
“昆虫の特別展が見たい!”
たくさんの要望に応えた特別展「昆虫」
ー いよいよ7月13日(金)から特別展「昆虫」の開催ですが、国立科学博物館としては “初” の大規模な昆虫の展覧会なんですね。何度か開催している印象があります。
「特別展」は国立科学博物館の展示の枠組みのなかでは一番大きい展覧会で、それよりも少し小さな企画展では、何度か「昆虫」をとりあげたことがあります。私が関わったものでは2007年に「ファーブル展」を開催しました。
特別展は国立科学博物館の研究者が担当します。いまは 特別展「人体」※ を開催していますが、これまでの特別展に匹敵するものをつくるには、ものすごい労力が必要になり、すべての研究が止まってしまうため、なかなか実現できませんでした。
しかし外からも中からも「昆虫の特別展をやってほしい!」という声が高まり、もうさすがに、そろそろやらないと、と(笑)。
※ 特別展「人体」は2018年6月17日[日]に終了しました。特別展「人体」について、くわしくはこちら。
ー 特別展「昆虫」は誰もが待っていた企画なんですね。
やってほしいという期待が高まって、抑えられなくなりました(笑)。
昆虫採集の社会的な地位はどんどん落ちていますが、「昆虫を見たい、触れたい」というニーズは高まっているんです。研究者もそれに応えたいという気持ちが強まり、ようやく実現することができました。

見どころは子どもたちには特撮3D映像
マニアには世界に1点のホロタイプ標本
ー 今はどのような準備をしている状況でしょうか?
特別展の場合は厚い図録を会場で販売しますが、その校正作業がもうすぐ終了します。これからはその図録をもとに、展示物に付ける説明パネルの準備を行ないます。展示品もだいたい決まりましたが、借りるものもあるので、全部揃うのは開催ギリギリですね。企画も9割くらいは固まりました。
ー 全長2メートルの模型があったり、たくさんの標本があると聞いていますが、今回の見どころは?
巨大模型やたくさんの標本はもちろんですが、ぜひ見ていただきたいのは、小檜山賢二先生の昆虫の特撮3D映像ですね。昆虫を立体的に感じることができますし、拡大・回転、いろいろなアングルから昆虫を観察できます。またCTスキャンでは、いままで見ることのできなかった昆虫の内部も見られます。
特に東京近辺のお子さんは身の回りで昆虫の姿を見る、触れるというのが難しい状況にあるので、ここで昆虫のさまざまな姿を感じてほしいと思います。
専門的な方に向けての見どころは、日本最大の甲虫「ヤンバルテナガコガネ」の世界に1点しかないホロタイプ標本や、日本初公開となる、絶滅してしまったアリエノプテラ目(もく)が閉じ込められた琥珀(こはく)。また今回の特別展のためにアマゾンを取材して、生きている昆虫の映像を撮ってきました。標本もあるので、それも見どころになると思います。
また新種の昆虫に名前を付けることができる、『新種昆虫ネーミングキャンペーン!「君の名が。虫の名に。」』も実施します。来場者でキャンペーンに応募したうちの1名に名前を付けてもらいます。新種として認定されれば、その名前がこの昆虫の名前として永遠に残ります。

ー 特別展「昆虫」監修者の言葉で「昆虫から多くのことを学びとることができる」、とありますが、子どもたちは昆虫からどういうことを学べますか?
昆虫は体の “つくり” の面では、われわれ人間とは一番隔たったところにいる生き物なんです。でもそういう生き物も、私たちと同じように命があり、雄雌があり、物を食べて生きている。まずはそういう存在があるということを実感してほしいですね。
そして昆虫は生き物なので死んでしまいますが、そのときに生命とは何か、生命の実態や、死んでしまったらもとに戻らないということを、大人でも意識をしないと忘れてしまいがちなので、学ぶというよりも、体感してほしいですね。

