「21st キンダー・フィルム・フェスティバル」ゲスト

タレント・中山秀征さんインタビュー!

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現在4人の男の子のお父さんである中山秀征さんは、2013年も8月7日(水)から開催される「21st キンダー・フィルム・フェスティバル」にゲストとして参加し、オープニングとクロージング、そして生で映画の吹き替えをする「ライブシネマ」を、なんと4作品も行う。中山さんと「キンダー・フィルム・フェスティバル」、映画、そして子育てについて、お話をお伺いしました。(インタビュー:2013年7月24日 / TEXT:キッズイベント 高木秀明 PHOTO:水町和昭)

いろいろな映画を観て、自分の感想を言える子どもになってほしい
「キンダー・フィルム・フェスティバル」が、そのきっかけになれば

ー 2013年も「キンダー・フィルム・フェスティバル」にゲスト出演されますが、どのような思いで参加されていますか?

映画にはいろいろな種類やジャンルがあるんだということを、子どもたちに知ってほしいですね。CMで宣伝するような、お金をかけた大作も映画ですが、文化や生活様式、宗教に対する考え方なども異なるいろいろな国や人々から発想が生まれ、つくりあげてくる10分、15分の映画というものもあって、物事にはいろいろな捉え方や考え方があるということ、そしてそこから、自分はどれがおもしろかったかを見つけてほしいと思っています。

「みんながおもしろいと言っているからおもしろい」のではなく、「私はこれがおもしろい」と言える子どもになってほしい。みんなに合わせることが大切なときもあるけれど、自分の意見を言えないと、どこかで苦しくなってしまう。それは大人になって、社会に出てからもそうですよね。なんで私はこの作品が好きなのか、そしてなぜ嫌いなのか、それを「みんながそうだから」という理由ではなく、言えるようになってほしいと思っています。もちろん、そんな説教じみた感じで映画を観てほしいということではなく、「キンダー・フィルム・フェスティバル」が、自然とそういう考え方をするきっかけになってくれるといいですね。

ー 気になっている作品はありますか?

いろいろなものを自分のふるいに入れて、「さぁ私の中に残るものは何でしょう?」、そしてそれは他の人と違っていててもいいんじゃない、という、そういう映画の観方をしてほしい。このフェスティバルに出てくる作品は、すでに多くの人が観て“いい”と思って集められ、発表される作品なので、当然それぞれ魅力があると思います。しかしその魅力はひとつひとつ異なるし、ハッピーなものも、シュールなものもあり、自分に合う合わないもある。

今回は今の時代を象徴しているような、同性愛を題材にしている作品もあり、同性愛の目覚めみたいなものを、子どもたちはどう捉えるのか。大人になって同性愛であることをカミングアウトする方は多いけれど、目覚めは子どものときに訪れている方も多いので、同性愛に対する大人の捉え方と子どもの捉え方は違うかもしれない。同性愛に対する善し悪しではなく、自分はどう捉えるか、自分の考えや他人の考えに気がつくことが大切ですよね。

「子ども向け映画」というジャンルは大人が決めていることであって、大人が子どもたちに何を見せてあげられるかが大切だと思います。でも、大人が観せたい映画と、子どもが興味を持つ映画は違いますし、大人が観せたくないものを観たかったりしますが、いろいろな映画を自分で選んで楽しめる「キンダー・フィルム・フェスティバル」のようなイベントは、子どもたちにとってもとてもいい機会だと思います。

キッズイベント「子どもの夢の叶え方」第3回 中山秀征さん
「子どもの夢の叶え方」第3回 中山秀征さん

見所は生で吹き替えをする「ライブシネマ」
緊張して冷や汗をかいています

ー 今年のキンダー・フィルム・フェスティバルの見所はどこですか?

