2020年の教育改革に向けた勉強法も伝授! まずは伝記で “人間ドラマ”を楽しむ!

歴史コメンテーター・金谷俊一郎先生&れきしクンインタビュー!

東進ハイスクールのカリスマ日本史講師の金谷俊一郎先生にインタビュー! 歴史の楽しさ、2020年教育改革に向けた勉強法を伝授!
2時間を超える講演の後にも関わらず、歴史の魅力をたくさんお話いただいた、金谷俊一郎先生(写真右)と、れきしクンこと長谷川ヨシテルさん(写真左)
2017年5月21日(日)に開催された、歴史コメンテーター 金谷俊一郎先生の『教科書には書ききれない! 日本史講座』。“もっと歴史を深く知りたくなるシリーズ” で主人公となった「天正遣欧少年使節」の千々石ミゲル宇喜多秀家足利義輝をテーマに、その知られざる魅力をたくさん話してくれました。今回はその講演後に金谷俊一郎先生と、れきしクンこと長谷川ヨシテルさんにインタビュー。子どもたちからの「なんで歴史を勉強するの?」への回答や、歴史に興味を持ってもらう方法、そして「歴史総合」という科目が必修になる2020年の教育改革についてもお話を伺いました。(インタビュー:2017年5月21日(日) / TEXT:キッズイベント 高木秀明 PHOTO:大久保景)※このインタビュー記事には、講演でのお話も再構成して掲載しています。

歴史のおもしろさは、すべて “伝記” から教わった

ー 金谷先生が歴史好きになったきっかけは?

金谷俊一郎先生
歴史を好きになるきっかけはだいたい3つあります。ひとつは「戦国時代」、もうひとつは「幕末」、そして最後のひとつは「考古学」のような太古のロマン。でも私はそのいずれとも違いました。京都生まれだから、というのも違います。

子どものころ、自分で言うのもなんですが、いいとこのボンボンだったんです。祖父が東証一部上場企業の創業者で、父が2代目。昭和40年代にベンツが2台とリンカーンが1台ありました。私は長男で、3代目を継ぐ予定だったんですね。それが小学5年生のときに会社更生法が適用されて、創業者一族全員がクビになりました。その結果、ベンツ2台の生活から団地の4階、エレベーターなしになったんです。

東進ハイスクールのカリスマ日本史講師の金谷俊一郎先生にインタビュー! 歴史の楽しさ、2020年教育改革に向けた勉強法を伝授!
誰もが知りたい、金谷先生が歴史好きになったきっかけ。家庭環境が大きく変わったと思いますが、それも「歴史」があったから乗り越えられたのでしょうか?

それはいいとして、まだ裕福だった小学3年生のとき、私の部屋の本棚に見知らぬ本があることに気がついたんです。買った記憶はありませんでしたが、読んだらおもしろいんです。すごくおもしろかった。晩ご飯のときにそのことを話したら、普段は厳しくて絶対に笑わない父親の口角がちょっとあがったんです。本は、松下幸之助さんの伝記でした。

それからというもの、私の本棚に見知らぬ本がどんどん増えていったんです。で、そのラインアップがすごい。松下幸之助の次は岩崎弥太郎(三菱財閥創業者)、豊田佐吉(トヨタグループ創業者)、渋沢栄一(第一国立銀行や東京証券取引所など多種多様な企業の設立・経営に関わった実業家)、アンドリュー・カーネギー(カーネギー鉄鋼会社創業者)などなど。そうです。3代目の私に、帝王学として経営者の伝記を読ませていたわけです。

そんなこととはつゆ知らず、私はただただ伝記がおもしろくて、はじめて授業以外で学校の図書館に行ったんです。そして、経営者以外の伝記もあることに気がつくんです。ナイチンゲールとかヘレンケラー、野口英世とか。あるんです。たくさんの偉人の本が。「なんでこれを買ってくれなかったんだろう?」と、そのときはまだ親の意図はわかりませんでしたから、そう思いながら、図書館にある偉人の伝記を読み漁りました。