昆虫を取り巻く環境は悪化
いまある自然を守り、育てる
ー 野村先生は佐賀県武雄市の生まれ育ちです。子どもの頃と今とでは、昆虫を取り巻く環境は変わっていますか?
大いに変わっていますね。武雄市は普通の田舎ですが、そういうところでもどんどん都市化していて、私が子どもだった40年前と比べて、見られなくなった昆虫はたくさんいます。これは日本中どこも同じだと思います。
ー 絶滅ではなくて、近くからはいなくなったということですか?
絶滅危惧種になっている昆虫もたくさんいます。典型的なのはゲンゴロウとかタガメ、水環境が悪化しているので、水生昆虫は絶滅の危機に瀕しているものは多いですね。
我々としては、ことあるごとに子どもたちには自然に触れる機会を与えています。今はもう与えてあげないと、触れる機会がなくなってきているんです。
ー 昆虫採集の道具「ノムラホイホイ」を考案したり、先生も子どもたちにそういう機会を与えていますね。
我々が子どもだったころは、カブトムシはクヌギの木を蹴飛ばせば上からボタボタ落ちて来ました。でも今はどれだけ蹴っても落ちて来ない。だからこういう技を使って効率的に採らないと、昆虫に触れることができません。子どもの技では昆虫を捕まえることが難しくなっています。
ー それは昆虫が捕まらないよう賢くなったということではなくて、やはり数が減っているということですか?
減っているし、我々の身近で繁殖することができなくなったからですね。我々に身近な虫の多くは “里山” の昆虫なんです。里山は都市部と、そこから離れた奥山の中間にあり、昔は里山ゾーンが広くてたくさんありました。東京では武蔵野の里山がどんどん狭くなり、いまはもうなくなりつつあります。都市部からいきなり奥山になってしまう(東京なら奥多摩、高尾山から先が奥山)。カブトムシは典型的に里山に生息する昆虫なので、住処(すみか)がないんですね。
ー 里山を広げていく努力をしなければならないですか?
いや、広げることは難しいので、いま残っている里山を保存しないといけない。里山というものの価値を再認識し、それが破壊されるのを止めないと、狭くなるのをなんとか防がないといけません。
ー 明治神宮には100年くらい前につくられた人工の森があって、いまではたくさんの生き物が住んでいます。
明治神宮の森も相当長い年月をかけて育てていますし、我々が調べている皇居とか、港区の自然教育園とか、それらは都市のなかで守り育てられてきた森ですよね。そういう領域も意識して守っていかないと、どんどんダメになっていきます。世界中の名のある都市を見ても、やはりそういう自然のエリアは非常にうまく運営されていますし、長い年月守られています。

1ミリに満たない虫が世界中で研究
アリヅカムシから世界に広がる
ー 野村先生が昆虫好きになったきっかけは?
私はいま55歳で、ポスト団塊の世代です。この年代の人は子どものころ、里山や野山で遊んでいました。都会の人はいろんなおもちゃがあったと思うけど、田舎の子にはありませんでした。なので昆虫を集めたり飼ったりがあたり前で、そのなかでおもしろみを見出したというのはありますね。小学生の夏休みの宿題も昆虫標本をつくって提出するというのが定番でした。
小学校、中学校、高校のときに佐賀昆虫同好会という昆虫研究サークルに入っていました。当時は小中学校の理科の先生がそのサークルで指導していて、ここに行くとどんな昆虫がいるとか、珍しい虫を捕まえられるとか、いろいろなことを教えてもらいました。昆虫採集の楽しさを知ることができましたし、珍しい虫をとると「よくやった!」「どんどんやりなさい!」って褒められて、いい気になっていましたね(笑)。
ー いま先生はアリヅカムシの第一人者ですが、それはいつからですか?
小学校の5年生くらいにチョウチョが好きになって、チョウのマニアみたいになっていました。チョウをとりに行くと甲虫もとれるので、甲虫も集めていました。
アリヅカムシは高校を卒業するくらいのときに、アリヅカムシを国内で唯一研究している先生が佐賀に引っ越して来て、その人に教えを受けて、アリヅカムシをはじめて見ました。体長1ミリくらいの小さな、「なんだこれ?」というような虫なんですが、それが世界的に研究されているということを知って驚くんです。で、自分でも見てみよう、まずは捕まえてみようと。いままでチョウチョやいろんな虫を捕まえていい気になっていたから、自分で捕まえられないのはくやしいんです。そして捕まえはじめたら、どんどんハマっていったというわけです。

ー これだけ小さいと、アリヅカムシがいそうなところを漁ってふるいにかけて捕まえるんですか?
そうですね。でもふるって落ちて来てもすぐには動かないんです。死んだふりをしてる。で、“じぃー” と見ていると、ジワジワジワと動き出して来て、そこでようやく「あーいた!」とわかるんです。小さすぎて指では掴めないから吸虫管というスポイトみたいな道具を使って捕まえるんです。
側から見ると虫だかゴミだかわからないものを選別しているように見えますが、アリヅカムシかどうかは勘でわかりますし、研究者によっては “オーラ” でわかると言いますね(笑)。
新種がいてもすぐにはわかりません。でもこういう虫ってまわりにいっぱいいるんです。みんな気が付いていませんけどね。
ー アリヅカムシはその名のとおり蟻塚をつくるんですか?
アリの巣に居候しているからアリヅカムシと言われるんです。でもそれもアリヅカムシのなかの1割くらいで、あとは自由生活をしています。
アリヅカムシの標本の下にアリの標本もあるものがありますが、そのアリの巣の中にいました、ということです。アリヅカムシにとって蟻塚は家のようなもので、どこに食べ物があって、どこが安全か、どこがヤバいかは熟知しています。

