
絶妙のタイミングでの追い風!
いよいよ映画『瀬戸内海賊物語』が公開!
ー 映画『瀬戸内海賊物語』の全国公開が近づいてきましたが、今はどんな気持ちですか?
大森研一監督:撮影したのが2年前、昨年には完成し、公開時期を見ていました。2年越しになったので少し長かったですが、春というスタートの時期に公開できることになってよかったです。国際映画祭などにも出品していきたいですね。
柴田杏花さん:公開はまだかなと思っていたので、緊張よりも、今はとてもワクワクしています。ひとりでも多くの方に観ていただければと思っています。
ー 私も宝の地図というものにドキドキした世代です。子どもたちを主人公に、宝探しの話を書かれたのはなぜですか?
大森研一監督:幼心に監督をやりたいなと思ったときに観ていたのが、スティーブン・スピルバーグ総指揮で1985年に公開された、子どもたちが宝探しの大冒険に挑む『グーニーズ』※1 という映画でした。そのような映画を、自分の地元(愛媛県)で、瀬戸内の歴史、村上水軍を題材とし、すべてがつくり話ではなく、史実も絡めながら冒険映画を撮りたいと思っていました。一昨日(4月7日)は『グーニーズ』の続編を製作するという発表があり、昨日は村上水軍を題材にした「村上海賊の娘」が本屋大賞を受賞するというものすごいタイミング。この波に『瀬戸内海賊物語』も乗れればいいなと思っています。
※1『グーニーズ』(1985年6月7日公開)
落ちこぼれ少年団「グーニーズ」が、ある日偶然、屋根裏で17世紀の古地図を発見。なんとそれは海賊ウィリーが隠した宝の地図だった! 彼らは早速宝探しの大冒険に挑む。原作・総指揮:スティーブン・スピルバーグ、監督:リチャード・ドナーの大ヒット作品。

ー 今回の主役は1,027名の中からオーディションで柴田杏花(きょうか)さんを選びましたが、最後の数人の候補の方は、おそらくどなたも実力的には差のない人たちだと思います。何が決め手で柴田さんになりましたか?
大森研一監督:演技テスト最後の方は、どなたも実力的には均衡していました。柴田さんに決めたのは、目の力や、撮影は暑い夏にすべて地方ロケで行なわれますので、その過酷な状況を一緒に乗り切っていけるかというところは見せてもらいました。また、台本では主人公の楓(かえで)の性格はすでに決まっていましたが、柴田さんなら、柴田さんなりの楓を撮影しながら一緒につくっていけるかなと感じました。それが柴田さんに決めたポイントですね。
ー 映画ではショートカットでとてもボーイッシュですが、今日は髪も長く、服装も女の子らしいですね。ショートカットは役づくりでしたか?
柴田杏花さん:もともと髪は長かったので、楓になるためにショートにしました。楓とは性格的にも自分と違うところもありましたが、髪をショートにして、小豆島で生活をしはじめたら、あまり深く考えなくても自然と楓になっていくことができました。自分が楓に移り変わっていったと言うか、自分の素を出しても楓になれたので、素を出していきました。

ー 楓はとても活発な女の子ですよね。柴田さんと楓の違うところ、似ているところは?
柴田杏花さん:おおざっぱなところは違うけれど、負けず嫌いなところは似てるかなと思います。私と同じくらいの年齢の子がいろいろなところで活躍していて「すごいな」と思いますが、でも自分もそうなれるよう頑張らないと、と思います。
ー 監督は、柴田さんのどんなところに“負けず嫌い”を感じましたか?
大森研一監督:そうですね(笑)、でも相当がんばってもらったかな。特に大声を出したりとか、理屈ではない“元気さ”や“パワー”で物語を引っ張ってもらわないといけない場面も多々ありましたので、たとえば気合いの一喝で進めていくような場面とか。おそらく普段はそんなキャラじゃないというのはわかっているんだけど、海で全力で叫んでもらったり、自分なりにそういうのは努力して楓を掴んでいってくれたのかな、と思います。
ー 海のシーンが多く、また波もあったりして、撮影は大変だったのではないですか?
大森研一監督:渦巻きに巻き込まれるシーンはCGを使っていますが、潮の満ち引きなどは、潮見表を見ながら1分刻みで撮影していました。満ちてくる海で洞窟の穴が塞がってしまうのは、自然の海そのままです。最初は足下にあった海が、最後はカメラをかついで撮影したり、海のシーンでは、潮の満ち引きは物語通りに、同じ時間軸で進みましたね。撮影中はひとり3個くらい携帯を水没で壊していて、かなり大変でした。
柴田杏花さん:後半はほとんど海の中や海の上での撮影だったので、かなり体力を消耗しました。最初の頃は大変な撮影だと思いましたが、日が経つに連れてどんどんこの状態が当たり前のようになっていって、楽しくて、最後の方は終わってしまうのがとても残念でした。
ー 楓は両親、特に働く父親の姿を見て、その胸中を察します。実生活でも、そういうご両親の姿を見たことはありますか?
柴田杏花さん:お父さんは仕事で夜が遅く、でも朝早くには出かけるという生活で、家族のために働いているという姿を見ると、とてもありがたいですし、尊敬という部分もあります。最近はお父さんも忙しくて、私も仕事があったりして、会う時間が少なくなってきてしまいました。