学校の本だけでは足りなくて、京都の市立図書館で学校にはない伝記を読み、そして府立図書館にも足を運んだけれど、もうだいたい読んでしまっている。そうしたら知らないおじさんが「ずっと伝記のところにいるね」と声をかけてきたんです。「ここにある本は全部読んでしまった」と言ったら、「ここにあるのが図書館の本の全部じゃないんだよ」って、その人は図書館の司書だったんですね。書庫から昔の伝記を持ってきてくれて、木村長門守(きむらながとみのかみ)や武内宿禰(たけうちすくね)、そういうのもほぼほぼ読んで、それが小学4年生のころです。

東進ハイスクールのカリスマ日本史講師の金谷俊一郎先生にインタビュー! 歴史の楽しさ、2020年教育改革に向けた勉強法を伝授!
大企業の3代目として帝王学のひとつとして、そうとは知らずに伝記を読んでいたことが、歴史を好きになるきっかけだった

学校の授業がつまらない
歴史は “人間ドラマ”がおもしろい!

小学5年生になると、学校の社会科の授業で歴史がはじまるんです。学校で歴史をやってくれるんだと、ものすごく楽しみにして最初の授業を受けました。

「645年、中臣鎌足と中大兄皇子が『大化の改新』をやりました」

なんてつまらないんだ! って思いましたね。

中臣鎌足という人は、もともとは神道、神様のまつりごとをする家柄なんです。蘇我氏は仏教と組んで権力を握っていた。だから蘇我氏にとって、中臣鎌足は邪魔なんです。さらに中大兄皇子というのは、お父さんが舒明天皇(じょめいてんのう)、お母さんが皇極天皇(こうぎょくてんのう)、両親とも天皇ということは天皇になる運命にある人物。ただそのときの状況では、彼の人生はふたつにひとつしかない。蘇我氏の言いなりになって生き残っていくか、蘇我氏に逆らって聖徳太子の息子、山背大兄王(やましろのおおえのおう)のように殺されるか。

しかし、人生に行き詰まったこの2人が、飛鳥寺での蹴鞠会で出会うんです。さらにその後、蘇我倉山田石川麻呂(そがのくらやまだのいしかわまろ)という、蘇我氏の人間が彼らに協力する。これを話すと長くなっちゃうんだけど、おもしろいのはそこでしょ、と思うわけです。授業ではまったくこれがなくて、なんてつまらないんだろうと。それから授業は聞かなくなりました。

東進ハイスクールのカリスマ日本史講師の金谷俊一郎先生にインタビュー! 歴史の楽しさ、2020年教育改革に向けた勉強法を伝授!
「教科書はレジュメ(要約)だから、つまらなくてあたり前」と、金谷先生。そこに先人の想いや息吹を伝える先生の説明があってはじめて、子どもたちは歴史の楽しさを知り、理解できる

授業を聞いていないことがわかると、先生は「金谷、授業聞いてねぇな」とか言って、意地悪な質問をするんです。「おまえ、公事方御定書(くじかたおさだめがき)を書いたのは誰だか知ってるか?」とか。先生は「大岡忠相(おおおかただすけ)」という答えを持っているわけですが、私は授業を聞いていませんでした。そこで「公事方御定書とは、大岡忠相が中心に書いたんだけど、その思想においては松平乗邑(まつだいらのりむら)という人物がいて、その人が中心となって動き、その革新的な内容を大岡忠相が通していく、そこに魅力がある」と答えた。それ以降、先生は私のことは放ったらかしにしてくれました(笑)。

だから正直、私は歴史の勉強というのは全然していないんです。していないけれど、全部、伝記で頭に入っています。なぜなら伝記は物語なんです。ストーリーなんです。ドラマなんです。好きなドラマは内容を事細かに覚えているでしょ。授業ではそういうおもしろいところを全部取り去ってしまっています。

それで私は、そういうおもしろさを伝えるお仕事をしたいと思ったんです。でもそういうお仕事はなくて、たくさん話ができるという理由で予備校の先生になりました。そこでしゃべっているうちに、今日の講演のように、いろいろなところで歴史の話をさせていただけるようになったんです。

