』(2020年2月24日(月・休)まで国立科学博物館で開催)
骨に残された病気の痕跡から死因と思われるものがわかったり、巻かれた布のあちらこちらに挟み込まれた護符からは、埋葬した人々の故人復活への想いが見てとれる。
スキャン画像は非常に鮮明で、今までのミイラ展とは一線を画す内容で非常に興味深かった。目の前にある布に巻かれたミイラの中はこのようになっているのかと、埋葬する人たちがどのようにこのミイラをつくったのかを想像し、想いを馳せることができる。
近しい人を亡くしたときの悲しさ、無念さ、そしてなんとかもう一度という想いは、数千年の時を経ても変わらないというのは、改めて素晴らしいと感じた。
死因は今でも現代病とされる動脈硬化だったり、食や、食べるときに使う歯がいかに大切かということを再認識させてくれる。なぜ人類はサメのように後からいくらでも歯が出てくるように進化できなかったのだろうか?
発掘現場を実寸大の模型で再現!
日本人による現在進行中の発掘調査も紹介!
第二会場の日本独自の特別展示は撮影禁止だったためお見せできないのが残念だが、エジプト考古学が専門の金沢大学 河合望教授を隊長とする日本エジプト合同・北サッカラ調査隊が2019年にサッカラ遺跡で発見したローマ支配時代(後1~後2世紀)のカタコンベ(地下集団墓地)の様子を実寸大の部分模型で再現、展示している。
あまりの臨場感に初めて見た人にとっても驚きと興奮をもたらすが、壁を壊したら眼前にこのような光景が広がっていたら、長年探しつづけていた方にとってはどれほどの喜びか、そんな研究者の方々の気持ちを少しだが擬似体験できる。
河合先生は子どもの頃に観たNHKのテレビ番組『未来への遺産』(1974年)に衝撃を受けてエジプトやツタンカーメンに興味を持ち、研究者になったそう。この展覧会から、第二、第三の河合先生が出てくるかもしれないと思うとワクワクする。
小学校低学年のお子さんにはちょっと難しいかもしれないが、声優の島崎信長さんが声を務める音声案内は、とてもわかりやすいのでおすすめ。
さらに「かいけつゾロリ」とのコラボレーションで、会場内にはゾロリからのクイズがあり、QRコードを読み込むとスマホで楽しめるようになっていて、子どもたちが楽しめる工夫も随所に施されている。
科学の力と遺物の研究によって、数千年前のミイラからここまでたくさんのことがわかること、そして時代、国を超えても人類の根源的なありようや願いは同じだということは、非常に興味深いものでした。この秋おすすめの展覧会です。
特別展「大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語」は、東京・上野の国立科学博物館で2022年1月12日(水)まで開催!
記事が役に立ったという方はご支援くださいますと幸いです。上のボタンからOFUSE経由で寄付が可能です。コンテンツ充実のために活用させていただきます。