何かに一生懸命になれば
その努力は夢を叶える糧になる
ー 柴田さんが女優を目指すきっかけは?
柴田杏花さん:ミュージカルや舞台をやりたくて、ミュージカルスクールに通っていました。でもそこにいる子たちはみんな、テレビや映画の仕事もしていて、それを見て、私もやってみたいなと思って、事務所に応募しました。
ー今回の映画では初の主演に抜擢されましたが、活躍するためにどんなことを心がけていますか?
柴田杏花さん:仕事以外のことで、何か一生懸命になることができれば、その努力はきっと仕事にもつながる、仕事でも発揮できると信じています。一番は努力をすることが大切だと思っています。私はけっこう、いろいろなことにチャレンジをしたい性格で、仕事に限らず何でも努力をして、前に進んでいくのが大切だと思っています。
ー 監督が映像の世界に入ったきっかけは?
大森研一監督:小さい頃から映画をよく観ていました。親に映画に連れて行ってもらったり、でも映画館はなかなか行けなかったのでビデオを借りてくれたりして。それが映画や映像に興味を持ったきっかけですね。『グーニーズ』もそんなときに観た1本です。漠然とですが、映画などをつくる側にまわって、観た人が笑顔になって映画館を出て行くというイメージがありました。そういうことを、多くの人に与えられるようになれればいいなと思っていました。
ー 監督になるために、子どものときにできることは何ですか?
大森研一監督:当時の僕はビデオテープがすり切れるくらい何度も映画を観ていたので、今だったらDVDが割れるくらい(笑)、映画を観るのがいいと思います。常に別の作品ではなく、好きな作品を繰り返し観てもいい。作品を観ることで養われるものがたくさんありますし、引き出しも増えると思います。物語をつくることを目指すのであれば、物語をつくる組み立て方も育まれます。まずは、たくさんの作品を観る、何度も観るといいと思います。

楓の、あきらめない姿
最後までやり通す心を感じ取ってほしい
ー 映画『瀬戸内海賊物語』の見どころ、注目してほしいところは?
大森研一監督:ここは柴田さんが一番うまく言えるかな(笑)。
柴田杏花さん:ひとつひとつを観てもらいたいというはもちろんあるんですけど、楓のあきらめない姿や、一度決めたら最後までやり通す心みたいなのを観て、感じとってもらえたらと思います。
大森研一監督:そうですね。あきらめない気持ちがあって、絵的なことを言えば、瀬戸内の独特の風景や、自然の中で遊んだり、外だからこそ味わえる感性みたいなものを観ていただけたらと思っています。特に瀬戸内特有の潮流にはこだわりました。どこの海で撮っても同じではなく、瀬戸内にしかない海、自然を観てください。幸運にも、撮影の1ヵ月間はほとんど雨が降らなくて、美しい瀬戸内の景色も楽しんでいただけると思います。
ー 柴田さんはじめ、子どもたちをとりまく共演者の方々が豪華なキャスティングです。共演者の方はどのような視点から選んだのでしょうか?
大森研一監督:子どもが主役ということもあるので、存在感は示しながらも、物語の中はもちろん、撮影の現場などでも、子どもたちを見守ってくれる、包み込んでくれる方々にお願いしました。実際子どもたちをすごく優しく包んでいただけて、お父さん役の内藤剛志さん、おばあちゃん役の中村玉緒さん、それぞれの方が家族として、撮影の時点から程よい距離感を保ち、とても撮影しやすい雰囲気をつくっていただけました。
ー 柴田さんは今回が初主演で、共演者の方々はベテラン揃いで、緊張はしましたか?
柴田杏花さん:たとえばお父さん役の内藤さんと一緒にお芝居をしていると、自然にスッとお芝居に入り込むことができました。
ー 監督というのは、自分の考えを人に伝え、理解してもらわなければならない仕事だと思います。書店などでも自分の考えを「上手に伝える」ということをキーワードにした書籍がたくさん出版されていますが、自分の考えを伝え、みんなの気持ちをひとつにするために心がけていることは?
大森研一監督:常に客観性を崩さないようにしています。撮影していても、その瞬間瞬間にいろいろな意見が出てきます。しかし、そもそもの全体像がいかに的確なのかを示し、理解していただき、その場の雰囲気に流されないように、ついてきてもらうように心がけています。