「歴史ってどこがおもしろいんですか?」と言われることがありますが、そこにある “人間のドラマ” がおもしろいんです。ただ、そのドラマだけでもダメで、そのときのバックグラウンド、バックグラウンドは確かにつまらないときもあるんですが、そこをしっかりわかっていたら、ひとつひとつのエピソードがもっとおもしろくなってきます。そういうところを、わかっていただきたいなと思っています。

歴史は成功と失敗の膨大なデータベース
先人から何を学び、掴むのか、人生を考えるきっかけにも

ー 2017年6月8日(木)〜18日(日)まで、EXシアター六本木で上演される舞台「剣豪将軍義輝 〜星を継ぎし者たちへ〜」では “足利義輝” が主人公です。よく「歴史から学ぶ」と言われますが、彼の生き様から私たちが得られるものは何でしょう?

金谷俊一郎先生
この人は教科書では可哀想な扱われ方をしています。「室町幕府第13代将軍、暗殺された」、将軍だったのに殺されちゃった可哀想な人、みたいなね。でも、ほかの将軍は殺されていないのに、なぜ義輝だけ殺されちゃったのか?

当時、室町幕府の将軍なんてお飾りだったんです。実権を握っている連中の言うことをふんふん聞いていれば、とりあえずいい生活を送れた。でも義輝は、将軍自らが政治を行なう「将軍親政」に徹底的にこだわった。だから狙われ、30歳の若さで殺されるんです。そういう壮絶な人生を駆け抜けたんですね。

東進ハイスクールのカリスマ日本史講師の金谷俊一郎先生にインタビュー! 歴史の楽しさ、2020年教育改革に向けた勉強法を伝授!
義輝というと、一般的には将軍なのに殺されちゃった残念な人、そう思われているかもしれないけれど、皮を一枚剥いだところには、しっかりとした男気のある人で、だからこそ狙われ、若くして花散らすわけです。そういったところを学ぶ機会は必要だと思っています。本やテレビ、舞台など、歴史のおもしろさを伝えていくツールを増やして、人間の生き様にもっと迫る機会があるといいなと思っています

義輝は有名な剣の名手、塚原卜伝から免許皆伝をもらうほどの腕だったと言われています。幕末に書かれた『日本外史』という本に載っていますが、殺される直前、自分のまわりを囲うように何十本もの剣を突き刺し、襲ってくる相手を切っては刀を変え、切っては刀を替えて戦いぬき、壮絶な死を遂げたそうです。実際には壮絶かどうかはわからないのですが、でも将軍自らが政治をやりたいという情熱のある人だから、壮絶でもおかしくないですよね。

もし彼が事なかれ主義であったなら、彼の人生はこうはならなかった。しかし、自分の背負っているものをしっかりと貫いた人なんです。貫いた結果、殺されてしまったので、そこはいろいろな意見があると思うけれど、貫いたという生き様には素晴らしさがあると思っています。でも教科書からはこのあたりのことがまったく伝わりません。

「歴史って何なのか?」と言うと、成功と失敗の膨大なデータベースでなんです。そこから自分は何を学んでいくべきなのか、何を掴んでいくべきなのか。感動するとか共感するとか、違うと思うとか、自分の人生について考え直すとか、そういうさまざまなことを考えるきっかけになるものだと思っています。

ー 長谷川さん(れきしクン)はいかがですか? 義輝から学ぶものとは?

長谷川ヨシテルさん
義輝は11歳で将軍になって30歳で亡くなっています。この約20年の間に何回も京都を追放され、でも京都に戻って将軍としての責務をまっとうしようとする、その運命に立ち向かうパワー、現状を打開しなければいけないという将軍としての責任感がかっこいいし、学ぶべきところですよね。

東進ハイスクールのカリスマ日本史講師の金谷俊一郎先生にインタビュー! 歴史の楽しさ、2020年教育改革に向けた勉強法を伝授!
「よしてる」つながりで、足利義輝から歴史に興味を持ったという、れきしクンこと長谷川ヨシテルさん。戦国時代、幕末期の知識は歴史の専門家も驚くほど

【体験レポート】歴史コメンテーター 金谷俊一郎先生の『教科書には書ききれない! 日本史講座』

【インタビュー】舞台「剣豪将軍義輝 〜星を継ぎし者たちへ〜」に出演している星野真里さんのインタビューはこちら!

