ピーター・ソーン監督が“本物のアーロ”と感激のご対面!
映画「アーロと少年」ピーター・ソーン監督と「恐竜博 2016」監修の真鍋真博士(国立科学博物館)がトークイベントを開催!
恐竜が絶滅せずに進化したら!? あふれる“恐竜愛”!
映画『アーロと少年』『恐竜博 2016』とも恐竜ファンは必見!
創立30周年という記念すべき年に放つディズニー/ピクサー最新作『アーロと少年』。地球に隕石が衝突したことが原因で絶滅したと言われる恐竜たちだが、「もしも隕石が地球にぶつからず、恐竜たちは進化を続け文明と言葉を持つようになったとしたら?」本作はそんな“もしも”の世界を舞台に、大きいけれど弱虫で怖がりの恐竜アーロと、小さいけれど怖いもの知らずの少年スポットの友情を描いた感動のアドベンチャー・ファンタジーです。
主人公のアーロは「アパトサウルス」という恐竜の子ども。国立科学博物館には全身の約8割が実物という、世界でも5本の指に入るほど完璧な状態に近い貴重なアパトサウルスの骨格標本があり、ピーター・ソーン監督の「アパトサウルスに会いたい!」という希望から国立科学博物館の訪問が実現。2016年3月8日(火)から同館で開催される「恐竜博 2016」の監修を務めている真鍋真博士と、アパトサウルスをはじめとする恐竜や、映画『アーロと少年』についてのトークセッションを行ないました。
ピーター・ソーン監督、アパトサウルスの骨格標本とご対面!
ピーター・ソーン監督
8割が本物という完全に近い形でのアパトサウルスの骨格標本を見るのは初めてです。しっぽを引きずっていないところを見ると、比較的新しい時代につくられた標本ですね。彼? 彼女?は素晴らしいですね。
真鍋博士
ここに展示しているアパトサウルスは全長18m、推定体重は18〜20トンほどです。性別はわかりませんが、成長すると23〜24mくらいまで大きくなるので、映画のアーロと同じくらいの若い恐竜かもしれません。
以前恐竜は、尾を地面に引きずった形で展示していましたが、今では尾は地上から浮かせてピンと張り、機敏に歩き回る活発な生き物だったんじゃないかと考えられています。
首もキリンのように高くあげて高いところの植物を食べていたのではなく、地面と水平に伸ばし、首だけを左右に振ることで、巨体はあまり動かさずにまわりのいろいろな植物を食べていたのではないかと考えています。
農業をしている姿がぴったり!?
映画の主人公に「アパトサウルス」が選ばれた理由
ピーター・ソーン監督
主人公を決めるにあたり、いろいろな種類の恐竜の家族を見ました。なかでも「アパトサウルス」は今までの映画のなかでも穏和で平和を望む、牛のように描かれることが多い恐竜で、なんとなく「アパトサウルス」が鼻面で畑を耕している絵を描いてみたんです。そうしたらそれがとてもおもしろくて、もし彼らが畑を耕し一家で農業を営んでいたら、自分たちの食べものを栽培していたらと、実際にこのシーンは映画の冒頭に出てきますが、ここから体の小さなアーロが生まれてきたら、弱虫だったら‥‥と、設定や発想が膨らんでいきました。
もし絶滅しなかったら、恐竜も友情や愛情を育む進化をしていた!?
真鍋博士
映画を拝見し、その斬新な発想に驚きました。最初はそんなことはあり得ないと思いましたが、映画を観ているうちに、もし本当に恐竜が絶滅しなかったら、このような友情や愛情をどんどん進化させていったんだろうな、ということを感じました。インスピレーションをいただいたような気がします。
ピーター・ソーン監督
どんなインスピレーションを感じたのか、ぜひ聞かせてほしいですね。というのも、私自身もこの映画をつくっている中で、自分の人間性というものを改めて考えたり、知るきっかけになったからです。人間を人間たらしめているものは何か、制作中は、そんなことを改めて考えていました。
真鍋博士
「オビラプトル」という恐竜は「卵泥棒」と呼ばれていたんです。しかし研究が進み、今では自分の卵を温めていたと考えられています。恐竜も進化の過程で“家族”というものを意識してサバイバルをしていた。家族という意識の進化は、恐竜の時代からはじまっていたのかもしれません。
恐竜の一部は鳥へと進化して生き残っています。恐竜がそのままの姿で進化していたらどうなっていたかはいろいろな可能性がありますが、群れ、家族、鳴き声によるコミュニケーションなどを進化させていたんじゃないかなと思っています。
テーマは「家族愛」、監督が映画に込めた親子のシーン
ピーター・ソーン監督
この映画を制作している5年の間に2人の子どもに恵まれ、親になりました。私の両親は商店を営み仕事も大変でしたが、子どものことはしっかり理解し、子どもが何を必要としているかもちゃんとわかっていました。そして、家族で力をあわせて暮らしていました。そういう想いのすべてがアーロと両親のシーンには入っています。
ひとつ例をあげると、弱虫なアーロに父親は、怖いと思っているところにこんなに美しいことがあるんだということを教えるシーンがあります。家族がいかにお互いにいろいろなことを教え合える存在なのか、そういう想いを込めました。
恐竜も親子のコミュニケーションが重要だった
真鍋博士
「恐竜博 2016」では恐竜の赤ちゃんの化石が初来日します。頭がトロンボーンみたいになっている二足歩行の草食恐竜「パラサウロロフス」と、トリケラトプスの仲間の「コスモサウルス」の赤ちゃんです。どうちらも推定年齢は1歳未満です。
赤ちゃんの化石は、すぐに赤ちゃんということがわかります。だから恐竜も、親が子どもだということを認識できたでしょう。またパラサウロロフスは、子どもと大人では頭から出る音が違うので、親子でコミュニケーションをとっていたと想像されています。そういうものがいろいろと見つかってくると、子どもと大人のコミュニケーションというものが非常に重要だった、恐竜の中でそういうものが進化していたんだというのが、まさに今、続々とわかってきています。
愛や友情があるからこそ、勇気を持って前に進める
ピーター・ソーン監督
アーロは成長期にある恐竜で、世界に対してまだ恐怖心を持っています。だんだんと、一歩ずつ前に進んでいくのですが、それを手伝ってくれるのがスポットという友だちです。怖さや悲しみは友だちがいるから乗り越えられる。勇気を持って前に進めるようになるには、愛や友情が不可欠だということを感じてもらいたいですね。
ピーター・ソーン監督
ニューヨーク出身。カルアーツ(カリフォルニア芸術大学)でキャラクター・アニメーションを学び、在学中に『アイアン・ジャイアント』(99)の製作に携わる。2000年ピクサー・アニメーション・スタジオに入社。『ファインディング・ニモ』(03)ではアート/ストーリー部門、『Mr.インクレディブル』(04)ではアート/ストーリー/アニメーション部門、『レミーのおいしいレストラン』(07)ではストーリー/アニメーション部門、『ウォーリー』(08)ではストーリー部門のスタッフとして作品に貢献。短編映画『晴れ ときどき くもり』(09)で監督デビュー。本作で初の長編映画監督を担当。
真鍋真博士
1959年、東京都生まれ。国立科学博物館 地学研究部 生命進化史研究グループ グループ長。横浜国立大学卒業、米イェール大学大学院修士課程修了、英プリストル大学大学院博士課程修了。博士(理学)。国立科学博物館・地学研究部生命進化史研究グループ・グループ長。化石から恐竜や爬虫類、鳥類の進化を読み解くことを試みている。「恐竜博 2016」監修。
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