ー お二人のこれからの夢、目標は?
大森研一監督:『瀬戸内海賊物語』の“続編”! 『グーニーズ』も続編の製作が発表されたので(笑)。まぁ、それはうまくいけばですが、今回は現代劇だったので、歴史ものとしての村上水軍の話や、それこそ本屋大賞を受賞した「村上海賊の娘」の映画化とか、すでにいろいろお声はかかっているでしょうけど…。合戦があったり、そういう時代物の作品を撮りたいと思っています。
柴田杏花さん:ひとつの役にとらわれずに、いろいろな役をできる女優さんになりたいと思っています。
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【試写会レポート】 映画『瀬戸内海賊物語』子どもの日“キッズイベント独占”親子試写会を開催! 参加された方の感想はこちら!
インタビュー後記
本屋大賞の「村上海賊の娘」、『グーニーズ』の続編と、立て続けに追い風の吹いている『瀬戸内海賊物語』。そのような発表がある前に試写を拝見させていただきましたが、本当に、とてもいい映画でした。冒険もの特有のスリルに爽快感、そして冒険後の成長などもしっかり描かれ、子どもと大人が、それぞれの視点で楽しめる映画だと感じました。5月5日の「子どもの日」に開催した「『瀬戸内海賊物語』子どもの日“キッズイベント独占”親子試写会」でも、ご参加いただいた方はみなさん同様の感想をお持ちで、お子さんの中には、繰り返し気に入ったシーンについて話し、興奮冷めやらぬまま、夜、眠りについたそうです。※試写会に参加された方の映画の感想はこちら!
宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』しかり、良くも悪くも、子どもは大人の都合の中で生きています。大人もまた、自分ではどうしようもない大人の都合の中にいるのですが、子どもが、自らの力で解決策を見つけようとするその姿やピュアな想いに、映画を観た大人も、そして子どもたちも何かを感じるはずです。
柴田さんのご両親は、まだ映画を観ていないそうです。全国公開を機に観られると思いますが、おそらくは普段とは少し異なる娘の成長をスクリーンで見るというのは、どういう気持ちなんでしょう。ご両親の感想も聞いてみたいですね。
大森 研一(おおもり けんいち)
映画監督、映像作家、脚本家。1975年愛媛県生まれ、大阪芸術大学卒。映像制作会社『合同会社ウサギマル』代表。映画を中心に、映像制作全般における企画から脚本・演出・編集までのすべてを手がける。また小説の連載などの執筆でも活動中。原案・脚本・監督を務めた冒険映画『瀬戸内海賊物語』が、2014年5月24日(土)から愛媛・香川・徳島で先行公開、5月31日(土)から全国で公開。
柴田 杏花(しばた きょうか)
1999年東京都生まれ。スターダストプロモーション所属。2009年度「りぼんガール」準グランプリ。TBS「JIN?仁?」(09年)、EX「ハガネの女」(10年)、WOWOW「贖罪」(12年)、KTV「幽かな彼女」(13年)など、ドラマ、CMで活躍中。『瀬戸内海賊物語』は初主演映画。