ー 「ヤバい」というのは、アリから攻撃されるんですか?
そういうこともあります。普段は共生していますが、当然巣のなかにはタブーのところがあって(笑)、そういうところに入ると攻撃されちゃう。
ー アリにとって共生のメリットは?
アリが好む匂いや蜜みたいなものを発散するので、アリにとっての嗜好品のようなものと捉えています。
ー そういうアリヅカムシの楽しさを、佐賀にいらした先生から教わり、勉強すると日本で2番目になれるという思いはあったんですか?
その先生は新種を見つけて解明するということをされる方ではなかったので、名前がついていない虫がたくさんいたんです。でもそれだと何もはじまらないので、新種に名前をつけて、こういう虫がいますよということからはじめました。
ー 名前を付けると世界中の研究者とつながったり、そのつながりが楽しいというのはありますか?
アリヅカムシを研究している人は世界にもあんまりたくさんはいませんけどね。でもつい先頃までコペンハーゲンでハネカクシの国際会議というのをやっていて、そこでアリヅカムシの研究者と情報や標本を交換したり、動物学博物館のコレクションを見せてもらって標本を借りたり、そういうことはやっていますね。アリヅカムシはハネカクシの仲間なので。
ー この小さな虫から世界につながるんですね。
つながります。こんな小さな虫から。
【プレゼント】2018年7月13日(金)から国立科学博物館で開催!特別展「昆虫」ご招待券プレゼント!
【イベント開催概要】特別展「昆虫」2018年7月13日(金)〜10月8日(月・祝)まで国立科学博物館で開催!


昆虫学で食べていけるのか?
まわりには誰ひとりいなかった
ー 研究者になろうとしたのはいつ頃からですか?
九州大学に入って、1年、2年目くらいですかね。九州大学は昆虫学では非常に有名で、たくさんの研究者がいて、最前線を走っている大学です。昆虫学教室というところで最先端の研究をしていると聞いたので、そこを目指して勉強や昆虫採集をしていたら、どんどん研究者の道に、運よく進むことができたんです。
ー でも高校生のときに、昆虫の勉強がしたいと、九州大学を選んだんですよね?
それはそうですね。そうではあったわけなんですけど、当時の世間の状況から言うと、インターネットはない、情報源は本やニュース、新聞くらいしかなくて、昆虫学で食べていけるかというのはまったくわからなかった。少なくとも私のまわり、佐賀県で昆虫で食べているプロはひとりもいなかった。
九州大学に入ってはじめて、昆虫学で身を立てている人と会って話を聞くことができたんです。だから入学前に方向性があったとはいえ、研究者というのは全然見えていなかったですね。
九州大学で助手をしていたときに、たまたまアリヅカムシに近いところを研究されている先生が国立科学博物館にいらして、それでは自分が退官したあとに来なさい、という感じで呼ばれて、いまに至ります。
ー アリヅカムシに導かれているみたいですね。
まぁ、それほどでもないですが、たまたま運よく、ですね。

昆虫を学んで仕事に
「バイオミメティクス」の可能性
ー いまも昆虫好きの子どもはたくさんいますが、そういう子どもたちが将来昆虫で食べていく道はありますか? 先生がいま研究されている「バイオミメティクス(生物模倣技術)※」はどうでしょう?
我々がプロになるかを考えたとき、いわゆる昆虫学の出口って、応用分野に何があるかというと害虫防除しかありませんでした。農林業のなかで被害が出る害虫を抑えて生産を活発にしていくという道ですね。だから農業試験場や林業試験場とか、そういうところがひとつの就職口だったんです。しかしいま、国内の農林業は残念ながらそれほど盛んではありません。
一方、これまでほとんど活用される機会のなかった工業、テクノロジー、精密機械、材料科学とか、そういう方への応用の道が「バイオミメティクス」を中心に開けてきました。だからそういうところを模索していけば、昆虫学の出口として食べていけないことはないと思っています。
昆虫は人間から一番遠い生き物ですし、世界中に展開した多様性を持っているわけです。しかも人間よりもはるかに長い間、地球上に生きています。生き残る術を昆虫に学べば、人間もこれから先、持続可能な人生を送っていけるんじゃないかと、そういうところが昆虫とバイオミメティクスを結びつけるモチベーションになるんじゃないかと思っています。
※ バイオミメティクス(biomimetics/生物模倣技術)
長い年月を経て進化した生物は優れた機能や体構造を持っており、そこからヒントを得たり、模倣することで新しい技術の開発やものづくりに活かそうとする科学技術。たとえば蚊の口吻を模した痛みの少ない注射針、チョウの構造色からの染料の必要ないさまざまな色のシート、シロアリの蟻塚から空調システムなど、すでに身のまわりで使われているものも多い。