今までは1作品だけだったのですが、今回は4作品の「ライブシネマ」をやります。みなさんの前で、映像を観ながら生で吹き替えをするのですが、映画の吹き替えって、こうやってやるんだと、なかなか見る機会のない仕事を、ぜひ見てほしいですね。普通の映画館では見られないものですから。

しかし、毎年1作でもとても嫌な汗をかくのに、それが今回は4作。生放送で「1分で何かコメントを」とか「3分つないで」というのは自分の言葉なのでできるのですが、「ライブシネマ」の場合は作品があって、役があって、流れがあって、それを暗い中でやらないといけない。戸田恵子さんや他の共演者の方もいらして、みなさんのテンポやうまさに聞き入っていると乗り遅れちゃうし、僕が間違えると全員がズレちゃうので、恐ろしいですね。神経があっちこっち、いろんなところを気をつけなければならないのでぐったりします。でもそんなところも見ていただければ。こんな緊張感を感じられるのも、キンダー・フィルム・フェスティバルならでは、です。

ー 練習するんですか?

DVDを何度も観て、巻き戻して、練習します。出演者同士が画面に出ているような会話はわかりやすいのですが、たとえばドアの向こうから話すときなどは、話をはじめるきっかけが難しいんですよね。タイミングが少しズレても違和感が出てしまうんです。だからこの映像が現れてから何秒とか、間を記憶するしかないんです。録音の吹き替えだと合図を出してもらえますが、生だと合図はないし、見逃すと映像は流れて行っちゃう。そうするとセリフがなくなってしまう。生にはそういう怖さがあるんです。これから特訓しないと、本番には挑めないですね。

キッズイベント「子どもの夢の叶え方」第3回 中山秀征さん
「子どもの夢の叶え方」第3回 中山秀征さん

キンダー・フィルム・フェスティバルに来たこの1日が
まるごと子どもたちのいい思い出として刻まれてほしい

ー 「ライブシネマ」以外のおすすめは?

子どもたちが吹き替えや映画の撮影を体験することもできますし、ジャグリングなどのいろいろなショー、駄菓子屋さんや世界中のご飯が食べられる屋台村などもあって、親子で1日中楽しめます。

あとは「明日、キンダー・フィルム・フェスティバルに行くんだ」という、前日や道中のワクワク感、そういうものが記憶に残ってくれればいいなと思っています。その日の暑さとか、匂いとかも。何十年後か、その子どもが大人になったとき、「キンダー・フィルム・フェスティバル」に気がついて、「あぁ、連れて行ってもらったな、暑かったな」とか、こんな香りがしたな、とか、その方に子どもが生まれたら、またそんな1日をつくってもらえたらな、と思っています。

人って自分がいい思い出に残っているものを、子どもにも体験してもらいたいと思うじゃないですか。だから、そんな1日にしてほしいですね。子どもって変なことを覚えてて、帰りに食べたラーメンがおいしかったとか、「え、そっち?」というような。でもそういう思い出のひとつになってほしい。そういうのって、すごく精神衛生上いいことだと思うんですよね。僕が子どものとき、家のそばにキンモクセイがあって、すごく嫌なことがあってもその香りを嗅ぐと、嫌なことを忘れられたんです。だから今でもキンモクセイの香りがするとその当時の思い出や感情が鮮やかに蘇るし、気持ちが穏やかになりますね。

ー 中山さんの最初の映画の思い出は?

群馬県藤岡市という田舎だったので映画館はひとつしかなく、そこで観た「東映まんがまつり」が最初の映画体験ですね。確か5本立てだったかな。「マジンガーZ」とかの絵の看板があったような気がいます。下が土で、大きなスクリーンと音の大きさの衝撃は、今でも覚えています。楽しさもあったけど、暗闇の怖さみたいなものもあったし、テレビで観るものと映画館で観るのとはまったく違う、特別なものでしたね。いつ、誰とどんな作品を観たかなど、そんなことも全部思い出に残っています。「キンダー・フィルム・フェスティバル」もそうですが、映画館で映画を観るということが、子どもたちにいい思い出として、少しでも刻まれればいいですね。

キッズイベント「子どもの夢の叶え方」第3回 中山秀征さん
「子どもの夢の叶え方」第3回 中山秀征さん

子どもと一緒にいられる時間は意外と短い
忘れてしまうことも多いので、もっとよく見ておかなきゃ

ー お子さんたちはちょうど夏休みに入った頃だと思いますが、家の中は普段と違いますか?