もっと歴史を深く知りたくなるシリーズ
舞台「剣豪将軍義輝 〜星を継ぎし者たちへ〜」

「もっと歴史を深く知りたくなるシリーズ」は、教科書には載らないような歴史上の出来事を興味深くおもしろくエンターテインメントとして表現するシリーズ企画。2014年9月に第1弾企画「マルガリータ〜戦国の天使たち〜」を、2015年10月に第2弾企画「幻の城〜戦国の美しき狂気〜」を上演。

「剣豪将軍義輝」はその第3弾企画となり、初の前後編2部作。前編は2016年12月8日(木)〜12月14日(水)に上演された。戦乱の世を、将軍でありながら無双の剣士として生きた若き足利義輝の爽快な生涯を描いた宮本昌孝氏の長編歴史小説「剣豪将軍義輝」の舞台化。2017年6月8日(木)〜18日(日)まで、EXシアター六本木で上演。

オフィシャルサイト:http://mottorekishi.com

東進ハイスクールのカリスマ日本史講師の金谷俊一郎先生にインタビュー! 歴史の楽しさ、2020年教育改革に向けた勉強法を伝授!
2020年の教育改革、歴史の勉強はどうしていけばいいのかも、教えていただきました

子どもに歴史に興味を持ってもらうには
まずは歴史上の人物で誰かひとり、興味を持つこと

ー 歴史が苦手、という子どもは多いと思います。子どもに歴史に興味を持ってもらうには、楽しんでもらうにはどうしたらいいですか?

金谷俊一郎先生
やっぱり伝記を読むのがいいと思います。歴史はデータベースとお話しましたが、伝記はいろいろな人の成功や失敗を学べる生きた教材です。「歴史って暗記でしょ」と思っている親御さんもいらっしゃると思いますが、ただの暗記なら歴史という形を借りる必要はないわけです。先人の、こうやったから困難を乗り切れた、こうしたからうまくいった、失敗した、そこから学ぶんです。

そしていろいろな人物がいたことを知ることにより、自分は何をしていこうか、そういうことを考えるきっかけになるんです。だから私は、子どもたちに伝記を読ませてくださいと言うんです。伝記を読ませるときには、年号を覚えるとかではなく、そこにある物語、ストーリーを楽しむ。そのなかからさまざまな人生を知ることで、こうやって生きてみたいと感じるものが出てくると思う。そういう形で歴史に接してもらいたい。そこがなかなかできていないんです。学校だけに頼らず、家庭でも、その部分はどんどんやっていくべきかなと思っています。

東進ハイスクールのカリスマ日本史講師の金谷俊一郎先生にインタビュー! 歴史の楽しさ、2020年教育改革に向けた勉強法を伝授!
先人の業績を知り、すごいと思う。そして先人のおかげで今の私たちがいるんです。いろいろなものが発明され、社会の組織ができて、そのおかげで私たちはこの便利な、平和な世界に暮らしている。まずそれを感謝する。そして、ここからが大事ですが、じゃあ、僕は、私は、この社会のために何ができるだろうと考える。本来、歴史を学ぶというのは、こういうことなんです

ー 金谷先生ご自身は、特にこの人から影響を受けた、という方はいますか?

金谷俊一郎先生
この人、あの人、という人はいなくて、すべてになっちゃうんですよね。私の好きな本にサミュエル・スマイルズの『自助論』という本があります。好きすぎて自分で現代語訳して「現代語訳 西国立志編 スマイルズの『自助論』 」(PHP新書)という本を出したくらいです。ヨーロッパで成功した300人以上の人たちの伝記で、悲しくなったときとか、切ないときとか、目次からは感情を用いて引けるようにしました。辛いとき、家康もここで人質になって苦労したとか、こんな逆境があったけど、逆にそれが良かったんだとか、そういうことが見えてきます。

ー 長谷川さんは影響を受けた人はいますか?