昆虫は進化して小さくなっている
人間の進化のヒントにも!?
ー 先生の研究しているアリヅカムシは、そういうバイオミメティクスの要素はあるんですか?
今のところ特に大きなものはありませんが、アリヅカムシを詳細に見ていくと、アリヅカムシサイズの昆虫と、たとえばカブトムシくらいの大きさの虫とでは、違ったところがあるなと。で、昆虫全体としても、大きなものから小さいものに進化していく筋道がありそうです。
昆虫は3億年以上前の古生代の石炭紀では翅(はね)を広げると80cmくらいの巨大なトンボとかいたわけです。今とは環境が違うので昆虫も違っていてあたり前ですが、現在生き残っているのは小さい昆虫ばかりで、一番大きなものでもナナフシの仲間で30cmくらい。しかしアリヅカムシのような小さい昆虫はたくさんいて、むしろ繁栄していると見て差し支えないくらいなので、小さくなることが地球の環境のなかで生き残る術であったのではないかなと思っています。
大きな昆虫にとっての地球環境と、小さな昆虫にとっての地球環境を比較すると、これから昆虫はどうなっていくか、人間がどうなっていくか、というものの示唆が得られるんじゃないかなと思っています。
ー 昆虫は全体的に小型化に向かっているんですね。
だと思いますね。もともと昆虫はあまり小さくなれない生き物だったんですが、進化の過程でどんどん小さい方へ小さい方へ進んでいるのは明らかです。
では小さくなることに何のメリットがあるのかというと、体が小さくなると寿命が短くなります。寿命が短いということは、一定期間の間に世代を繰り返す回数が多くなります。そうすると進化のスピードが速く、そして自由度が広がるんです。いろいろな形に進化できる可能性が広がる。それと体が小さくなると食べ物が少なくてすみます。そういうメリットがあるんですね。
ー その個体ではなく、種としての生存なんですね。
だから結果論かもしれませんが、小さい昆虫が生き残ってきた。小さいから生き残ってきた、ということなんだろうと思っています。

今度は我々が若い人をサポート
おもしろさを伝え、知ることで興味を
ー 研究を続けているモチベーションは何ですか? ほかの虫を研究しようと思ったことは?
調べれば調べるほど新しい謎が出てきて、それを解明しないと先に進めない、ということが出てくるので、底なし沼じゃないけど、突き詰めないとすまなくなってきますよね。謎は明らかにしたいですし。
ー 研究もしくは先生のゴールはどこになるでしょうか?
アリヅカムシの研究をはじめたころは、日本のアリヅカムシの全貌を明らかにしたいと思っていました。それがゴールだったわけです。しかし調べれば調べるほど、どんどんどんどん名前のついてない種類が出てきて、これはもう自分の一生をかけても全部解明することはできないなと、進んでも進んでもゴールも動いていくような、そんな状態です。
ー 次の世代、次の研究者へつなげていくんですね。
でも、なかなかアリヅカムシを研究したいという若者は出てこないんですよね。どうしたらいいでしょう?
カブトムシやクワガタが好きな若い人はいっぱいいるんです。でもなぜか、こういう小さい虫を研究しようという人は、そんなに出てこないんですよ。途中で止めちゃうとか。
私が昔、佐賀昆虫同好会でサポートしてもらったように、今度は我々が若い方をサポートして、これもおもしろいよ、これもいいよと伝えていかなければいけないなと思っています。そういう場をつくらないといけないですし、この特別展「昆虫」も、その一環になるかなと思いますね。
アリの巣の中で共生しているアリヅカムシのような昆虫が展示されることって、日本ではほとんどないんです。だから展示して見ていただくことで、そういうものがあるということを知ってもらって、自分でも見てみようと思ってくれると、おもしろい方に行くんじゃないかな。若い人がより多様な方、小さい昆虫に目を向ける機会になればいいなと思っています。