4人もいるので朝はいつもにぎやかですが、学校のあるときはもう少しあわただしい感じかな。でも6〜7時にかけて、ひとり、ふたりと学校へ行き、少しずつ静かになっていきますが、今は夏休みなので、のんびりした感じが続いていますね。

大きくなると親よりも友だちとか仲間になってきますから、親が思っているよりも子どもと一緒にいられる時間って短いんですよね。もし一人っ子で長男だけだったら、そろそろ家の中が静かになってしまいますね。小学生時代の運動会は6回あるけど、だんだん「6回も」じゃなくて「6回しか」という思いになってくる。まだ小学生が2人いるから少し余裕があるけど、子どもと一緒に何かをやることがだんだん少なくなってくるのは、ちょっと寂しいですね。口数も少なくなり、距離も出てくる。もちろんそれは成長の証でもあるのですが、小さい時期に、もっとよく見ておかなきゃと思っています。

4人の男の子の子育て、同じように育てても、ひとりひとり、みんな違う

ー 4人の子育ては大変ですか?

やっぱり大変ですよね。育児でお困りの方がいらっしゃるのもわかります。夢中だったし、男親だからかもしれませんが、いろいろやってるはずなのに、意外と細かいところは覚えていないのも寂しいですね。いつ歩いたかな、とか、下になるほど覚えていない。

うちは次男が生まれて2年もしたらもう赤ちゃんがいて、特に次男は静かで大人しい子だったから、赤ちゃんの方に気がいってしまって、下の子どもになるほどそうなりますよね。でも親から変な力が抜けていいのかな、とも思います。あまり神経質になっても子どもは辛いかもしれないので。隙をつくるというか、4人もいるといっぺんには見られないからどのみち隙ができます。こっちを怒ってるときに、こっちではいたずらしていたりしますから。でも、兄弟がいてよかったな、と思うところはそういうところですね。ひとりだと想いが強くなってしまい、思い通りにいかないと子育てに失敗してしまったかな、なんて思ってしまうかもしれませんから。

でも親の育て方ではなくて、子どもってひとりひとり本当に違うんですよね。同じように育てているのに、4人全員性格もタイプも違いますよ。ひとりも同じじゃない。同じにはならないんだな、と実感しましたね。勉強しろって言ってもやらないヤツはいるし、言わなくても勝手にやってるヤツはいる。雑な子も、心配性な子もいる。よくその状態でテストに臨んだな、できなくて当たり前だと、でもまったく気にしていない子がいる一方、心配性で言われなくてもテストがあるときは遅くまで準備している子もいる。みんなまったく違いますね。

キッズイベント「子どもの夢の叶え方」第3回 中山秀征さん
「子どもの夢の叶え方」第3回 中山秀征さん

ー 中山さんは、どんな子どもでしたか?

僕には兄貴がいて、兄貴がいつも「勉強しろ」と怒られていて、でも僕からすると、兄貴は勉強していないんじゃなくて、間が悪いんです。セルフプロモーション下手というか、親の見えるところでやってないんですよ。だから怒られちゃう。今までずっと勉強してたのに、たまたまテレビを点けたときに親に見られちゃうとか。親の顔色を見れば、「今それやったらダメだろ」と、なんでわからないのかなと思うときはよくありましたね。

やっぱり下の子は上を見て育つので、僕もそうでしたが、そういうところはうまいんでしょうね。下にいけばいくほど甘え上手だと思います。一番上の子は甘えなくても甘えられた時期があったから、あまり工夫をしないし、兄貴もそうだったけど、けっこう頑固。僕とは正反対でしたね。

僕は兄貴を見ていたし、遊びたいし、文句も言われたくないから、夏休みの宿題なんかは1週間くらいでダッシュで終わらせていました。今の僕の子どもの中で言うと、3男は、そこらへん僕に似ているかな。

待っていたって何も来ない、自分から動いていかないと

ー バラエティーからドラマ、司会と、活躍の場を広げ、しかも第一線でずっと活躍されています。その秘訣は何ですか?

