趣向を凝らした体験展示で
昆虫の不思議や魅力、驚きの多様性に迫る!
国立科学博物館の研究者による “マニアックな視点” と “マニアックな昆虫標本” に最新の昆虫研究を織り交ぜ、カブトムシやクワガタムシといったおなじみの昆虫はもちろん、クモやムカデなどを含む “ムシ(虫)※” たちの不思議や魅力、そして驚きの多様性に迫る特別展「昆虫MANIAC(昆虫マニアック)」が、2024年7月13日(土)から開催!
開幕前日の7月12日(金)、監修を担当した研究者5名に加え、公式サポーターのアンガールズ 山根良顕さんと田中卓志さんも駆けつけ、オープニングセレモニーとスペシャルトークが披露されました。
※特別展「昆虫MANIAC」では、昆虫および昆虫をはじめとする陸生の節足動物を「ムシ(虫)」として扱っています。
特別展「昆虫MANIAC」の総合監修を務める国立科学博物館動物研究部陸生無脊椎動物研究グループ研究員 井手竜也先生は、「 “見る” だけでなく “聴く” “触る” “嗅ぐ” など、さまざまな趣向を凝らした体験ができる展示になっています。(展覧会のタイトルに)“マニアック” と付いているので『大丈夫かな?』と思う方もいるかもしれませんが、ムシ好きな人も、そうでない人にも楽しんでもらえるようになっていると思いますので、ぜひご覧いただければと思います」と、自信をのぞかせました。
監修を務めた先生方
井手竜也[総合監修・ハチ類]国立科学博物館動物研究部陸生無脊椎動物研究グループ研究員
野村周平[コウチュウ類]国立科学博物館動物研究部陸生無脊椎動物研究グループ長
神保宇嗣[チョウ・ガ類]国立科学博物館動物研究部陸生無脊椎動物研究グループ研究主幹
清拓哉[トンボ類]国立科学博物館動物研究部陸生無脊椎動物研究グループ研究主幹
奥村賢一[クモ類]国立科学博物館動物研究部陸生無脊椎動物研究グループ研究員
アンガールズ田中さん、山根さんは
半分オスで半分メスのカブトムシ
221年ぶりの「素数ゼミ」で大盛り上がり!
ひと足先に展示を見学したアンガールズの2人は印象に残ったものとして、「生きているオオセンチコガネが展示されていて、ケース中央に置かれた動物のフンにむらがって、グアーッと頭を突っ込んでいる姿に笑っちゃいました」と田中卓志さん。続けて「半分オスで半分メスというギナンドロモルフ(雌雄型)にもびっくり! こういう機会でないと見られないものだと思いました」。
山根良顕さんも「キレイなチョウや大きいサイズの昆虫の展示とか、すごく楽しいと思います! ウチの奥さんも大きなクモやゴキブリがすごく好きなので、連れてくればよかったなと思いました」と、展示のおもしろさをアピールしました。
そして2人が盛り上がったのが「素数ゼミ」の展示。今年2月にアメリカで、13年、または17年で成虫になるセミが同じ年に羽化し大量発生するという事象が起きました。これは実に221年ぶりのこと! 今回の展示では研究チームによる現地取材の様子が追体験できるとともに、素数ゼミによる大音量の鳴き声を体験できるブースもあり、田中さんは「あのうるささも、普通に生きていたらなかなか体験できないですよ!」と興奮していました。
多様性に満ちた昆虫の世界を
多角的に楽しむ特別展
昆虫は地球上で報告されている生物種の半数以上となる約100万種を占める最大の生物群。そのほとんどは体長1センチにも満たない小さな生物ですが、体のつくりや行動、能力にいたるまで、驚くほどの多様性に満ちています。
特別展「昆虫MANIAC」では、国立科学博物館の研究者によるマニアックな視点、マニアックな昆虫標本、そして最新の昆虫研究を織り交ぜて展示を行い、普段はなかなか注目することが少ない「ムシ」たちの多彩な世界に迫っています。
会場内は3つのゾーンに分かれていますが、メインは5人のムシ博士が各専門ジャンルをマニアックに紹介するゾーン2。「トンボの扉」「ハチの扉」「チョウの扉」「クモの扉」「カブトムシの扉」があり、ムシ博士こだわりの展示が行われています。
“MANIAC(マニアック)” と銘打っているだけあり研究者の方のこだわりが見てとれるのが楽しい。しかも子どもたちにもわかりやすくするため展示は低め、解説の文字は大きくなっていて、全体的にスッキリした印象。
しかし、マニアックな視点ということで、やはりちゃんと解説を読んだり、音声ガイドを聞かないと、楽しさ、おもしろさは半減してしまう。ここは親御さんがフォローしたいところ。『キッズイベント』が5人の先生方に、それぞれの「扉」の見どころと、こだわりのポイントを聞いてきたので、ぜひ参考にしてください。
5人の監修の先生方の展示の
こだわりのポイントを紹介!