長谷川ヨシテルさん
下の名前が一緒ということで、僕は義輝がきっかけで歴史が好きになったので、本当に思い入れの深い人物です。さきほど義輝の運命に立ち向かうパワーや現状を打開する責任感がかっこいいとお話しましたが、影響を受けても、なかなか活かしきれないですよね。

それじゃあ、どこで活かすかというと、旅行ですね。日本の歴史なら比較的気軽に現場に行けますから。史跡めぐりをしたり、子どもと行っても話が弾んだり、お互いに知っている情報を交換できます。

親御さんは「歴史の勉強をしなさい」とお子さんに言うときがあると思うんですが、ざっくりした指示だとお子さんも何をすればいいかわかりずらいと思うんです。金谷先生がおしゃったように伝記を読んで、誰かひとり興味を持ったり、好きになるといいですよね。僕の場合は、それが義輝という下の名前が一緒だった人なんですが、ひとりを好きになって調べはじめると、そこからいろいろな人に繋がります。そうすると歴史に興味が出てくると思います。

東進ハイスクールのカリスマ日本史講師の金谷俊一郎先生にインタビュー! 歴史の楽しさ、2020年教育改革に向けた勉強法を伝授!
「いろいろ調べてみると、この人とこの人は友だちだったんだとか、道場が同じだったんだとか、けっこうつながっているんですよね」と長谷川さん。講演でもたびたび「この人たち同い年ですね」と、出生年をチェックしていました

金谷俊一郎先生
さっきの講演山岡鉄舟(やまおかてっしゅう)の話をしましたが、どんな人もずっとひとりで何かをしているわけではありません。鉄舟の場合はそこに西郷隆盛がいて、勝海舟がいて、慶喜公がいらしてと、いろいろな繋がりがあり、枝分かれしていく。それが楽しいし、自ずと広がっていくんです。

ー 講演でも「歴史はすべてが解明されているわけじゃない、だからおもしろい」とおっしゃっていましたが、それにもつながりますね。想像する楽しさがあるんですね。

金谷俊一郎先生
最近「教科書の内容が変わってきている」と言いますよね。聖徳太子はいなかったとか。これは戦前から通説として受け継いで教えていたことを、2000年以降、科学的に検証することになり、それによって内容が変わってきているんです。みんなが当たり前だと思っていることも、実は解明されていないということはとても多いし、むしろ当たり前だと思っているものこそ解明されていないということもありますよね。

また歴史というのは、後の人がつくるもの。後の人の評価なんです。たとえば江戸幕府は260年続いたからこそ石田三成はひどい人物になり、明智光秀もそうですよね。でもそれは江戸幕府というフィルターを通せばそうかもしれないけど、実際には、それがすべてではないところもあります。人間は単純に善悪にわけられるものではありませんから、さまざまな視点や角度からひとりの人や事象を見てみるのも楽しいですね。

東進ハイスクールのカリスマ日本史講師の金谷俊一郎先生にインタビュー! 歴史の楽しさ、2020年教育改革に向けた勉強法を伝授!
あたり前と思われていることを疑ってみる、というのは、歴史に限らず必要な考え方。しかし、あたり前すぎて、疑うことすら思いつかないことが多い。多角的な視点も同じですね

2020年の教育改革
子どもたちの歴史の勉強はどうすればいい?

2020年の教育改革で、歴史は日本史と世界史が合わさる「総合歴史」になるようです。子どもたちは、どういう勉強をしたらいいですか?

