Q. 親が虫を苦手で詳しくないため子どもに教えることができない場合、どうしたらよいですか?
A. 私は虫に詳しい父と、虫に詳しくない母に育てられましたが、どちらも私の興味を育ててくれたと感じています。虫の惑星である地球で暮らすうえで、家族の中に誰か虫が得意な人がいることは心強いことですが、親御さんが苦手であっても直そうとしたり隠そうとしたりしなくて良いと思います。「私は知らないことが多いけど、○○ちゃんは詳しくてすごいね」というスタンスをとることでもお子さんは誇らしい気持ちになるのではないでしょうか。本を借りに行ったり買ってあげたり、お子さんから虫の魅力を聞くなど、一緒に学んだり教わったりするのも良いと思います。
Q. 動物が好きですが、触るのが苦手です。どうしたら触れるようになれますか?
A. どう触っていいのかわからないという気持ちや、触ることが怖いという気持ちは、慎重さや動物の怖さを理解しているという点で素敵なことです。触れないからといって、触れる人より動物が好きではないということでもありません。それでも触ってみたいという場合は、自分の「触るのが苦手」という気持ちを分析し、その怖さから一番遠い動物からチャレンジしてみるのが良いかもしれません。また、触るのが得意な人に教わりながら触るのも安心すると思います。
Q. 虫や動物と仲良くなるためにはどうしたらいいですか?
A. 人間を相手にするのと同じように、相手のペースを思いやることが大事だと思います。虫や動物は私たちが彼らのことを知っているほどに私たちのことを知りません。だから「はじめまして」の人と仲良くするように、相手の様子を見ながらゆっくり仲良くなるのが秘訣です。
Q. いつか動物と話せるようになりますか?
A. 同じ言葉を使って直接話すことは難しいかもしれません。生き物にはそれぞれの鳴き声に適した舌や口の構造を持っているからです。しかし、オウムの仲間は人の言葉を真似することができる舌と、言葉を理解する脳を持っていることがわかったり、ゴリラに手話を教える取り組みなどがあったり、動物と話すのに役立つ研究は進んでいるため、いつかは同じ言葉で気持ちを伝えることができる日がくるかもしれません。
でも、違う言葉を使っていても気持ちが通じあうことはあります。“動物と話したい”! と思う気持ちが一番大切な一歩だと思います。
Q. 生き物を殺さずに研究することはできますか?
A. 生き物を殺さない分野で生き物と関わる研究はいくつもあります。「生態学」や「文化昆虫学」がそれにあたるでしょう。私が研究していた「分子生物学」でもプログラミングを使ったシミュレーションだけで研究をする分野もありました。
すべての研究において生き物を殺さずに研究できるかと言えば、今のところYESとは言えませんが、できるだけ命を無駄にせず研究することができるように、多くの科学者が心をくだいています。
Q. どうやったら好きなことを続けられますか? くじけたことはありませんか?
A. たくさんくじけてます! しかし、好きなことを続けるために大事なのは “くじけた後” です。自分よりすごい人を見たとき、希望が叶わなかったとき、諦めてしまいそうなところをグッと踏ん張ったり、そういうこともあるよねとサラッと受け止めたりして違う道を探すことが、好きなことを続けるために大事なことだと思います。
Q. 虫も服やメイクなどのおしゃれをしますか?
A. 仲間へのアピールとして派手な模様や色になった虫がいるので、その点では虫はさまざまなおしゃれをしています。また、生まれた後に何かを装うという点では、自分のフンを体につけるユリクビナガハムシや、苔を体につけるシラホシコヤガがいます。彼らは天敵から身を守るためにうまく装っているのです。
Q. 動物と関わる仕事は体力が必要ですか?
A. 関わり方にもさまざまあると思いますが、飼育員さんや牧場など動物と直接関わる仕事では体力は必要です。レポーターや研究者としてフィールドに行くのも、そこそこ体力が必要です。でも、必ずしも運動神経抜群である必要はないので、一番大事なのは “気力” だと思います。
Q. 昆虫に心や思考はありますか?
A. 人間と同じように昆虫が喜んだり悲しんだりするかについてはまだ私たちは十分に知りません。しかし昆虫には記憶があり、生存するための本能があることはわかっています。私たちの心と昆虫の持つ心を明確に区別することは難しいので、私たちに心があると感じるならば、昆虫にもあると考えても良いかもしれません。
Q. なんでシャチは強いのに、人間の言うことをきいて芸を覚えるの? 馬なども人間よりも体は大きく力も強いのに、なぜ人に従うのでしょうか?
A. シャチはもともと人を襲うことが少ないことで知られています。とても賢いので、知らない生き物を警戒するからです。ただし、よくしつけられたシャチが人を水に引きずり込む事件が起きたこともあるので油断は禁物です。
馬は歯と歯の間に隙間があって、そこに「ハミ」という道具をつけることで人の指示を伝えています。このハミの発明が人と馬の関係をグッと近づけたと言われています。
大きな動物は人の言うことをきかなくてもいいような強い力を持っているので、今も昔も変わらず、信頼関係を維持することを忘れないことが大切です。
篠原かをりさんにたくさんの質問に答えていただきましたが、いかがでしたでしょうか? 私たちを魅了して止まない昆虫や動物などの生き物。好きなものやことがあることはとても豊かだと思うので、これからも好きな生き物に興味を持ち続け、親子で話をしたり、イベントに参加したり、興味や知識をより深めていただければと思っています。
子どもの頃に好きになったものは、それを仕事にしなくても、将来、何かで役に立つことがあります。今までインタビューなどでお話をお伺いした方たちの多くが、子どもの頃に好きだったことに支えられていたり、役立っていたりします。
子どもたちの “好き” を増やすきっかけづくりを『キッズイベント』ができていれば嬉しいですし、これからもしていきたいと思っています。
篠原かをり
動物作家、タレント。1995年⽣まれ。慶應義塾⼤学SFC研究所上席所員として「分⼦⽣物学、代謝、健康科学、⾷と健康」を研究中。日本大学大学院芸術学研究科博士後期課程に在籍し「動物⽂学」を研究中。幼少の頃より⽣き物をこよなく愛し、⾃宅で約400匹の昆⾍、ネズミ、フクロモモンガ、イモリ、ドジョウ、タランチュラなどさまざまな生き物の飼育経験がある。⽣き物に関するありとあらゆる知識を持ち、独特の切り⼝や表現が話題に。TBS「⽇⽴世界ふしぎ発⾒!」のミステリーハンターをはじめ、テレビ、ラジオや連載コラムなどで活躍中。主な著書は『恋する昆虫図鑑 ムシとヒトの恋愛戦略』(⽂藝春秋)、『LIFE<ライフ> 人間が知らない生き方』(⽂響社)、『サバイブ(SURVIVE)―強くなければ、生き残れない』(ダイヤモンド社)、『フムフム、がってん! いきものビックリ仰天クイズ』(⽂藝春秋)、『ネズミのおしえ ネズミを学ぶと人間がわかる!』(徳間書店)、『よし、わかった! いきものミステリークイズ』(⽂藝春秋)など。
オフィシャルサイト
https://shinoharakawori.com
篠原かをりチャンネル
https://youtu.be/Nu8eQYsUZqk
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