総合監修およびハチの扉
井手竜也先生
各扉に巨大模型と集合標本展示を用意しました。巨大模型は身近な虫ではなくちょっとマニアックな虫で、しかも何かしら特徴的な形、行動をしているところを標本にしているので「何でこの形なんだろう?」と、興味を持つきっかけとしておもしろいものになっていると思います。
そして、とにかくお子さんが見やすいということにこだわりました。標本の位置も低めにし、解説の文字も大きく、簡潔にしています。
担当した「ハチの扉」については、中南米にしか生息していない「シタバチ」というきれいなハチを見てほしいですね。オスが花の香りを集めるという、世界中探してもシタバチの仲間だけというおもしろい生態を持っています。後ろ足のところにスポンジ状の構造があり、ここに花をこすって香りを移すんです。いろいろな香りを集めたオスはメスにモテやすいんです。そして、その香りを嗅ぐことができるようになっています。人にとって嫌な匂いでも、いろいろな匂いを集め、配合することで、よりメスにモテるようになります。
専門は “タマバチ” という、植物に卵を産みつけて虫こぶをつくるハチです。タマバチはもちろん、いろいろな種類の虫こぶを見ていただきたいと、2年くらいかけて標本をつくったので、ぜひ見てください。
そして、とても小さくて地味なんですが、世界で唯一 “跳ねる虫こぶ” として知られている虫こぶの標本、そして跳ねる様子の動画を展示しています。これは多分、日本初展示だと思います(笑)。そういうところがマニアックなんですね。
特別展「昆虫MANIAC」では、身近な虫のマニアックなところ、ほとんどの人が知らないマニアックな虫などを紹介しています。虫についてのいろいろなマニアックを知っていただき、虫の多様性のおもしろさを体感していただければと思っています。
カブトムシの扉
野村周平先生
「ギナンドロモルフ(雌雄型)」という、半分オスで半分メスのカブトムシやチョウの標本を展示しています。ギナンドロモルフのカブトムシは国立科学博物館に寄贈されたときにはまだ生きていたので、その姿を撮影した動画や、CT画像も見ることができます。頭部はメス、その他はオスで、解剖したらオスの交尾器が出てきました。
「無名だけど面白すぎる甲虫の世界」も見どころです。とにかく小さな甲虫で肉眼ではなかなか見えないのですが、顕微鏡などで見るととてもユニークな姿をしています。
そして国立科学博物館には個人の方から標本のコレクションが寄贈されるのですが、どんな昆虫を集めているのか、どのように整理しているのか、みなさん人生をかけて標本をつくっているので、それぞれの人のポリシーがあり、その人の人生を反映しています。それが見えるようになってくると、非常におもしろいと思います。肉眼では見えないような小さな昆虫を集めて種ごとに分けて標本をつくったり、昆虫の世界はとても深くて、変な虫や変な研究者がいるということを知っていただければ(笑)。
ちなみに野村周平先生も体長1ミリほどの「アリヅカムシ」という小さな虫が専門。やはり共感するものがあるそうです。
【インタビュー】特別展「昆虫」(2018年開催)監修の野村周平先生インタビュー!
チョウの扉
神保宇嗣先生
チョウやガの仲間のいろいろなマニアックを昼と夜などのキーワードでわかりやすく展示しています。“マニアック” と付いていますが、気楽に見ていただければと思います。
チョウやガの仲間って何種類くらいいるか知っていますか? と聞くと、「アゲハチョウ、モンシロチョウ、う〜ん‥‥」みたいな感じですが、実はもっといろいろな種類がいるということを、実物を見て体験してほしいですね。
一番わかりやすいのがこの集合展示で、日本のチョウの仲間は代表的なものが250種ほどいるんですが、その中の100種類くらいをグループごとにわけて展示しています。そして、ぜひ表と裏を見比べてください。表だけでなく裏も多様なんです。なぜこうなっているんだろうと興味を持っていただくことで、そこから世界が広がっていくと思います。
トンボの扉
清拓哉先生
不完全変態昆虫と言われるバッタやカマキリ、ナナフシ、セミなども展示していますが、多くの人が苦手なゴキブリも気合を入れて用意したので、ぜひ楽しんでいただければと思います。
ゴキブリと言うと嫌な人もいると思いますが、色がきれいで、山の中できれいな水のあるところに暮らすきれい好きなルリゴキブリも紹介しています。世界中にいるんですが、日本では鹿児島や沖縄で、ここ5年で3種類くらいの新種が見つかっています。こんな、ちょっとおしゃれなゴキブリも日本にはいるんだよ、ということを知ってもらいたいですね。
また、トンボの翅(はね)の網目模様を翅脈(しみゃく)と言いますが、翅脈には1本1本名前がついていて、翅脈を調べることでトンボの種類がわかりますと、清拓哉先生。まさにマニアック!
クモの扉
奥村賢一先生
昆虫以外の虫として、クモなどの陸生の節足動物、ムカデ、ヤスデ、サソリ、ダニなど、普段あまり注目されないような虫もいろいろと紹介しています。これこそまさにマニアックかなと思っています。
子どもならやはりダンゴムシを見てほしいですね。どれがダンゴムシかクイズになっていて、同じく体を丸めるよく似た昆虫がいます。ひとつは最近新種として記載された琵琶湖の付近にいるヤスデなんです。
特別展「昆虫MANIAC」は、2024年10月14日(月・祝)まで国立科学博物館で開催!
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