金谷俊一郎先生
まずは、なんのために教育改革をするのか? それを考えてみるといいと思います。たとえば、「645年に中臣鎌足と中大兄皇子が『大化の改新』をやりました」、こういう教育だからよくないのかな、と。

日本史と世界史を横断するというのは、時代と時代の横断でもあります。この人とこの人は同じ年に生まれているとか、同じ時期に同じところにいたとか、そこからつなげたり広げていく作業ができると、それは一問一答式の歴史の知識ではなくなります。おそらく、そういうことを目指しているであろうと思うのです。

講演でお話しした天正遣欧少年使節(てんしょうけんおうしょうねんしせつ)」だって、当時のヨーロッパのキリスト教の状況があったからこそ必要だったことで、あれより200年前にヨーロッパの人が日本に来ていたら、天正遣欧少年使節は絶対に行っていないですよね。あれはルターの宗教改革以降のヨーロッパのキリスト教、特にイエズス会の傾向があったからこそだからです。そういうところが見えてないと、本当に意味するところはわからないんです。

「天正遣欧少年使節」は純粋な気持ちでヨーロッパに行ったかもしれないけれど、それを派遣したキリシタン大名は、いわゆる貿易の利益を独占したいというだけの理由でキリシタンになっています。横断的に見る視点とはこういうことです。

全体の流れやその意味を理解をした学習がなされているかどうか。それが2020年の教育改革だと思います。だからこそ、なおさらドラマを知ること。お子さんにはドリルの前に伝記を与えるべきだと思うんです。それが2020年の教育改革に対応できるお子さんを育てることにつながると思っています。

ー 理解を問われるとなると、歴史はすべてが解明されているわけではないので、わからない部分を埋めてみましょうとか、そういう問題が出る可能性もあるわけですね。

金谷俊一郎先生
埋めるというか “想像する” ということですね。「天正遣欧少年使節」だけを見るんじゃなくて、なぜ彼らがローマで市民権を得られるほどの歓迎を受けたのか? それは当時、イエズス会がものすごい危機にあったからです。ローマ教皇だって危機だった。だからこそアジアを受け入れるということが重要で、破格の対応だったわけです。これは日本史だけをやっていても理解できません。じゃあ何をすればいいかと言うと、そこにあるドラマを知る、その人たちの生き様を知るということです。

東進ハイスクールのカリスマ日本史講師の金谷俊一郎先生にインタビュー! 歴史の楽しさ、2020年教育改革に向けた勉強法を伝授!
当時、船でヨーロッパへ行くには片道2年ほどの時間が必要でした。「天正遣欧少年使節」の4人は日本を出発してから8年後に帰国しますが、出発したときとはキリスト教を取り巻く環境は大きく異なり、4人はそれぞれ思いもよらぬ人生を歩むことになります。そしてこれが「島原の乱」にもつながり、そのリーダー天草四朗は千々石ミゲルの息子だったのでは? ということも囁かれています。こういうことを想像するのが、歴史の楽しさのひとつです

ー 最後に、おふたりの今後の目標、夢を教えてください?

長谷川ヨシテルさん
教員免許を持っているので塾で歴史を教えていたこともあるんですが、歴史の専門家ではないので、歴史好きの代表として、金谷先生をはじめ専門家の方々と一般の方とをつなげる橋渡しをしていけたらと思っています。

金谷俊一郎先生
私も大学教授ではないですし、ひとつのことを研究しているわけでもありません。でも予備校で20年以上講師をしていて、多くの方にもっと歴史の楽しさを伝えるということをしなきゃいけないのかなと、もっともっと伝えられるようにしたいと思っています。

「教科書はつまらない」と言いますが、教科書ってレジュメ(要約)なんです。会議で使うレジュメだっておもしろくないですよね。だからそういう意味では、教科書がつまらないのはあたり前なんです。そのレジュメに、学校の先生の話とか、自分で調べるとか、そういうものをプラスすることで楽しくなるんです。だからそういう楽しくなるプラスの活動を、どんどんしていきたいなと思っています。

【体験レポート】歴史コメンテーター 金谷俊一郎先生の『教科書には書ききれない! 日本史講座』

【インタビュー】舞台「剣豪将軍義輝 〜星を継ぎし者たちへ〜」に出演している星野真里さんのインタビューはこちら!