好きで好きで入った仕事だからですかね。苦しさとかないんですよね。次から次へとやってみたいことはあるし、飽きないんですね。テレビ、ドラマ、バラエティ、司会、やってもやってもゴールがないんです。それと、いい仕事ができた、視聴率がよかったと思っても、その日はちょっと満足するけど、その気持ちはすぐに冷めちゃう。テレビの仕事って喜びが儚いんですね。だからすぐに次を求めるのかもしれない。いい作品ができて、それでしばらく楽しめる、というのは30年やってるけどない。騎手の武豊さんも、ダービーで勝ったその日は嬉しいけど、次の日には来年のダービーのことを考えているとおっしゃっていました。野球選手もそうだと思いますね。また明日できるかどうかわからないという不安。満足はできないし、なんべんやっても不安だし、どれくらい用意しても不安。だから続けられているのかもしれないですね。

ー 方向性に悩んだり、挫折したことはあるんですか?

東京に出て来た高校生くらいのときが一番辛かったかな。僕はスカウトされたわけでも選ばれたわけでも、求められているわけでもないのに、とにかく東京に来れば仕事があると思ってた。でも現実はそうじゃない。そういう現実に直面して、橋から飛び降りちゃおうかな、なんて思ったこともありました。

でも、来ただけじゃダメだって気がついたんですね。ゴールだと思っていた場所は、スタートですらなかった。それに気がついて、それからはオーディションなどを片っ端から受けました。今の事務所もそれで巡り会ったんです。原宿を歩いてはスカウト待ちなんかをしていましたが、待ってても何もない、自分から動かないと。それは、今でもそうですね。

インタビュー後記

インタビュー当日はお子さんたちがちょうど夏休みに入ったばかりの頃。「家の中は、普段とちょっと雰囲気が違いますか?」の質問に、「今朝、下の2人の子どもと一緒にお風呂に入ってから来ました」と、学校のある時期とは少し異なる今の時期を楽しんでいらっしゃるお返事でした。

一番上のお子さんは中学3年生、2番目のお子さんは小学4年生で、今日はそれぞれ野球部の練習と学校のキャンプとのこと。お子さんがまだ小さい、子育て真っただ中のときは、その大変さが延々に続くよう感じられてしまいますが、後から振り返ると、子どもと一緒にいられる時間って本当に短いと実感しますね、と、下のお子さん2人がまだ小学生で、少し余裕があるとしながらも、そのことを考えると、ちょっと寂しくなるようでした。

映画やお子さんについてのエピソードをたくさん、しかもとても楽しくお話しいただき、その場を自然に盛り上げるのが本当に上手で、思わず観客のような立場でお話に聞き入ってしまうことがたびたびありました。中山さんの子どもの頃の夢や、おそらく夢を実現しつつある今に至るまでのお話を、もう少しお伺いしたかった。ぜひまた、お願いします。

20130724_interview_nakayama_hideyuki_prof中山秀征

1967年生まれ、群馬県藤岡市出身。第30回 ベストファーザー イエローリボン賞 受賞。CX「ライオンのいただきます」でデビュー。ソロとしての活動を開始すると明るくスピード感あふれるトークで数多くの番組に出演。現在MCを務めるNTV「シューイチ」、CX「ウチくる!?」や「ほこたて」などのレギュラーに加え、2013年4月からNHK「仕事ハッケン伝」と「双方向クイズ 天下統一」がスタート。