ー 蟻塚は知っていましたが、そのなかに共生しているこんな小さな虫がいるとは、はじめて知りました。こういうことを知る場があって、おもしろさ、魅力が伝わると、若い方や子どもたちも調べてみようとか思うかもしれないですよね。
以前、クマムシを研究している堀川大樹博士にお話をお伺いしたことがあるのですが、クマムシも身近にいる虫なんですよね。でも種によって食べているものが異なり、また何を食べているのかがわからなくて飼育するのが大変だそうです。
しかし小学1年生の7歳の男の子が野外から集めたクマムシにさまざまなエサになりそうなものを与えて、ドライイーストだけで育てられるクマムシを見つけてニュースになったと教えてくれました。アリヅカムシなどほかの小さいな虫でも、こういう子どもが増えるといいですよね。
クマムシはアリヅカムシよりはるかに小さいから、さらに大変ですよね。アリヅカムシも、おもしろさではクマムシに決して引けはとるような虫ではないので、どうやっておもしろみを伝えるか、見出してもらえるようにするか、でしょうね。
ー 先生の今後の目標、夢は?
世界中で昆虫をとることができるようになりましたが、あらゆるところ、というわけではありません。こんなところで、というところで虫をとってみたい。すでに人が入ったところはおもしろくないから、まだ誰も気が付かなかったところとか、まだ誰もやったことのない採り方とか、採り方が違えば、違うものが採れますから。
“今までに出会ったことのない虫に出会いたい”、ということですかね。新種ではなく。それはまだ名前がついていないというだけで、私のところにたくさんいますから。新種はこれ以上、増えなくていいですね(笑)。
【プレゼント】2018年7月13日(金)から国立科学博物館で開催!特別展「昆虫」ご招待券プレゼント!
【イベント開催概要】特別展「昆虫」2018年7月13日(金)〜10月8日(月・祝)まで国立科学博物館で開催!

インタビュー後記
野村先生に特別展「昆虫」を楽しみにしていることを伝えると、「プレッシャーなんですよ」と微笑んだ。特別展「昆虫」を待ち望む人、期待している人は多い。小学生からマニアまでと対象も幅広く、何を期待しているのかもそれぞれだ。相当なプレッシャーを感じているだろうことは容易に想像できるが、その一方で、今までの研究成果、そして多くの人に気がついて欲しい、小さな虫たちの存在を紹介できる喜びもあるように感じました。
今回のインタビューでは、昆虫好きな子どもたちが、将来、昆虫を仕事にすることで食べていくことができるか、それも聞きたかったひとつでした。その答えのひとつが「バイオミメティクス」。社会や環境に役立つことはもちろん、たとえば垂直のツルツルしたガラスでも登れるヤモリの足の手袋がつくれれば、子どものころに夢見たアニメやSFの世界を実現できます。AIとの融合もあり、この分野は今後ますます楽しくなりそうです。
昆虫は私たちにたくさんのことを教えてくれます。持続可能な地球環境は、昆虫から学べるのかもしれないし、小さな虫たちが、多くの問題解決のヒントを持っている可能性がある。そう考えると、この昆虫はどんな能力や習性を持っているのか、いろいろな昆虫と接するのが、さらに楽しくなってきます。
野村先生は大変そうではありましたが、特別展や昆虫の話をしているときは、とても楽しそうでした。プレッシャーをかけてしまいますが、特別展「昆虫」、とても楽しみにしています!
野村周平(のむら しゅうへい)
1962年 佐賀県武雄市生まれ。九州大学農学部卒、同大学院修了。農学博士。特別展「昆虫」監修者。1995年から国立科学博物館。陸生無脊椎動物研究グループ・グループ長で、おもにアジア周辺の土壌性ハネカクシ上科甲虫の研究を行ない、アリヅカムシ研究の第一人者。昆虫に関する「バイオミメティクス(生物模倣技術)」にも取り組んでいる。
この夏、国立科学博物館で初の “昆虫”をテーマにした大規模特別展!
特別展「昆虫」
2018年7月13日(金)〜10月8日(月・祝)まで、“昆虫” をテーマとした特別展「昆虫」が国立科学博物館で開催。世界に一点だけのヤンバルテナガコガネの「ホロタイプ標本」や、本展の開催に向けマダガスカルで発見してきた新種のセイボウ(青蜂)など、他では見られない標本が展示される。またこの新種の名前に、選ばれた来場者の名前をつけて新種登録するキャンペーンも実施。昆活マイスター(オフィシャルサポーター)は無類の昆虫好きで知られる俳優の香川照之さんが就任し、香川さんが提案したコンテンツも展示される。
■会場:国立科学博物館
■休館日:7月17日(火)、9月3日(月)、9月10日(月)、9月18日(火)、9月25日(火)
■公式ホームページ:http://www.konchuten.jp/