東進ハイスクールのカリスマ日本史講師の金谷俊一郎先生にインタビュー! 歴史の楽しさ、2020年教育改革に向けた勉強法を伝授!
「受験だけではなく、今日みたいな講演や、テレビでもお話する機会もいただいているので、いろいろなフィールドで、たくさん話ができればいいな」と、金谷先生

東進ハイスクールのカリスマ日本史講師の金谷俊一郎先生にインタビュー! 歴史の楽しさ、2020年教育改革に向けた勉強法を伝授!金谷俊一郎(かなや しゅんいちろう)

歴史コメンテーター、歴史作家、歌舞伎狂言作者、日本史講師(東進ハイスクール)、一般財団法人日本普及機構代表理事。

1991年より東進ハイスクールにて日本史トップ講師として活躍。近年は特に日本の世界遺産や日本遺産の話、さまざまな地域の歴史の話でも人気を博し、そのわかりやすい説明は「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)などのテレビ番組、ラジオ、講演会でも反響を呼んでいる。また多数の趣味・特技・資格を持ち、駅弁、歌舞伎、舞踊(名取り)、能、狂言、ハーブ・アロマテラピーなどにも造詣が深い。

東進ハイスクールのカリスマ日本史講師の金谷俊一郎先生、れきしクン(長谷川ヨシテル)にインタビュー! 歴史の楽しさ、2020年教育改革に向けた勉強法を伝授!れきしクン(長谷川ヨシテル)

歴史ナビゲーター、歴史作家。元芸人ならではのおもしろくてわかりやすい話しぶりで、老若男女に楽しくわかりやすく歴史の魅力を伝えている。歴史系イベントのMCや講演も行ない、その歴史の知識は専門家をも唸らせる。特に戦国時代、幕末期の知識は歴史の専門家も舌を巻くほど。歴史への造詣が深いことから兵庫県公認ブロガーも務める。軍師足軽というコントライブも毎月開催。NHK大河ドラマ『真田丸』にも出演。

編集後記

年号が覚えられない、人の名前が覚えられない。どこがおもしろいのかがわからない。私自身、歴史が苦手、というよりも嫌い、できない子どもでした。

金谷先生は「名前が覚えにくなと思う方は、何回も何回も声に出す音読をしていただきたい」とアドバイスをしてくれました。「スラスラ言えたからと言って覚えているとは限らないけれど、スラスラ言えるのは頭に入れる第一歩」とおっしゃっていました。確かに、教科書や本を読んでいても、いちいち漢字でつまづいていたら進みません。子どもたちはさらに、テストなどでは漢字も書けないといけないから、何度も書くことも必要で、やっぱりちょっと大変。しかし、おもしろくなってしまえば、このハードルは楽々クリアできるでしょう。

子どもの頃、金谷先生のような方に歴史を物語のように教えてもらっていれば、歴史の魅力に気が付いたかもしれません。歴史が苦手だなと思っている子どもたちが、金谷先生のような方に少しでも早く巡り会えるといいですが、まずはご家庭で、お子さんが興味を持ちそうな伝記を与えてみてはいかがでしょう。私も、興味のある人、この人みたいになりたいと思える人物を探してみたいと思います。

もっと歴史を深く知りたくなるシリーズ
舞台「剣豪将軍義輝 〜星を継ぎし者たちへ〜」

「もっと歴史を深く知りたくなるシリーズ」は、教科書には載らないような歴史上の出来事を興味深くおもしろくエンターテインメントとして表現するシリーズ企画。2014年9月に第1弾企画「マルガリータ〜戦国の天使たち〜」を、2015年10月に第2弾企画「幻の城〜戦国の美しき狂気〜」を上演。

「剣豪将軍義輝」はその第3弾企画となり、初の前後編2部作。前編は2016年12月8日(木)〜12月14日(水)に上演された。戦乱の世を、将軍でありながら無双の剣士として生きた若き足利義輝の爽快な生涯を描いた宮本昌孝氏の長編歴史小説「剣豪将軍義輝」の舞台化。2017年6月8日(木)〜18日(日)まで、EXシアター六本木で上演。

オフィシャルサイト:http://mottorekishi.com